ぼやきなおかんの本棚

本や映画、劇などのレビュー。
英米の古い短編怪奇小説、
日本語で入手困難なものを紹介してます。

心霊スポットにケンカ売る! 命がけノンフィクション

2014-08-02 | オカルト

まあ、ようやるなあってあきれます。

「耳袋」と言えば、江戸時代に怪異を集めて記したノンフィクション怪談本の元祖。

そして「新耳袋」は中山市朗氏と木原浩勝氏の実話怪談を集めた、とっても怖い怪談本です。なんせ本を積んでおくだけで、なんか寄って来る、なんてレビューさえ見かけるほど。

「新耳袋 殴り込み」は、その新耳袋の心霊スポットを訪ね歩くノンフィクションエッセイ。そんな所に行くだけでも、どうかと思うのに、数珠やお守り禁止で、丑三つ時にビデオ回しに行くなんて、なんという命知らず。(おまけに霊を挑発するし)

むちゃくちゃだし、面白い。すいません。人の怖がる姿ってちょっと可笑しい。

しかし一番頭が下がるのは、「怪異」に魅せられた人の執念です。説明のつかないものをこの目で見たいという気持ちわかるけど、行かへんなぁ、スポットには。たたられると嫌だもの。だから、読んでその気分を味わえます。

私も子どもの頃からの、筋金入りのオカルト好き。心霊、超常現象関係のテレビや動画を見る時が至福の時間。実話怪談本も沢山読んでいますが、心霊スポット体験記はエンターテイメントの新しいジャンルになるのでは?

新耳袋殴り込み 第一夜 (角川ホラー文庫)
クリエーター情報なし
角川書店

「新耳袋 殴り込み」は、第一夜から第三夜まで出ています。

第一夜と第二夜は良かったです。おもしろいながらも、ノンフィクション色?が濃くて、心霊現象やスポットに対する熱い想いが伝わります。

でも、今読んでる第三夜はいかんなぁ。飽きたわけではないです。ワンパターンでいいんです。わざと声を上げておどかすなんてバラエティーみたいな陳腐なおふざけなしでお願いしたい。ギンティーさんじゃなくても腹が立ちます。

なにも起こらなくても、怖い所に行くだけで読んでる方は楽しいのですから。


重い気分に浸りたい、おすすめの本

2014-08-01 | ブックレビュー 和書

トマス・クックは好きな人にはたまらない。

全編に流れる、陰鬱な雰囲気。犯罪を取り巻く、どうしようもない事情。重い小説です。

謎が解けた後に、一層落ち込んで引きずってしまうようなミステリーばかりです。

「ジュリアン・ウェルズ」は、ミステリーではありません。クックの新境地かな?と思いましたが、最後まで鬱々とした印象を読者に与え続けているのは、変わりませんでした。

主な登場人物はわずかに5名程度です。

ジュリアンは、ノンフィクション作家。残忍な犯罪と犯罪者のみをターゲットにして本を書いていましたが、謎の言葉を残して命を絶ちます。彼の言葉の意味と、自殺の真相を探る為、親友のフィリップとジュリアンの妹、ロレッタが彼の著作とともに足跡をたどります。

章がジュリアンの一つ一つの著作になっています。取材先をたどる旅は、ヨーロッパから南米に渡ります。ある時は彼と過ごした青年時代の思い出、またある時は残虐な犯罪の描写。クックの小説は、どれもこんな風に「静」の中に「暴」があるようなイメージがあります。

闇と光、悪と良心。それがどんなものなのかを知りたい人に、おすすめです。

ジュリアン・ウェルズの葬られた秘密
クリエーター情報なし
早川書房