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【野球:】ジャイアンツ急降下の原因分析

2006-06-30 18:28:07 | スポーツ
本来であれば、私は5/28のエントリーでセ・パ交流戦の前半戦についての分析を書いているから、交流戦後半戦についても書くべき・・ではあるが、私は野球はガキの頃からG党であり、そのジャイアンツが今シーズンロケットスタートを切ったかと思いきや6月6日から29日の僅か3週間強で2勝18敗という有り得ない負けっぷりを披露し、あっという間に首位中日から9.5ゲーム差(負け数の差12)という奈落の底に転落してしまったので、正直書く気が失せた(苦笑)。

9.5ゲーム差というのは「絶望的」な数字で、これを今から逆転優勝すれば1996年の長嶋巨人の最大11.5ゲーム差をひっくり返した「メークドラマ」優勝に匹敵するものがあるが、まぁリーグ優勝についてはファンの私ももうどうでもよい。(元々最初突っ走ると思ってなかったし)
ただやはり、巨人は巨人で、戦力が苦しい創設2年目の楽天ではないのだから、こんなにズルズル負けていい筈はない。TV視聴率は好調だった4月でさえ下がっていたのに、とりあえずファンが多い巨人がこのざまでは更に野球離れが進むことにもなりかねない。

という訳で、半ば怒りから-ではあるが、あっという間に巨人が急降下した原因をとりあえず分析してみたい。


巨人の好調さを分析した4/12のエントリーの最後に、私はこう書いた。
《巨人について言えば、打撃陣の調子が落ち込んだ時にどういう試合運びができるか、負けを減らせるかってところで真価が問われるということだ。》

結局その「真価」は、勢いだけだった、かもしれない(苦笑)。
勿論、低迷した最大の・明らかな理由は、「主力の怪我」である。高橋由が復帰したと思ったら2度目の怪我をし、故障していた投手陣が戻ってきたと思ったら今度は小久保が怪我をし、矢野まで相次いで故障で離脱した。その皺寄せが捕手の阿部に打撃面での負担も強いて、阿部まで腰痛で(ついでに軽い怪我もして)欠場した。好調時の5~8番が次々抜け、飛車角金桂抜きくらいの酷い状態で連戦が続いたから、得点力が落ちるのは当たり前だし連敗があるのも仕方ないとは言える。

しかし、だ。それは、あくまで素人にも分かる表向きの理由である。
というのも、件の連敗中、守備面では投手陣が殆ど怪我から癒え先発も6枚は揃えられる状態になっていたし、残っていた打撃陣も、不動の3番二岡・4番李はほぼずっと好調をキープしていたからだ。3番4番が打っていて、先発もそれなりにゲームを作っていて、それで2勝18敗というのはやっぱり本来は有り得ない負け方なのだ。

実際、その18敗のうち、1点差負けが5試合、2点差負けが5試合と何ともストレスの溜まる「あと一歩」の試合が多かった。


で、ここから連敗の原因を分析すると、
(1)肝心なところでのミスの連発
単純な、野手の守備時の捕球エラーや攻撃時のゲッツーってことだけではなく、進塁打が打てなかったり打球の判断を誤って走塁ミスしたり本来ゲッツーを取れるところでカバーが遅れて取れなかったり投手で言えば先頭打者に容易に四球を与えたり・・・と細かいミスが連発した。
又、対ロッテ戦で小関が李の2ランHRの際に3塁ベースを踏み忘れアウトになってHR取り消し(これは小関&巨人が猛抗議しまだ揉めているが)とか、対中日戦で守備時にディロンが2アウトなのにも関わらず内野ゴロを何故か一塁に送らず二塁走者をランダンプレーにかけようとして逆に走塁妨害を取られその後ピッチャーが打たれるとか、プロでは考えられないような「ボーンヘッド」もその試合の敗戦に大きく影響した。

すなわち、まず野球の「基本」がきちんとできていなかった。
1点差2点差という「競り負け」が多いことを考えれば、これは非常に勿体無いというか情けないと言える。

(2)リリーフ陣の不調
18敗のうち、先発以降のリリーフ陣に自責点がついているケースが10回。その中でリリーフ陣に直接黒星がついたのは3回だけではあるが、1点差や2点差のビハインドで何とか踏ん張っていて、その後リリーフ陣が点を更に与えてジ・エンドってパターンが多い。
逆に先発陣を見てみると、18敗のうち、自責点4点での降板が5回、5点が2回、6点以上が1回である。で、その自責点4点での降板も、五回持たずにというケースは1回のみで、他の4回は全て七回の途中かそれ以降の降板となっている。つまり、序盤中盤でゲームを先発が壊して勝てなかったというケースは、4回のみと言ってもいい。本当は、先発としてきちんと役目を果たしたと言えるのは七回3失点以内だろうが(それで防御率が3.8ぐらいでギリギリなので)、七回4失点ぐらいならまぁゲームを壊さない許容範囲とは言える。

