1月23日

2007-01-23 11:33:25 | Weblog

水枕ガバリと寒い海がある        西東三鬼

 処女句集『旗』(昭和十五)に収められている三鬼の代表句で、新興俳句を代表する句と言ってよく、口語俳句として十分な成功を収めている。この句は、昭和十年の冬、三鬼が肺結核の急性症状で倒れ、高熱が続いたときの病床での作で、三鬼みずからが、俳句開眼の句と述べた句である。水枕の水は、高熱のときなど寝返ったりすると、頭の下で「ガバリ」とやけに大きな、水と氷が打ち返る音を立てる。「ガバリ」の擬態語によって、寒い海が導き出され、流氷の漂う海を枕下に、高熱で夢と現の境をさまよう思いが読み取れる。