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ターシャ・テューダー静かな水の物語

2015年のターシャ・テューダー生誕100年を記念して

日本全国を巡回したターシャ・テューダー展。

そのメモリアルイヤーのクライマックスとして製作された

”ターシャ・テューダー静かな水の物語”という映画が

今、公開されているということで

昨日映画館に観に行ってきた。

 

開演前のロビーには

私とほぼ同年代とおぼしき女性が多く

いずれ劣らぬ熱心なターシャファン…なのだろう。

どことなく同じ匂いを感じた。

 

その映画は、生前のターシャを

10年間にわたり取材してきた映像に

今回、追加で撮影した

これまで撮影が許されなかった

書斎や洗面台などのプライベートスペースと

現在のテューダー家の様子などの新たな映像を加えたもので

生誕100年記念にふさわしい

ターシャの完全版とも言うべき映画であった。

 

スクリーンに映し出された映像は

どれもこれも懐かしく

昨年の6月ここを訪れた時の記憶が

当時の感動とともにまざまざと甦ってきた。

特に息子のセスや孫嫁のエイミーが映像の中で語る姿は

1年前に実際に会っているだけに

まるで旧知の仲のように感慨深く感じられ

思わず、お久しぶり!お元気ですか?…と

声をかけたくなる気分だった。

 

この映画のタイトルの「静かな水(スティルウォーター)」とは

「静かな水のように穏やかであること。周りに流されず自分の速さで進むこと。」

という、ターシャの言葉からとられているそうだ。

彼女は普段から冗談めかして

「私はスティルウォーター教よ」と言っていたらしい。

つまり

大きな波に流されることなく

静かに前進するというターシャの生き方と

水に映る自分自身を見つめるという在り方を象徴する言葉が

「静かな水(スティルウォーター)」なのだ。

 

この映画を見て改めてターシャの凄さを感じた。

そして、彼女の言葉のいくつかが心に響いた。

「忙しすぎて心が迷子になっていない?」

「思う通りに歩めばいいのよ」

「やりたい仕事は、労働ではなく、楽しみになるのです」

「近道を探そうとしないこと」

「価値のあるよいことはみんな、時間も手間もかかるものです」

「心は一人ひとり違います。その意味では、人はいつも”ひとり”なのよ」

 

また、家族の立場から息子のセスが

「何かをやりたいと思ったらまず始めなさい」が母の人生哲学だと言い

エイミーはターシャから学んだこととして

「意志の強さと選ぶことの大切さ」をあげている。

「何をして何をしないか、誰と会って誰と会わないか」

「人生は小さな選択の積み重ねでできている」

ターシャは常々そう言っていたらしい。

そして

「全ての選択を真剣に行ったから自分の世界を築けたのですよね」

このようにエイミーは語っている。

 

こうしたターシャの残した数々の言葉の中で

私にとって最も心に響いたのは

” take joy "のメッセージだろうか。

” 喜びは創りだすもの "と訳されているが

目の前にある喜びを自分自身で見いだす努力とともに

そこにはもっと積極的に” つかみ取る ”という

強い意志のようなものを感じる。

ターシャの生き方はまさにそれを物語っているように思う。

 

それは、今回のイギリスの旅で

ピーターラビットの作者の

ベアトリクス・ポターからも感じたことである。

どちらも女性好みの可愛い絵本ではあるが

それを創り出した作者の生き方は絵のように甘いものではない。

二人とも時代に流されず

自分が求める理想の生き方を追い求め

時には開拓者のように土を耕し

時には科学者のように動植物を観察し

そして時には実業家のように現実を見据えながら

常には日々の暮らしを楽しみ

四季折々の草花や小さな命に美しさを感じとり

その感動を絵筆で表現し

自然の営みとともに自らの体と心を動かし

たくさんの時間と手間をかけて

他の誰にも真似できないことを成し遂げたのだ。


二人の絵本作家が遺したものは

それぞれのあの素晴らしい絵本作品だけではない。

ターシャのコーギコテージとその庭。

そして今もそれを守るターシャ・ファミリー。

ポターのヒルトップの家敷と庭。

そしてナショナルトラストで残された湖水地方の自然。


こうした地を実際に訪れて感じたことは

彼女たちの生き方そのものが一つの作品であり

今もなお世界中の多くの人々に愛され共感されている理由は

そこにあるのではないかということだ。

 

入口はガーデニングと絵本好きという

ある意味ミーハー的な気分で

彼女たちのゆかりの土地を訪れてきた私だが

その奥に広がる広大で深遠な景色と出会い

ただ” 可愛い~!" だけではない

二人に共通する生きる姿勢を感じた今

ただただ自分の浅はかさを恥じるのみである。


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