日韓往来 [Journal Korea]

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「戦後70年」東アジアの「古典」100冊選び。共有化できるか

2015-01-17 05:12:45 | 韓国・見聞

東アジア(日韓中)で「戦後の古典」選びがあるという。どれだけ読んだというより、どれだけ(相互訳書が)手に入る? そしてそばに置けているか。

http://digital.asahi.com/articles/photo/AS20150105004349.html
記事引用 2015/01/13採録
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(戦後70年)日中韓つなぐ100冊の輪 高重治香 清水大輔
2015年1月8日01時56分 朝日新聞

http://digital.asahi.com/articles/photo/AS20150105004349.html

【動画】韓国で日本家屋再生=川村直子撮影

中華書局で中国・韓国・日本の古い書籍に触れる「東アジア出版人会議」のメンバーたち。左から熊沢敏之さん、龍澤武さん。右は加藤敬事さん=北京市、高重治香撮影

■鏡の中の日本〈7〉知る

  中国西南部にある四川教育出版社で、政治学者・丸山真男の「講義録」や精神科医< /a>・中井久夫の「分裂病と人類」を翻訳出版する準備が進んでいる。春には思想史家・藤田省三の「精神史 的考察」も出版される。

 2年前は「自動車の社会的費用」が訳された。公害や交通事故など、自動車のコストを分析した経済学者・宇沢弘文の代表作で、1974年の岩波新書だ。

  編集を担当した岩波書店元社長の大塚信一(75)が昨夏、中国で講演した際、編集者たちから質問が相次いだ。中国 では経済成長により、かつての日本と同じ問題が起きている。「歩行者の権利という発想が新鮮だったようです」。韓国でも今年出版の予定だ。

  中国で日本の戦後の「古典」が相次いで翻訳されている。東アジアで100冊の人文書を互いに翻訳しようというプロジェクトの一環。中国、台湾、香港、韓 国、日本の編集者の交流組織「東アジア出版人会議」が始めた。2011年に各地域のメンバ ーが、それぞれ翻訳して共有したい過去50~60年の本を 選んだ。日本からは計27冊。

 

 先月初旬、北京市の老舗出版社「中華書局」を、会議のメンバー約10人が訪れた。

 「かつて東アジア世界で盛んだった書物を媒介とした交流は、近代化とともに失われてしまった。互いの仕事を理解する友情の輪に加わっていただきたい」。筑摩書房社長の熊沢敏之(61)が切り出した。

  東アジアでは、中国、朝鮮半島、日本の本が、時代を超えて互いに読まれていた。書物の交流が、理解と共感の基盤 だった。しかし近代になると専ら西欧に目が向けられた。東アジアで再び、時空を超えて同じ書物を読む交流を復活させたい。会議は05年、その願いから始 まった。

 戦後日本の出版人には、多くを学んだ中国を侵略したことへの「贖罪(しょくざい)」意識があった。戦後早い時期か ら岩波書店は全刊行物を中国の図書館に送付し始め、66年には出版社代表の訪中団も派遣された。72年の国交正常 化後は、中国の研修生を受け入れた。90年代以降、翻訳を通じた出版界の関係が深まっていった。

 中国は60~70年代 に文化大革命を、韓国は80年代まで軍事政権を経験した。出版が厳しく制限された時代の「空白」を埋めるように、 韓国では日本の翻訳本も年3千点以上刊行される。昨年は村上春樹「女のいない男たち」や斎藤孝「雑談力が上がる話 し方」がベストセラーに。同時に、「100冊」のような古典も出版される。

 一方、日本では80年代末ごろから、売り上げ維持のために新刊本が激増し、古い本は重版されにくくなった。最近は、「嫌韓本」「嫌中本」がよく売れる。

 

 会議メンバーで元平凡社編集局長の龍澤(りゅうさわ)武(69)は「中国は出版の長い中断があり、韓国は蓄積が不在だ。日本には、出版の蓄積があるにもかかわらず、それを忘却しているのではないか」と感じている。=敬称略

■知と文化 読んで再発見

 日本では、中韓の本は年8万冊の新刊に埋もれがちで、出版の壁が高い。「100冊」プロジェクトに選ばれた本も例外ではない。

  ただ、東アジア出版人会議に参加する平凡社「東洋文庫」編集長の関正則(59)は、「経済格 差など、東アジアが共に抱える問題は多い。出版人の交流が進めば、もっと出版は増えていく」と期待する。

  現代人文社の保月ゆかり(52)は昨夏、小さな出版社の編集者の会の研修で韓国の出版社を訪ねた。「日本にいると閉塞(へいそく)感 ばかり。出版不況は韓国も同じだが、韓国の出版社と一緒に企画を作るなど、市場を広げられる可能性を感じた」

