ぼやきなおかんの本棚

本や映画、劇などのレビュー。
英米の古い短編怪奇小説、
日本語で入手困難なものを紹介してます。

山の霊異記 赤いヤッケの男 / 安曇潤平

2013-10-15 | ブックレビュー 和書

子どもの頃によくみたテレビ番組、「あなたの知らない世界。」

この番組の素晴らしさと怖さは、普通の人が普通の暮らしをする中で突然に異界と遭遇する、というところだろう。今も覚えているエピソード。旅先の田舎の旅館で真夜中、寝ていた自分の布団の周囲をぐるぐると歩き回る沢山の異形の人々。本人は当然金縛り。あるいは友引のお葬式にまつわる怪しい連鎖。

日本の土壌に密着した、あの世界観がまさしく再現されたと思わせる本を読んだ。山の怪異のみを厳選して書かれている短編集だ。まさに山とは異界そのものか。どの話しにも全く予測のつかない怖さと結末がある。山登りは多分一生することがないだろう私にとっては、山の魅力を伝えてくれる話しの数々でもある。

この短編集のすべてのエピソードが怖く意表をつくものだが、あえて選ぶとするなら、表題の「赤いヤッケの男」と「アタックザック」の二編が怖かった。また人の生き死にが関わる「山」の話しには、悲しいものも多い。「急行アルプス」「巻美温泉」「猿ぼぼ」など。なんとも釈然としない、怖くて不思議で印象に残るのは、「カラビナ」「鎌策婆」

遠い昔の学生時代に、ワンゲルのバイトを回してもらって一泊二日で大台ケ原に行ったことがある。ジャージとスニーカーだったのでたいした山歩きではなかったが、渓谷を望む景色が忘れられない。ここには「いっぽんだたら」が住むそうだ。

赤いヤッケの男(文庫D) (MF文庫ダ・ヴィンチ)
クリエーター情報なし
メディアファクトリー


最新の画像もっと見る

コメントを投稿