■バイタクで再び永定土楼民俗文化村へ戻る
短い初渓村での滞在を終えて、バイタクの運ちゃん周さんのバイク後部にまたがり、再び永定土楼民俗文化村に向かって出発。
昨日、雨と深い霧の中走ってきた泥の山道を再び通らなければならない。
でもこの日は雲一つ無い快晴だ。
周さんはバイクを快調に飛ばす。
前日の雨でぬかるんだ場所も、周さんは慣れたもので難なく通り過ぎていく。
それにしても朝早くの冷たい風が身に凍みる。これは想像以上に辛い。。
無舗装のデコボコ山道を登っていくと、前日は霧でまったく見えなかった周りの景色がきれいに見えてきた。
透き通るような青空の下に、険しい山々が果てしなく連なっていた。
この道はかなり山の上を走っていて、道の左側は急な崖だ。
冷たい風を切りながら、前日は見ることができなかった山々の眺めを楽しんだ。
やがてバイクは峠を越え、ひたすら下り坂を下っていく。
そして初渓村を出発して40分後、初渓村から一番近い町、下洋鎮へ到着した。
バイクは下洋鎮の町を通り過ぎ、広い国道を快調に走る。
もう無舗装のデコボコ山道ではない。
ただ、風がめちゃくちゃ冷たい。顔が痛くてたまらない。
国道を走り続けて1時間。
いくつかの小さい町を通り過ぎ、道沿いに土楼が見えてきた。
永定土楼民俗文化村はもうすぐだ。
初渓村を出て約1時間半が過ぎた頃、バイクで山を越え谷を越え町を越え、再び永定土楼民俗文化村へ戻ってきた。
■次の目的地を田螺坑土楼群に決定
昨日今日とお世話になった周さんへ別れを言って、まずは腹ごしらえだ。
朝から何も食べてなかった空腹を満たすのと、1時間半も冷たい風にさらされて冷え切った体を温めなければならない。
ふと、店の前の厨房で威勢良く料理を作っているオヤジの姿が目に入った。
昨日昼飯を食べた食堂のオヤジだ。
昨日食べたチンジャオロースーはうまかったし、またこの店で飯を食べることにした。
とりあえず冷え切った体を温めるため、熱々の麺(牛肉麺)を注文。
これがまたうまかった。
冷え切った体が芯から温まった。
麺を食べ終わるころ、店のオヤジは僕を見て、「お、君は昨日も来てたね。」と声をかけてきた。
「ええ、昨日あれから初渓村へ行って、さっき帰ってきました。」
「初渓村まで行ったのか!?あんな天気でよく行ったなあ。」と、オヤジは驚いていた。
さて、この日は夕方に龍岩まで戻らなければならない。
夕方の出発までの予定を牛肉麺を食べつつ考えていた。
ふと、店の壁に大きく掲げられていた土楼の写真が目に入った。
そして店のオヤジに聞いてみた。
「この土楼はどこですか?」
「ああ、田螺坑土楼群てところだ。昨日お前に良い所だって勧めただろ?」
田螺坑土楼群は土楼群の中でも景色の美しさで有名なところだ。
5つの円楼と方楼がきれいに並ぶこの土楼群に行くことに決めた。
で、初渓村と同様、どうやって行くかだ。
やはりバイタクをチャーターして行くしかなさそうだ。
店のオヤジに田螺坑土楼群に行くのにバイタクをチャーターできるか聞いてみた。
「できるとも。隣の店の兄ちゃんが連れて行ってくれるからちょっと待ってて。」
と、店の隣へ行き、一人の兄ちゃんを呼びに行った。
田螺坑土楼群まで連れて行ってくれる兄ちゃんは李さんという。
かなり恰幅の良い若いんだか若くないんだか分からないかんじの李さん。
李さんのバイクにまたがり、さっそく田螺坑土楼群を目指します。
■田螺坑土楼群への道のりも長かった…
李さんはバイク後部に備え付けてあるスピーカーから大音量でダンスミュージックを流しながらバイクを走らせた。
