日本動物園水族館協会(JAZA)が和歌山県太地町の鯨類追い込み漁で捕獲された野生イルカの入手を禁止したのを受け、地元の町立くじらの博物館がJAZAを退会したことが分かった。JAZAから3日に提案があり、4日付で退会届を提出、受理された。JAZAが入手禁止を決めた5月以降、加盟施設の退会は初めて。

 同館で飼育するバンドウイルカ17頭など鯨類7種、計約40頭のうち、繁殖した4頭以外は全て追い込み漁で捕獲された個体。例年、追い込み漁で捕獲された鯨類数頭を購入している。先月23日には、追い込み漁で捕獲するバンドウイルカの購入順を決める抽選が同町であり、約20の施設・業者が参加したが、JAZA加盟施設で参加したのは、同館だけだった。

 JAZAは先月27日、追い込み漁で捕獲した鯨類を加盟施設が入手することを禁じると、内部規定で正式に決めた。「博物館とはお互いに考え方が違うので、退会はやむを得ない」と説明している。

 これに対し、同館の桐畑哲雄副館長は「JAZAの立場は理解できる。退会を求められることも予想していた」とする一方、「追い込み漁は国の資源管理の下、知事の許可を得て正当に行われている」と強調。「安定した飼育と研究のために追い込み漁からの入手が必要。退会後も飼育データの共有など他の水族館とのつながりは継続したい」と話した。

 今期の追い込み漁は今月1日解禁され、捕獲枠はバンドウイルカ462頭、ハナゴンドウ256頭など計1873頭。8日は荒天のため出漁を見送った。解禁後、適当な群れが見つからず、同日まで捕獲は行われていない。【藤原弘、稲生陽】