リバーリバイバル研究所

川と生き物、そして人間生活との折り合いを研究しています。サツキマス研究会・リュウキュウアユ研究会

亜細亜の水泥棒?

2010-08-15 16:03:15 | メコン川研究所(メコンの目改題)
アジア、水争奪戦 中国のダム開発、流域国との火種に(朝日新聞) - goo ニュース

 メコン川など、アジアの国際河川で続くダム開発。
これらの開発が流域に影響を与えないはずがない。そのことは、今年の1月から3月にメコン川に滞在していて痛感した。
 今年のメコンは以下に乾季とはいえ、ともかく、水がないのだ。

メコンでは水がないと船の航行が妨げられ、魚は移動しないので漁もできない。
 流域に住む人々の生活が成り立たなくなる。
 こんなことは、かってなかあった。そういった話をどこででも、何度となく聞かされた。

 以前メコン川が同様な低水位になったことはあったのだというが、その時期は雨季に入る直前のこと、6月の後半くらいのことだったという。

「まだ、2月後半だよ、雨季は7月なのにどうなるんだ!」コン島のホテルオーナーが水位が下がり、岸辺に乗り上げてしまった水上コテージを示して言った。
 ボクはその、不安定な、浮いた部屋が好きで滞在中は利用することにしているのだが、そのコテージは底に着いてしまって妙に安定していた。

 大規模ダムの建設は確実に魚たち、メコンのイルカたちに大きな影響をあたえることになるだろう。

 大規模ダムで巨大魚に絶滅の危機

 この記事のなかで紹介しているWWFが作成したダムの建設図をしめしておくことにする。
 今は、上流、中国に一部ダムが建設されているだけだが、こんなにたくさんのダムが計画されているのだ。

 

 ミドリの○がすでに稼働しているダム、ムラサキが建設中のダムで全てが中国国内になる。
 このWWFの記事はラオスがメコン川委員会加盟国の中で初めて? メコン本流にダム計画を公表したことに対するものである。

 このことについては、また書くことにする。

 メコンの上流に位置する中国は流域国では唯一このメコン委員会に参加していない。
 記事中に、
 ”中国外務省は「中国は責任ある国家だ。他国の利益は損なわない」とインドの懸念を否定している。”とあるのだが、はたして、本当に流域の大国としての責任を果たしているのかと、ボクは残念ながら懸念を感じている。

 ところで ”水泥棒”とは、かって長良川にダムが計画され、河口堰の建設がきまったころ、岐阜県の人々が建設省などに対して与えた尊称である。
 最近、水が必要でダムを造るという大儀が我が国ではあまり使用されなくなったので、あからさまな水泥棒という対象が見えにくくなっている。
 そんなこともあり、今後かの大国のことを、あの、アジアの○泥棒と呼ぶ日は近いかもしれない。

 さて、長良川にはダムは出来なくて、隣の揖斐川に日本最大のダムが建設されたのだが、その日本最大の徳山ダムがこの記事でも大きさの目安として紹介されているのは複雑な思いがするのだ。


☆テキスト版

アジア、水争奪戦 中国のダム開発、流域国との火種に

2010年8月15日2時57分


 国境をまたぐアジアの大河で、新たな対立の火種が生まれようとしている。

 チベットからインド、バングラデシュに流れるブラマプトラ川。「上流で中国がダムを建設中」とインド紙が1面トップで報じたのは、昨年10月のことだ。人工衛星で着工が確認されたのだ。

 中国側は、5基のダム建設計画が進んでいることを認め、電力需要の増加に対応する水力発電用のダムで、常時放水するため下流域に影響はないと説明した。

 しかし、中国側の思惑次第で水量をコントロールされてしまうのではないか、とインド側は懸念を募らせる。1962年に、国境紛争で戦った両国。インド国内の研究者からは「中国が水という武器を手にした」という論調さえ出てきた。

 懸念はダムにとどまらない。インドのエネルギー資源研究所の水問題担当、アショク・ジェトリー部長は「中国はブラマプトラ川の水を、自国へ引き込もうとしているのではないか」と話す。

 彼が指摘するのは、中国政府が進める「南水北調」計画。水資源の豊かな中国南部の水を、水不足の北部に送る大事業だ。現状では国内河川から取水する計画だが、国際河川からも取水する案がくすぶる。そうなれば根こそぎ水資源が奪われる、とインド側は恐れている。

 英国国防省の2007年の報告書も「水問題は、軍事行動や人口移動を誘発する可能性を高める。中国がブラマプトラ川の流れを変えようとすれば、リスクは大きい」とこの問題を取り上げている。

 中国外務省は「中国は責任ある国家だ。他国の利益は損なわない」とインドの懸念を否定している。

 中印は、雨期に水利情報を交換する覚書を結んでいるが、インド外務省のゴータム・バンバワレ東アジア局長は「今後は中国との(開発問題を協議する)河川協定が必要になる」と語る。

中印のような構図は、インドシナ半島にも見て取れる。今春、一帯が大干ばつに襲われ、メコン川は過去50年で最低の水位を観測。流域国は農業や漁業などに被害を受け、タイやベトナムからは、上流の中国で相次ぐダム建設を非難する声が上がった。

 タイ北部の町チェンコーン。7月下旬、メコン川の漁師(60)は渋い表情だった。雨期になっても水位が低く、漁獲は例年の半分以下という。

 タイの環境NGOのジラサック・インタヨットさんは「少雨だけのせいじゃない。中国のダムが水をためているからだ。同じチベットから流れるタンルウィン川は、ダムが少ないから水位が高い」と主張する。

 実際にメコン川上流の中国雲南省では、国内の電力需要をまかなうため、巨大ダムの建設ラッシュが続いている。茶の産地として有名な普●(プーアル、●は「さんずい」に「耳」)市では、大型の原発5基分にあたる550万キロワットの水力発電ダムの工事が進む。糯扎渡(ヌオツァートゥー)ダムの貯水量は、日本一の徳山ダム(岐阜県)の30倍以上。流域最大の発電所になる。

 これを含めて15のダムをつくる計画で、10年後の総発電容量は2500万キロワット。世界一の三峡ダムを上回る。

 ブラマプトラ、メコンの上流のダムが、下流に悪影響を及ぼすかは明らかでない。国際機関・メコン川委員会は「ダムはまだ本格稼働しておらず、今のところ影響は少ない」と話す。それでもダム建設は、上流国を非難する口実になりうる。

 アジアには世界人口の6割が暮らすが、地球上で利用できる水資源の36%しかない。今後の経済発展や地球温暖化の進行で、水不足はいっそう深刻化するだろう。水問題は、アジアの安全保障の課題になりつつある。(竹内幸史、広州=小林哲)
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3 コメント

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台風により・・・ (夕顔@ラオス)
2010-09-01 21:14:14
パクセーのメコン川の水位、ちょっとすごいことになってるようです・・・。
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MRCのHP (ニイムラ)
2010-09-01 22:41:24
http://ffw.mrcmekong.org/stations/PKS.htm

 によれば、9月4日に最大で警報レベルまで上昇しますね。
 洪水レベルまでは1.5mあるけど、ずいぶん高い水位になりましたね。
 今年の水位変動は、例年と比較して低水位から高水位まで極端に変化しています。
返信する
うーん・・・ (夕顔)
2010-09-02 19:08:14
東シナ海の台風の影響らしいです。
今日も午後はずーっと雨で、今も降っています。
週末はおとなしく・・・したいけれど、冷蔵庫の中が寂しいので雨の合間を狙ってタラートに買出しに行くことになると思います・・・。
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