おかげで行く先々でかなり注目を浴びることになった。
田螺坑土楼群へは、永定土楼民俗文化村から初渓村へ向かう道とは逆方向となる。
しかし、初渓村へ行く道と同じく道路は大改修中で、無舗装の道は前日の雨によって泥だらけになっていた。
しかもその道をアモイなど遠くから観光に来た乗用車や大型バスがひっきりなしに通る。
ますます道はぐちゃぐちゃになって大渋滞になっていた。
李さんのバイクはそれらをすり抜けて順調に走っていく。
大音量のダンスミュージックが山間に響く。
永定土楼民俗文化村から田螺坑土楼群までは距離的にそれほど遠くはない。
田螺坑土楼群へ行くことに決めた理由もそれだった。
だが、どうも今回の旅は順調には行かないようだ。
田螺坑土楼群へ最短で行くことができる道が、道路改修中で通行止めになっていたのだ。
「かなり遠回りの道を行くことになるけど、どうする?」と、李さんは僕に尋ねた。
「遠回りするけど、行って帰ってきて午後3時ぐらいまでには永定土楼民俗文化村へは戻れると思うよ。」
またまた1時間以上のバイク移動となってしまうが、夕方の龍岩へ戻る時間までに帰ってくることができるなら、
せっかくここまできて諦めるのはもったいない。
「分かりました。行きましょう!」と李さんへ返事をし、再び田螺坑土楼群を目指すことになった。
李さんのバイクは山道をひたすら走り続けた。
初渓村へ向かう無舗装の泥道とは違い、ちゃんと舗装された快適な道だ。
のどかな山々の景色とは似つかわしくない、李さんのバイク後部から流れるダンスミュージックが、
不思議と気分を盛り上げてくれる。
李さんも音楽にノッてきたのか、かなりのスピードで山道を駆け抜けていく。
山道を走り続けて約1時間。
土楼がいくつか建ち並ぶ山あいの村に到着した。
「ここの土楼も有名だから、ついでに見ていくか?」と、李さんは言った。
天気は良いけど吹き付ける風は冷たく、体が冷え切っていた僕は休憩ついでに土楼見学をすることにした。
村の一角に巨大な土楼が現れた。
この土楼は裕昌楼という。
5階建のかなり大きな土楼だが、1308年に建てられた中国で最も古い土楼の一つである。
よく見ると、土楼内部の柱が微妙に傾いている。
聞くと、建てた時の柱の測量ミスで柱がジグザグになっているそうだ。
それでも700年もの間、何事もなく人々がここで暮らしているというのが不思議だ。
李さんは僕を裕昌楼にいる知り合いのところへ連れて行き、お茶をごちそうしてくれた。
お茶はもちろん福建省名産の烏龍茶。
冷えた体にとても沁みる温かさ。
李さんとその知り合いのおばちゃんは客家語で話している。
二人とも客家人だ。
はっきり言ってまったく何を話しているか分からない。。もはや方言という域を超えている。
中国の方言を聞くと、これを同じ中国語としてひと括りにするのが正しいのか疑問に思えてくる。
温かいお茶を頂いて、裕昌楼内をぶらっと見て回った。
この裕昌楼は観光客がたくさんいた。
ついでに頂いた烏龍茶の茶葉をお土産に買って帰ることにした。
裕昌楼を見学した後、再びバイクに乗っていよいよ田螺坑土楼群へ。
■絶景の田螺坑土楼群
裕昌楼を出発して約20分ほどで、山すそに5つの土楼が固まって建っているのが見えた。
これが田螺坑土楼群だ。
田螺坑土楼群は山の上の展望台から見るのが一番良いということで、下から見える展望台は
かるく通り過ぎて、展望台目指して山道を登り始めた。
バイクは田螺坑土楼群を横から見ながら山道を駆け抜けた。
15分後、田螺坑土楼群が良く見える展望台に到着。
