声 明
2007年12月20日
徳山ダム建設中止を求める会 代表 上田武夫
連絡先:事務局・近藤ゆり子
〒503-0875 大垣市田町1-20-1
TEL/FAX 0594-78-4119
20日に発表された来年度予算財務省原案は、ムダにムダを重ねる木曽川水系導水路事業に水資源機構事業とするために15億円満額をつけている。
この「予算」には大きな問題がある。3点指摘する。
(1)そもそも不必要な上に環境破壊懸念の大きい「木曽川水系連絡導水路」
(2)河川法16条の2の趣旨を踏みにじり、水資源開発促進法をも無視する法令遵守意識の欠如
(3)必要な治水事業の予算が蝕まれること
(1)について
この「導水路」事業は単にムダであるのみならず、長良川に徳山ダムの水を流すことにより、河口堰に続いて長良川の河川環境の一層の悪化をもたらす「暴挙」事業である。
長良川河口堰にも徳山ダムにも本当の意味での水需要は存在しない。少なくとも木曽川水系において国の水資源政策は破綻している。その破綻を覆い隠すための「木曽川水系連絡導水路」である(*1)
木曽川成戸地点の維持流量確保のために890億円×65%(治水負担分)をかける合理的根拠(*2)、「10億円のコスト縮減」の水路として長良川に徳山ダムの水を流すこと(流したときの環境影響)の説明は無きに等しい。
*1:「木曽川水系連絡導水路の問題点」(伊藤達也・金城学院大学教授)は、
国交省中部地整HP内 「木曽川水系河川整備計画」
http://www.kisosansen-plan.jp/
「流域委員会に頂いた意見」第7回・第8回にアップされています)
こちらからごらんになれます!
*2:木曽川水系河川整備基本方針策定の際の参考資料として示されたのは「木曽川大堰流量が多ければヤマトシジミにやさしい」まる科学性も片鱗もないグラフのみである。1994年渇水では木曽川河口部も厳しい環境にさらされた。しかし結局はヤマトシジミは壊滅しなかった。
一方長良川河口堰で長良川河口部のヤマトシジミは壊滅した。「適正な漁業補償をした(から壊滅しても構わない)」というのである。
河川環境に対するこの激しく異なる「二重基準」は理解しがたい。
そして現時点では、徳山ダムの水を流される長良川の関係者(流域住民)の多くが、この計画を知らない。この状況で「予算」をつけ、事業を進めていくことは、関係住民を無視する「拠らしむべし、知らしむべからず」の反動行政と指弾しないわけにはいかない。
(2)について
国は「木曽川水系連絡導水路」を水機構事業にしようとしている。水資源開発公団が独立行政法人水資源機構となったときから「整理縮小(廃止を含む)」の対象になっている天下り巨大法人・水資源機構の存続のために、長良川河口堰-徳山ダム-木曽川水系連絡導水路という水資源機構ムダ公共事業ダンゴ3兄弟の完成させようというわけである。
だが、現時点では、水資源機構事業とする法的手続き(木曽川水系河川整備計画策定&木曽川水系水資源開発基本計画一部変更)は完了していない。 国交省は、河川法16条の2第4項に基づく「公聴会」の公述人募集を12月26日で締め切る。そして「意見聴取」全部を08年1月18日をもって終えようとしている。関係住民が木曽川水系河川整備計画のもつ問題性に気付く前に片づけてしまおう、とにかく予算に間に合わせてしまおうという反動的姿勢が露わである(*3)。
そして何よりも「木曽川水系連絡導水路」について、まだほとんどの人が知らないまま予算をつけ事業を進めることは、1997年河川法改正の趣旨を真正面から否定する「先祖返り」である。
*3:一連の木曽川水系河川整備計画策定の進め方については、07年3月8日付抗議声明「『木曽川水系流域委員会』設置は、1997年河川法改正趣旨を蹂躙するものだ」及び第7回~第10回木曽川水系流域委員会に提出した意見書-国交省中部地整「木曽川水系河川整備計画」サイトにアップされています-参照)
また水資源機構事業とする法的手続きが終わっていないにも拘わらず「15億円のうちの14億円」を水資源機構事業(水資源開発事業交付金)に充てるとなっていることは、「法による行政」という姿勢すらないと批判せざるをえない。
河川法16条の2も無視し、さらに水資源開発促進法に基づく規定(国土審議会)も無視している。「学識者からの意見聴取(審議会を含む)なんて、どうせ形式だけ。住民意見など聴いておきさえすれば良い。河川局が決めたのだから決まったのだ」ということなのだろう。こういう「予算案」を平然と通常国会に出すことは、国交省のみならず財務省もまた法令遵守意識の欠如が横行、つまり政府全体が「法律など関係ない。与党の数で衆議院を通せば構わない」ということなのか。国会での予算審議の重みを無視する、財政民主主義に対するあからさまな敵対行為である。
(3)について
治水特別会計(来年度から「社会資本整備特別会計」に統合)は、ここ数年で大幅に縮減されている。無駄を削るのは良い。しかし、脆弱な堤防を修復する予算さえなかなかつかないうような現状である。無駄な事業は必要な治水事業の予算を蝕む。無駄で問題の多い木曽川水系連絡導水路事業に890億円×65%(治水負担分)をかける余裕などないはずである(*4)。
*4:第9回木曽川水系流域委員会に提出した近藤意見書「4」参照
無駄に無駄を重ねるこの悪循環は断ち切られなければならない。
暮らしの破壊・環境の破壊を必然的に伴う「徳山ダム建設事業/徳山ダムの水を導水する木曽川水系連絡導水路事業」の中止を改めて求める。
財務省原案に抗議する。
以上
2007年12月20日
徳山ダム建設中止を求める会 代表 上田武夫
連絡先:事務局・近藤ゆり子
〒503-0875 大垣市田町1-20-1
TEL/FAX 0594-78-4119
20日に発表された来年度予算財務省原案は、ムダにムダを重ねる木曽川水系導水路事業に水資源機構事業とするために15億円満額をつけている。
この「予算」には大きな問題がある。3点指摘する。
(1)そもそも不必要な上に環境破壊懸念の大きい「木曽川水系連絡導水路」
(2)河川法16条の2の趣旨を踏みにじり、水資源開発促進法をも無視する法令遵守意識の欠如
(3)必要な治水事業の予算が蝕まれること
(1)について
この「導水路」事業は単にムダであるのみならず、長良川に徳山ダムの水を流すことにより、河口堰に続いて長良川の河川環境の一層の悪化をもたらす「暴挙」事業である。
長良川河口堰にも徳山ダムにも本当の意味での水需要は存在しない。少なくとも木曽川水系において国の水資源政策は破綻している。その破綻を覆い隠すための「木曽川水系連絡導水路」である(*1)
木曽川成戸地点の維持流量確保のために890億円×65%(治水負担分)をかける合理的根拠(*2)、「10億円のコスト縮減」の水路として長良川に徳山ダムの水を流すこと(流したときの環境影響)の説明は無きに等しい。
*1:「木曽川水系連絡導水路の問題点」(伊藤達也・金城学院大学教授)は、
国交省中部地整HP内 「木曽川水系河川整備計画」
http://www.kisosansen-plan.jp/
「流域委員会に頂いた意見」第7回・第8回にアップされています)
こちらからごらんになれます!
