ぼやきなおかんの本棚

本や映画、劇などのレビュー。
英米の古い短編怪奇小説、
日本語で入手困難なものを紹介してます。

はっぴいさん (絵本)

2008-07-26 | ブックレビュー 和書
はっぴぃさん
荒井 良二
偕成社

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NHKの幼児向け教育番組に「スキマのくにのポルタ」とかいう短いアニメがあって、とっても好きでした。

何がって、絵がいいんです。一見「へたうま」っぽくて、何ともほのぼのとした色使いとか妙に懐かしさを感じる人や動物たち。その絵を描いていたのがどうもこの作者らしい。えっ、おとこのひとだったの!?絵の雰囲気から、きっと二十代ぐらいの女性の手になるものと勝手にイメージしてました。

はっぴいさんは、お願いするとしあわせにしてくれる人のようです。わたしも朝早く起きてお弁当づくりなんかしないで、はっぴいさんをさがしにいきたい。そして夜更かししても朝ちゃんと起きられる人にしてもらいたい。それからダンナをお弁当づくりの得意な人にしてください。でも娘の通う学校に給食を入れてもらうほうがいいかな?

この本は、文章も活字ではなくて、作者の新井さんの字で書かれています。この絵本全体が作者の世界みたいで、引き込まれるような気がします。


プリズン・ストーリーズ

2008-07-06 | ブックレビュー 和書
プリズン・ストーリーズ (新潮文庫 ア 5-27)
ジェフリー・アーチャー
新潮社

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 ★★★★★(特に、収録作「この水は飲めません」と「ソロモンの知恵」)

 ジェフリー・アーチャーは、サッチャー政権下の代議士にして小説家で知られています。もう二十年ほど前に、「ケインとアベル」などの長編ではまってから、短編が出るたび楽しんでました。数年前にスキャンダルの絡んだ偽証の罪で投獄されたのは知ってましたが、まさかその刑務所(プリズン)の中で取材していたとは・・・。

 「事実は小説より奇なり」を実感できます。12篇の短編のうち、9篇までが獄中で取材した話をもとにしてして、残りの3篇も事実を元に書かれたものだそうです。これがどれも「ありえない」の連発で、人間の本性とかをまざまざと見せてくれます。短い話の中で、100のうち99まで淡々と進めながら伏線を張りつめ、最後の1で一気に落とす。アーチャーのお得意です。そして彼の話の多くは、人にやさしいんです。正直者にハッピーを、悪いヤツに厳しい結果が待っています。

 今年は旅行に行けないけど、南のリゾート行きの飛行機の中で読みたい一冊かな。

 翻訳は、永井淳さん。翻訳のうまさもこの小説を楽しめた大事な部分です。間違いなし。太鼓判です。