リバーリバイバル研究所

川と生き物、そして人間生活との折り合いを研究しています。サツキマス研究会・リュウキュウアユ研究会

第63回 開いている河口堰 長良川河口堰は雨の後開く!

2017-08-21 21:45:42 | ”川に生きる”中日/東京新聞掲載

 

 大雨の予報に、長良川の水位が気にかかる。近づく雨雲の広がりを

ネットで見て、この雲がどれほどの雨を降らせるのかと考える。
 旧東海道、墨俣(岐阜県大垣市)付近の長良川には水位の自動観測点があり、十分ごとの値をスマートフォンなどで確認できる。普段はマイナス二・八㍍くらい、氾濫危険水位は七・七㍍。水位がゼロ㍍を越えると、長良川を流れる水の量は毎秒八百㌧、長良川河口堰(ぜき)のゲートが開くのだ。
 流量が増加して河口堰のゲートが開くのは、毎年二、三回はある。ゲートが開く瞬間に何が起きるのだろう。その時をゲートの上で待つことにした。
 岐阜市内から河口堰までは、堤防道路を通って二時間弱。河口堰の管理橋の上から、ゲートを見る。上流側の水位は下流より高いのでゲートから水が落ち、水音が響いている。
 突然、操作室から開閉装置のモーター音がして十二門全てのゲートが上がりだした。その瞬間、訪れたのは静けさだった。ゲートが上昇して、落下していた水がなくなったのだ。水音が消えた管理橋の上にゲートを巻き上げるモーターの音だけが聞こえている。
 水の流れを止めていた堰がなくなり、落下する水音がなくなる。それは、あっけないほど円滑な変化だった。管理橋の上を往復してみる。ゲートが上限まで上がり、巻き上げのモーターの音がやむと、拍子抜けする静けさがあった。
 管理橋から、漫然と水面をみる。水面に不思議な文様が現れていることに気がついた。薄茶色の泥濁りの水面に、より濃い色に濁った水塊がわき上がって広がる。濃い色の輪郭はたちまち薄まって消えるのだが、新たな水塊はふつふつとわき上がり、河口堰上流側一面に広がった。
 おそらくは河口堰上流の堆積物が、酸素の少ない状態で黒っぽく変化したヘドロなのだろう。上流から押し寄せてくる濁りの塊の連なりを、音のない叫びのように感じていた。(魚類生態写真家)
 
 
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