天気の良い日曜日。展望台は各地からの観光客で溢れていた。
広東語がどこからともなく聞こえてくる。香港人の団体客もいるようだ。
たくさんの観光客を掻き分けて進んでいくと、土楼群が見えてきた。
おお、これが有名な田螺坑土楼群の景色だ。
田螺坑土楼群は5つの土楼から形成されている。
中央に四角い方楼の歩雲楼、そしてそれを囲むように円楼の和昌楼、振昌楼、瑞雲楼、文昌楼という土楼が建っている。
この5つの土楼が並ぶ様は、テーブルに並べられた「四菜一湯」と称されている。
4つの円楼が「四菜(4つのおかず)」、中央の1つの方楼が「一湯(1つのスープ)」と見立てられているというわけだ。
とはいえ、四角い方楼がスープの器というのは、少々無理がある気がするが…。
それはさておき、5つの土楼と、雄大な山々、そして青い空が見事にマッチした雄大な景色は素晴らしく、
しばらく展望台からの眺めを楽しんだ。
展望台には観光客がたくさん。
展望台にあった土楼形のトイレ。
田螺坑土楼群の絶景を堪能し、再び永定土楼民族文化村へ戻ることに。
■承啓楼に寄り道して永定土楼民族文化村へ
田螺坑土楼群が見える展望台を後にし、再び李さんのバイタクで永定土楼民族文化村へ。
この日は本当に天気がよく、ツーリング日和だった。
ただ、太陽の光は温かいが風がとても冷たい。。
顔が痛くなる。
くねくね山道をひたすら走る。
1時間ほど走って、道沿いに大きな土楼が見えた。
永定土楼民族文化村の振成楼に次いで有名な土楼、承啓楼だ。
李さんが、「ちょっと寄っていくか?」と聞いてきたので、
せっかくなので少し見学していくことにした。
承啓楼の前は芝生が植えられ、ちょっとした公園のようになっていた。
中国各地から来た団体観光客もたくさん。
すっかり観光地化されているようだ。
承啓楼も世界遺産に登録された土楼の一つだ。
年季を感じる承啓楼の土壁。
でも、承啓楼のすぐそばでは、近所の住民が恥ずかし気もなく洗濯物を干していた。
承啓楼の隣には、大型の方楼、世澤楼が建っている。
で、承啓楼の中を見学しようと入り口に行くと、
入り口で待ち構えていたおばちゃんが、「チケットを見せてください。」と、僕の行く手を阻んだ。
また金を取るのか。。でも当たり前か。。
ここに来て土楼見学に少々飽きを感じ始めていた僕は、中を見学することを諦めて、
李さんのバイクにまたがり、永定土楼民族文化村へ戻った。
■土楼村に別れを告げて、龍岩へ
田螺坑土楼群といくつかの土楼見学を終えて、午後2時すぎに永定土楼民族文化村へ戻ってきた。
李さんは、「ここで龍岩へのバスチケットが買えるから。」と、一軒のお店のようなところに僕を案内した。
看板にはちゃんとバスターミナルと書かれてある。
でもどう見ても普通の店だ。。
店の中のカウンターで龍岩までのバスチケットを購入。21元。
バスはちょうど2時半発のものがあった。
李さんからは、「夕方は道が渋滞するから早めのバスに乗るといい。」とアドバイスをもらっていた。
2時半発だと、夕方5~6時には龍岩へ到着できるのでちょうどよかった。
少し待つとバスが到着。
土楼村に別れを告げ、バスは龍岩へ向け出発。
車窓からの景色を眺めつつ、田舎道を走り続けて2時間半後、
午後5時過ぎごろ、龍岩バスターミナルへ到着した。
龍岩でこの旅最後の夜を過ごし、旅の最終日は、深セン行き列車に乗って旅は残りあとわずか。
(つづく)
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