*2:木曽川水系河川整備基本方針策定の際の参考資料として示されたのは「木曽川大堰流量が多ければヤマトシジミにやさしい」まる科学性も片鱗もないグラフのみである。1994年渇水では木曽川河口部も厳しい環境にさらされた。しかし結局はヤマトシジミは壊滅しなかった。
一方長良川河口堰で長良川河口部のヤマトシジミは壊滅した。「適正な漁業補償をした(から壊滅しても構わない)」というのである。
河川環境に対するこの激しく異なる「二重基準」は理解しがたい。
そして現時点では、徳山ダムの水を流される長良川の関係者(流域住民)の多くが、この計画を知らない。この状況で「予算」をつけ、事業を進めていくことは、関係住民を無視する「拠らしむべし、知らしむべからず」の反動行政と指弾しないわけにはいかない。
(2)について
国は「木曽川水系連絡導水路」を水機構事業にしようとしている。水資源開発公団が独立行政法人水資源機構となったときから「整理縮小(廃止を含む)」の対象になっている天下り巨大法人・水資源機構の存続のために、長良川河口堰-徳山ダム-木曽川水系連絡導水路という水資源機構ムダ公共事業ダンゴ3兄弟の完成させようというわけである。
だが、現時点では、水資源機構事業とする法的手続き(木曽川水系河川整備計画策定&木曽川水系水資源開発基本計画一部変更)は完了していない。 国交省は、河川法16条の2第4項に基づく「公聴会」の公述人募集を12月26日で締め切る。そして「意見聴取」全部を08年1月18日をもって終えようとしている。関係住民が木曽川水系河川整備計画のもつ問題性に気付く前に片づけてしまおう、とにかく予算に間に合わせてしまおうという反動的姿勢が露わである(*3)。
そして何よりも「木曽川水系連絡導水路」について、まだほとんどの人が知らないまま予算をつけ事業を進めることは、1997年河川法改正の趣旨を真正面から否定する「先祖返り」である。
*3:一連の木曽川水系河川整備計画策定の進め方については、07年3月8日付抗議声明「『木曽川水系流域委員会』設置は、1997年河川法改正趣旨を蹂躙するものだ」及び第7回~第10回木曽川水系流域委員会に提出した意見書-国交省中部地整「木曽川水系河川整備計画」サイトにアップされています-参照)
また水資源機構事業とする法的手続きが終わっていないにも拘わらず「15億円のうちの14億円」を水資源機構事業(水資源開発事業交付金)に充てるとなっていることは、「法による行政」という姿勢すらないと批判せざるをえない。
河川法16条の2も無視し、さらに水資源開発促進法に基づく規定(国土審議会)も無視している。「学識者からの意見聴取(審議会を含む)なんて、どうせ形式だけ。住民意見など聴いておきさえすれば良い。河川局が決めたのだから決まったのだ」ということなのだろう。こういう「予算案」を平然と通常国会に出すことは、国交省のみならず財務省もまた法令遵守意識の欠如が横行、つまり政府全体が「法律など関係ない。与党の数で衆議院を通せば構わない」ということなのか。国会での予算審議の重みを無視する、財政民主主義に対するあからさまな敵対行為である。
(3)について
治水特別会計(来年度から「社会資本整備特別会計」に統合)は、ここ数年で大幅に縮減されている。無駄を削るのは良い。しかし、脆弱な堤防を修復する予算さえなかなかつかないうような現状である。無駄な事業は必要な治水事業の予算を蝕む。無駄で問題の多い木曽川水系連絡導水路事業に890億円×65%(治水負担分)をかける余裕などないはずである(*4)。
*4:第9回木曽川水系流域委員会に提出した近藤意見書「4」参照
無駄に無駄を重ねるこの悪循環は断ち切られなければならない。
暮らしの破壊・環境の破壊を必然的に伴う「徳山ダム建設事業/徳山ダムの水を導水する木曽川水系連絡導水路事業」の中止を改めて求める。
財務省原案に抗議する。
以上
百害有って一利無し。こんなことで木曽三川の抱える諸問題は解決するどころか悪化してしまいます。生態への影響がものすごく心配です。