  昨年日韓で刊行された「韓国・朝鮮の知を読む」(クオン)は、日韓の識者約140人が推薦するブックリストだ。例えばロシア文学者の亀 山郁夫は、独裁政権と格闘した韓国の詩人・金芝河(キムジハ)の詩集を挙げた。

  編集した言語学者の野間秀樹は「知とは、ともに悩んだり考えたりする営みそのもの。国の境なく、入り乱れている」 と語る。韓国の知が溶け込んでいる日本作家の小説もある。140のリストは、多様なルーツを包み込んで生まれる知や文化の姿に気づかせてくれる。(高重治 香)

 

■韓国の日本建築 広がる理解

 韓国にはソウルから地方まで、日本が植民地時代に造った建物が残る。韓国にとっては、支配された記憶を思い起こさせるものだった。そんな「負の遺産」を見直す動きが広がる。

  ソウルの漢陽大学建築学部客員教授の冨井正憲(66)は12月、仁川(インチョン)市内にある日本の長屋を改修した。写真などを展示する「仁川官洞(クァ ンドン)ギャラリー」だ。天井裏の梁(はり)など骨格はそのまま生かした。壁をはがしペンキを塗る作業は韓国の学生たちが手伝った。周辺に残 る日本家屋の再生案も各自が一軒一軒見て回り、模型で表現した。「捨て去っていたものを自ら掘り起こす。30年前 は想像もできなかった」

 初めて韓国を訪れたのは神奈川大建築学科の助手だった1983年。朝鮮王朝時代の伝統家屋に魅せられ、休みに各地を巡った。

 ある日、ソウルの路地裏で切り妻屋根に出くわした。日本家屋だ。どんな家がどんな風に使われ続けたのか調べたいと思った。

 日本の学会には「何の意味がある」と批判された。日本文化を禁止していた韓国にとって日本建築は研究の対象ですらなかった。

  各地で500軒近い日本家屋を調査した。柱は「日式」のままでも、中を見ると、ふすまは壁に、畳はオンドル(床下 暖房)にと現地仕様に戻っていた。植民地期に日本住宅を広めた背景には創氏改名と同様、「日本化」を図る狙いが あったことも分かった。日本人の引き揚げ後、「敵産家屋」とさげすまれながらも使われたのは、韓国人の間で所有権が複雑化し、取り壊しや再開発が困難だっ たからだ。

 韓国は88年にソウル五輪を開き、翌年には海外旅行を自由化した。歌や映画など日本文化も解禁。02年にはサッカーワールドカップを日韓で共催した。

 冨井は04年に漢陽大に招かれた。日本建築を普通に教えられた。建築家として再生を手がける教え子もいる。軽い材質で、柱や梁の構成はしっかりしている。そんな日本建築の良さが見直されるようになった。

 「日本を特別視するわけでもなく、対等に見つめる。ごく普通のことが当たり前になってきた」

 釜山にある東西大大学院。ここでは、日本地域研究科の大学院生たちが、日本が残していったアパートや商店などを日本人を対象に案内している。交流の機会を生むことがねらいだ。

 初めはまちのどこにどんな日本家屋があるか分からないことも多かったと中心メンバーの尹恩慧(ユンウネ)(33)はふり返る。そんな時、「釜山でお昼を」という日本語のブログを見つけた。

 驚いた。干物市場やレンガ造りの学校といった今も残る家々、当時の地図、写真であふれていた。

 11年の夏、メールを送ると、福岡市で事務用品を扱う自営業者、石橋克美(65)が訪ねて来た。

  たまたま見た語学番組で韓国にはまり、00年ごろから釜山に通うようになった。日本家屋を偶然見つけ、そこにあっ た暮らしが気になった。菓子作りも無線も関心を持ったら「突き詰めたくなる性分」。建物と住民の歴史、人となりを調べようと、法務局で当時の登記簿謄本を 申請し、図書館で新聞をあさった。

 尹は石橋の説明を聞き、「当時の日本人の息吹が分かるようになった」。

 日韓関係に明るい話題が少ない間も、尹は50人近くを案内してきた。博士論文で日本家屋と観光の融合を取り上げるつもりだ。

 「目を背けていた『負の遺産』が、互いを知り合うきっかけになった」。個と個の交流に一歩先を見すえる可能性がある。=敬称略(清水大輔)

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 たかしげ・はるか 1980年生まれ。経済部などを経て文化くらし報道部記者▼しみず・だいすけ 80年生まれ。水戸、高知総局などを経て社会部記者。

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日中韓つなぐ100冊リスト
2015年1月8日02時01分 朝日新聞

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■東アジアの人文書100冊

 

【中国】

 

朱光潜『詩論』

瞿同祖『中国の法律と中国社会』

費孝通『郷土中国』

馮友蘭『中国哲学略史』

梁漱溟『中国文化要義』

 

