●4年ぶりの本庁勤務。農業技術職の牙城。初日から伝わる厳しさ。
時は平成5年4月1日。新潟県農林水産部の農政企画課への着任初日。事前に辞令交付式の始まる10:30迄に来るように庶務担当者から聞かされていたので、おっとりと9:30過ぎに出勤すると、異動で職員が入れ替わる年度初日としてのセレモニアルな雰囲気が一切なく、皆が慌ただしく議論したり、机にしがみつくように仕事をしている。
自分の席は、3人ずつ2つの係が机を向き合わせて作っているシマの末席。気難しそうな40歳代後半と思しき係長と、海千山千の"仕事人"的な雰囲気が漂う40歳前後の主査職に、順次「よろしくお願いします」と挨拶して着座する。途端に「なかなか出勤しないから、もう来ないのかと思ったぞ」と主査が早くも、初日とは言え末席職員は朝一番に来るのが当然だろうとの、"釘刺し"だ。
ああ、日夜ピリピリとした緊張感につつまれ、作業量も難易度も高い"本庁の業務"にまた戻るのだなあ…と、最初から思いやられた。それは、若くて意欲もある自分にとって嫌ということではないのだが、3年間の出先事務所暮らしにおいて、良くも悪くもある種の"ゆとり"にドップリ浸かっていたので、急にギアを変えられるか心配になる。
10:30の定刻に執務室内の中央付近にて転入者である数名が順次呼ばれ、末席の私は最後に課長から辞令を内容の読み上げに続けて手渡された。通例により、我々転入者は一列に並び、取り囲む課員達へと順番に一言ずつ挨拶をしていく。自分の挨拶を待つ間、向かい合う皆さんの顔を眺めていると、さすがに昨日まで一緒だった出先事務所の同僚達とは表情の引き締まり具合が違うように感じる。
「農政企画課」は、課名のとおり新潟県の農業政策の企画立案を取り仕切る重要なポジションだ。内外との対応も難度が高いものとなるのだろう。名簿など見ると20名程の課員の中に、新採用はおろか30歳前半までの職制である"主事"や"技師"が殆ど居ない。手練手管にこなれたベテラン職員で構成されているのだ。
さらに、3月に異動内示を受けてから調べてみて分かったのだが、課員の殆どが農業分野専門に従事するものとして採用された「技術職」なのである。しかも、私の係と向かい合わせになっていて何かと連携を要するとされている係を合わせた"シマ"の6人のうち「事務職」は最下級の職制である「主事」の私唯一人だけであった。
辞令交付と挨拶の儀式が終わり自席に戻ると、隣の"仕事人主査"から声が掛かる。「この係は、国が鳴り物入りで成立させた新たな法律を踏まえて設けられた「新しい係」なのヨ。事務屋は、特に若いのが絶対に必要だということで席を設け、"使い減りしない"者の配置を絶対に頼む、という中で君が呼ばれたわけ。期待してるヨ」とニヤリ。"使い減りしない"との単語が耳鳴りのように脳裏にこびりつく。テコか何かの類いで呼ばれて大変な下働きをさせられそうな悪夢の予感で初日がスタートしたのだ。ああ、先が思いやられる…。
(「4年ぶり本庁勤務は農業専門職の牙城で初日からキビシー編」終わり。県職員3か所目の職場である農政企画課の回顧録がこれから続きます。)
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