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毎日新聞 / 「セクハラ疑惑:財務次官辞任 「今こそ連携する時」メディアの枠超え女性結束」

2018年04月20日 09時15分15秒 | マスコミ論
〔資料〕

「財務次官辞任 「今こそ連携する時」メディアの枠超え女性結束」

   毎日新聞(2018年4月19日)

☆ 記事URL:https://mainichi.jp/articles/20180419/mog/00m/040/019000c?fm=mnm

 財務省の福田淳一事務次官が女性記者にセクハラ発言を繰り返したと週刊新潮が報じて1週間。潔白を主張してきた福田氏が18日に辞任の意向を表明する一方、テレビ朝日が19日午前0時に記者会見し、セクハラを受けたのは自社の女性社員だったと公表し、事態が急展開した。メディアで働く女性たちの間で、今回のケースを自分の問題として考える声が多数上がっている。【中村かさね/統合デジタル取材センター】

財務省の対応は「一種の脅迫」
 週刊新潮による初報は12日だった。女性記者との詳細なやり取りとともに「胸触っていい?」「キスしていい?」など、福田氏の発言とされる音声も公開された。

 「正直、あそこまで露骨なセクハラにびっくりした」と話すのは、元朝日新聞記者で経済誌「ビジネスインサイダー」編集長の浜田敬子さんだ。「20年くらい前には酒席に同席させられたり、手を触られたり、抱きつかれたりということもありました。でも今の時代に、たとえ言葉遊びだとしても、あんな言葉を女性に向けて発する感覚が信じられません」と驚く。
 財務省は16日、「女性記者にセクハラ発言をしたという認識はない」とする福田氏への聞き取り調査の報告を公表し、名誉毀損(きそん)だとして新潮社を提訴する準備をしていることを明らかにした。さらには、メディア各社に女性記者への調査協力を要請。被害者に事実上、名乗り出るよう要求するやり方に対し、野田聖子総務相をはじめ与野党から批判の声が上がっていた。
 一連の財務省の調査手法について浜田さんはどう感じたのか。
 「以前、米国ハリウッドのプロデューサーのセクハラ告発記事を書いたニューヨーク・タイムズ紙の記者の講演を聴きました。『訴えるぞ』と何度も脅迫を受けたといいます。財務省のやり方も提訴をちらつかせながらの協力要請で、一種の脅迫だと感じました。週刊誌報道が事実だとして、もし他に被害者がいたとしても訴えにくくなる。本当に調査がしたいなら、個別に各社に社内調査を頼むなど、やり方は他にあったはずです」
 一方、元日本経済新聞記者で「上司の『いじり』が許せない」などの著書がある中野円佳さんは「残念ながら、永田町、霞が関、経済界取材で女性記者はこのようなセクハラに日常的に直面してきました。驚きはありません」と話す。「これからは女性が黙っていない時代。セクハラ体質の人は責任あるポジションにつけない方がいい」と突き放し、今回の件を「セクハラを根絶するきっかけにしてほしい」と訴える。
会社の枠を超えて女性が結束
 <黙って見ていていいのか>
 <今こそ私たちで連携する時だ>
 この1週間、メディア関係の女性たちは、ツイッターなどでメッセージを盛んに発信した。
 ある大手紙の女性記者は「私なら、と思うとやっぱり名乗り出ない。名乗り出たとして、その時は不利益がないように見えても、この先の取材活動に支障が出るのは目に見えています。同僚にも迷惑をかけることになり、社内でも肩身が狭くなると思う」と明かす。「今回の件は、女性記者にとってセクハラは日常的なのだということを可視化するいい機会だ。テレ朝の女性社員の勇気を尊敬する。メディアも若い世代には女性の割合が多い。今が変わるチャンスだと思うし、今しかないという危機感もあります」
 テレビ局に勤める女性も言う。「私たちは社会問題を報じるけれど、自分たちがその当事者になった時には口をつぐんできた。被害を訴えたテレ朝の社員も、一人の上司にノーと言われただけでなく、自社では報じられないというメディアの構図が分かっていたはずです。暗黙の了解で、私たちみんながそれを知っていますよね」。女性はテレ朝の会見を見て涙が出たといい、会社を超えた女性記者の連携を訴えた。「今こそ私たちが異口同音に声を上げるべきだ。記者個人、一企業の問題にしてはいけない」