梁思成『中国建築史』

熊十力『原儒』上下

王力『漢語史稿』

湯用彤『魏晋玄学論稿』

翦伯賛 主編『中国史綱要』上下

 

李沢厚『美の歴程』

胡縄『アヘン戦争から五・四運動まで』

銭鍾書『談芸録』増訂本

蘇淵雷『仏教と中国の伝統文化』

譚其驤 主編『簡明中国歴史地図集』

 

陳旭麓『近代中国社会の新陳代謝』

李学勤『疑古の時代を脱する』

王銘銘『村落から見た文化と権力――閩台の三村における五つの事例』

趙園『明末清初の士大夫研究』

陳寅恪『寒柳堂集』

 

汪暉『現代中国思想の興起』全四巻

巫鴻『儀礼における美術』上下

李零『兵は詐を以て立つ――『孫子』を読む』

章培恒・駱玉明 主編『中国文学史新著』全三巻

胡鞍鋼『中国政治経済史論 一九四九―一九七六』

 

陳来『東亜儒学九論』

 

【台湾・香港】

 

銭穆『中国歴代政治の得失』

牟宗三『政道と治道』

殷海光『中国文化の展望』全二巻

徐復観『中国の芸術精神』

葉栄鐘『日本占領下の台湾の政治社会運動史』

 

李亦園・楊国樞 主編『中国人の性格――総合科学的検討』

唐君毅『中華民族の花果飄零を説く』

余英時『歴史と思想』

方東美『中国哲学の精神とその発展』

張光直『中国の青銅時代』

 

林毓生『思想と人物』

黄仁宇『万暦十五年』

張灝『幽暗意識と民主の伝統』

杜維明『人間性と自我の修養』

周婉窈『図説 台湾の歴史』

 

王徳威『世紀を超える風采と文才――現代小説家20人』

張仏泉『自由と人権』

羅香林『香港と中西文化の交流』

何炳棣『黄土と中国農業の起源』

夏志清『中国現代小説史』

 

沈従文『中国古代服飾研究』

蘇秉『新・中国文明起源の探求』

 

【韓国】

 

金九『白凡逸志』上下

咸錫憲『意味から見た韓国歴史』

全相運『韓国科学史』

金斗鐘『韓国医学史』

李基白『韓国史新論』

 

金元龍・安輝濬『韓国美術の歴史――先史時代から朝鮮時代まで』

金允植『韓国近代文芸批評史研究』

張師『増補 韓国音楽史』

金烈圭『韓国人の神話』

金容雲・金容国『韓国数学史――数学の窓から見た韓国人の思想と文化』

 

趙東一『韓国文学通史』全六巻

吉熙星『知訥の禅思想』

李泰鎮『韓国社会史研究――農業技術の発達と社会変動』

尹絲淳『韓国儒学思想論』

崔章集『韓国の労働運動と国家』

 

安炳茂『ガリラヤのイエス――イエスの民衆運動』

朴明林『韓国戦争の勃発と起源』全二巻

柳東植『風流道と韓国の宗教思想』

白楽晴『揺れる分断体制』

呉柱錫『古画鑑賞の楽しさ』全二巻

 

金東春『戦争と社会――われわれにとって韓国戦争は何だったのか?』

閔斗基『時間との競争――東アジア近現代史論集』

林熒澤『韓国文学史の論理と体系』

朴熙秉『運化と近代』

金禹昌『風景と心――東洋の絵画と理想郷に対する瞑想』

 

金福栄『眼と精神――韓国現代美術理論』

 吉本隆明さん/朝日新聞から

【日本】

佐藤進一『南北朝の動乱』

丸山眞男『講義録』第六冊・第七冊

吉本隆明『共同幻想論』

石牟礼道子『苦海浄土――わが水俣病』

石母田正『日本の古代国家』『古代国家論 第一部』

 

松下圭一『都市政策を考える』

廣松渉『世界の共同主観的存在構造』

宇沢弘文『自動車の社会的費用』

山口昌男『文化と両義性』

河合隼雄『影の現象学』

 

梅棹忠夫『狩猟と遊牧の世界――自然社会の進化』

網野善彦『増補 無縁・公界・楽――日本中世の自由と平和』

西郷信綱『古典の影』

佐竹昭広『万葉集抜書』

鶴見俊輔『戦時期日本の精神史 一九三一―一九四五年』

 

藤田省三『精神史的考察』 

前田愛『都市空間のなかの文学』

中井久夫『分裂病と人類』

井筒俊彦『意識と本質――精神的東洋を索めて』

白川静『字統』

 
二宮宏之『全体を見る眼と歴史家たち』

多木浩二『天皇の肖像』

伊谷純一郎『自然の慈悲』

ノーマ・フィールド『天皇の逝く国で』

市村弘正『小さなものの諸形態――精神史覚え書』

 

林達夫『精神史』

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(戦後70年)日中韓つなぐ100冊の輪

 



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