特に一人批判の対象として強いて名前を挙げるなら久保で、彼はストレートはコンスタントに140km台中盤で多彩な変化球を持ち制球力もある投手の筈なのに(だから勝ちパターンの場合の最初のセットアッパーになっている)、どうにもこうにも姿勢が弱気で、怖がって際どいところばかりを狙って四球→その後焦って甘いところに投げて打たれるという「最悪」をよくやってしまう。
もう一人のセットアッパーの林の場合は「技術的に」制球が日によって安定していないのでまだ仕方ないと言える余地はあるが、久保の場合は能力はあるのに精神的な部分で能力が発揮できていないから見ている方としては非常に歯痒いのだ。これはコーチも同じ感想だと思う。

(3)原監督の戦略ミス
4月、何故打線が好調だったかと言うと、二岡-李-高橋由-小久保-阿部という中距離広角バッターとHRバッターの太い軸があって、その前後に調子がいいor勢いがある選手を使っていたから、である。
ところが、その太い軸がどんどん細くなっていって、当然打線の組み替えは余儀なく行わねばならなかったのだが、原監督は監督としての経験不足かセンスのなさかその他の原因かは分からないが、明らかなミスをした。

それは、「猫の目打線」(=日・相手チームの先発によってコロコロ打線をいじる)にしてしまったことである。例えば、巨人には、上の軸のバッターの完璧な代役にはならないまでも、まだ仁志や清水といった生え抜きのベテランでそれなりに実績がある選手がいた訳だ。彼らは4月にはなかなか出番を与えられなかったのだから、彼らを当面の軸としてスタメンで固定すべきだった。
相手が左投手だから右を並べる、或いは右だから左を並べるというのは「間違い」ではないが、それは、各野手の打撃走塁能力が殆ど同じ場合の話である。全然打てない右を沢山並べるより、スタメンで使っていればそれなりの結果が期待できる野手を投手の右左に関係なく置いておく方のがいいのである。
又、スタメンで4打席程度立っていた方がいいタイプ、逆に代打やたまの起用の方が結果が出るタイプというのも確実にある。その見極めも重要な筈だが、できていない。

で、固定する選手がいたと思ったら、5番ディロンである。(ちなみにこれを書いてる当日の阪神戦のスタメンでも5番ディロンだった。ちなみに、早速1回からとんでもない送球エラーをしている・・・)足は遅い、守備はノーセンス、パワーもなければ打率も残せないバッターを5番という重要ポジションに据えるのは、原監督は気が触れたのかと言われてもしょうがない。新戦力の外人だからってのは理由にならない。これは私は"自信を持って"「間違い」と言う。
もしかしたら彼は1年2年我慢して使っていれば日本の投手にもなれて打撃が良くなるのかもしれないが、余りにも守備がお粗末だし、少なくとも「緊急事態」の中でそんな余裕はない筈だ。

(4)過去の負の遺産
(3)に関係していることだが、昨今の巨人はFAやメジャーなどから大砲を補強して打線を組むことが多かった。実際、完全にスタメンで定着している生え抜きの野手は、2000年のドラフトの阿部が最後である。何とか矢野、亀井と「候補」の可能性がある若手は出てきたが、結局のところ今シーズンも頼ってきているのはパ・リーグからの移籍組ばかりである。

つまり、生え抜きの若手を育ててこなかった分の皺寄せが、今になって出ている、ということである。

(5)コーチ陣の能力
特に打撃について言えば、バッティングコーチの能力も疑わざるを得ない状況だ。というのも、二岡-李-高橋由-小久保-阿部という太い軸の5人は、打撃センスやパンチ力などは「最初から」非凡なものを持っており、個々で状況判断をしながら(ベンチからの指示がなくても)ある程度バッティングができる選手である。

しかし、彼ら5人以外にはそこまでの能力を持つものは少ない。であれば、相手投手をどうやって打ち崩していくか、例えばストライクを取りに来る甘い球を積極的に狙わせる、或いはクサい球はファールでカットしながら球数を投げさせる、或いは大振りをしないで徹底的に逆方向に狙わせる・・・などの指示の徹底が必要になるのだが、それがちっとも感じられないのは問題なのである。


さて、巨人は、今日6/30からの3連戦で阪神、そして来週頭の3連戦で中日と当たる。「最後」とは言わないが、優勝を目指すならほぼ最後に近いチャンスと言っていいだろう。この6つで、最低4勝2敗以上でなければ巨人が優勝争いする可能性は相当に低い。
ついでに、私も巨人が4勝2敗以上でなかったら、今シーズンのペナントを観るのは終了する可能性が高い(苦笑)