 浜田さんは、自身の過去を振り返って「反省」を口にする。
 「現役のころ、セクハラをされてもかわすだけで『やめてください』と厳しく拒絶することができなかった。取材先を失ってしまうと思い、『うまくやれよ』という無言の圧力も感じていた。騒ぎ立てる女は面倒だと思って我慢してしまった。若い人たちが同じ目に遭わないよう願っていたが、おかしいものをおかしいと言ってこなかった。そんな私たちの我慢が現状を作ってしまったのかもしれません」
福田氏が謝るべき相手は…
 仕事の相談で会食した元TBS記者にレイプされたと訴えているジャーナリストの伊藤詩織さんは、米国コロンビアで福田氏の辞任とテレ朝の記者会見を知った。「女性社員の心境を想像すると、いてもたってもいられない気持ち」だったという。
 辞任について「福田氏は事実と異なると否定した上で、『私のことでご迷惑をおかけしたすべての方に、おわびを申し上げたいと思います』と言う。本当に謝らなければいけない相手は、立場を利用し身勝手な行動で傷つけた女性のはずです」と憤る。
 セクハラを受けた女性社員については「職場からのサポートが得られない環境で、止まらないセクハラへの助けを十分に得ることもできないまま、一人で身を守るために録音をされたとのこと。いろいろな不安が襲う中、声をあげられるには相当な覚悟だったと思います」と胸中を推測。「メディアで働く女性の一人として、多くの同じ環境で働く女性や男性が抱えていた問題を表面化してくれた」と評価する。その上で「これは決して個人の問題ではありません。その声をしっかり受け止め、各機関が対応していく必要があります。組織や社会全体で、あらゆるハラスメントや暴力にNOと言えなければ、私たち自らの人権さえも守れないのではないでしょうか」と指摘する。
会社は女性記者を守れるか
 セクハラ疑惑を巡り、テレ朝にとどまらず報道機関の姿勢が問われているとの声も上がる。元毎日新聞の上谷さくら弁護士は「テレ朝の女性社員個人の事案として終わらせてはならない」と首をかしげる。
 上谷さんが入社した1991年は男女雇用機会均等法の施行から5年が経過し、女性記者が増え始めた時期だ。「私も身体についてのセクハラ発言を受けることはありましたが、ヘラヘラと受け流してきた。均等法世代の先輩たちの苦労を見ていたので、せっかく女性記者が増えてきたのに『だから女は面倒くさい』と水を差すことは避けたかった」と振り返る。「今は時代が違う。組織として、集団として『おかしい』と声をあげるべきだ」と強調する。
 元日経BP社のジャーナリスト、治部れんげさんも「メディアは、自社の女性記者をどう守るかという意識をもっと持ってほしい。次官は辞任しても問題が解決したとは思えない」と指摘する。
「あなたも誰かのブランケットに」
 個人を矢面に立たせることなく、団体で立ち向かう。そのヒントとなるのが、今年3月に始まった「#Wetoo(私たちも行動する)」運動だ。
 発案者の一人である伊藤詩織さんは言う。「自分の性暴力被害について話す時は、大勢の前で裸になるような、毎回その後で苦しい気持ちになった。でも女性ジャーナリストが集まった勉強会で、みんなから応援の言葉をもらい、彼女たち自身の経験や気持ちを聞いて、初めて一枚一枚ブランケットをかけてもらったような気持ちになりました」
 「#Wetoo」が目指すのは、性暴力やハラスメントを許さない社会の実現だ。一人一人が傍観者にならず「#Wetoo」と声を上げることで被害者が孤立するのを防ぐ。趣旨に賛同する企業や団体に行動宣言を公表してもらうことも考えている。
 伊藤さんはこう呼びかけている。「当事者じゃなくてもいい。声を上げた人を一人にしてはいけない。近くにいる人に何ができるか、温かく対応できるか、それに尽きる。一番は話しやすい環境にすること。みなさんも誰かのブランケットになれるんです」

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