lien

日々触れる情報から様々なことを考え、その共有・一般化を図る

【サッカー】この「現実」をどう受けとめるのか~ドイツW杯日本代表を振り返る

2006-06-23 22:36:13 | スポーツ
唐突だが、日本は言霊の国である。その言霊の国の悪い点と言えば、受け容れたくない現実まで言葉によって誤魔化そうとしてしまうことにある。大東亜戦争の頃の「神国日本」のように、だ。


さて、今回のドイツW杯、日本は1分2敗とグループ最下位であっさりドイツを後にすることとなった。
最初の2戦は、日本(のマスコミ)が国内での放送時間を考慮してわざわざドイツで昼間の試合を組んでもらったために、試合内容云々以前に日本の選手も相手国の選手も暑さで思うように動けていなかった。そして3戦目、夜の動き易い時間帯のキックオフで、ディフェンディングチャンプ&グループ内でも当然最強のブラジル相手となった時に、日本は「たまたま」先制こそしたものの、結局虐殺された。

3戦目については、「嬲(なぶ)られた」と言ってもいい。ブラジルは既にGL突破は決めていたこともあって、最初から半ば手抜きで遊んでいた。
前半30分までにブラジルに先制点が入らなかったのは、川口のセービングもあるが、チャンスになりかけるorチャンスのシーンで、ブラジルの選手が「成功の可能性は低いけど成功したら決定的」のプレーを選択することが多かったから、すなわち、パスでまだ崩そうと思えば崩せるが強引にドリブル突破してみるとかちょっとコース狭いけど打ってみるとかってプレーをしていたからに過ぎない。

試合後に日本の解説者陣はこぞって「前半ロスタイムの失点が痛かった」と言っていたが(ジーコも言ってたような)、別にあの得点がなくてもブラジルはしっかり逆転はしていただろう。
試合の流れなんてことは、実力が"拮抗"した者同士の対戦において論って意味のあることで、これだけ力量差のあるチームの対戦で言ってもしょうがない。実際、ブラジルは勝つ必要なんて全くなかった、ただW杯での連勝記録やロナウドの調整不足&得点記録などの「おまけ」があったから、1点取られてからはちょっと本気になっただけ、それで簡単に4点も取れてしまうんだから、両者の「差」は推して知るべしだ。

パススピード、パス精度、トラップ、フェイントなどの技術的な部分から始まり、手・体の使い方、当たりの強さ、スピード、運動量などのフィジカルな部分、そして視野の広さ、ポジショニング、判断の早さなどの「頭」の部分まで、何から何まで世界王者ブラジルと日本の差は"やはり"歴然としていた。
私は、ブラジル戦前に、まだ勝てるとかチャンスはあるとか言っていたマスコミには正直うんざりだった。最初に一番勝ち点を取っておかなければいけない相手(=オーストラリア)に負けて、しかも2戦通じてラッキーな相手(乃至審判)のミスによるゴール1点しかあげれていなくて、状況がどうだろうと一番強い相手に勝てる道理なんかはない。1年前のコンフェデでは日本はブラジルに引き分けたじゃないかって声もあるだろうが、あの時もブラジルは勝つ必要は全くなかった試合だったうえ、コンフェデとW杯では残念ながら試合の重みが違い過ぎる。


で、今回、日本にとっては最後にドルトムントで大敗し「悪夢」「悲劇」となった訳だが、悪夢や悲劇なんて言葉で煙に巻いてはいけない、のである。世界のトップクラスとの差はまだこんなにあったのかと謙虚に受け止め、どこがどれだけ足りていないのかを冷静に分析することが今後につながる道である。曲がりなりにも海外のサッカーの試合をかなりの数観てきている私としては、このことは"強く"訴えておきたい。

勿論、W杯はお祭り的側面もあるし、結果がどうであろうと自国の代表を純粋に応援するのが悪いなんてことは言わない。私のような人間ばかりだったら現地にかけつけるサポーターがいなくなってしまうから、熱心に日本代表を応援しているサポの方々には、今後もしっかりと応援を続けて欲しいとは思う。

ただ、余り普段サッカーをご覧にならない、或いは日本代表かJの試合を観るだけの方々には、「今」の日本代表の状況は結構厳しい(厳しくなった)ってことは認識しておいて頂きたいとも存ずる。
というのも、日本は今回ドイツで3大会連続3度目のW杯出場だった。最初のフランスでは何もできなかったものの、前回の日韓ホーム開催では、GLは突破でき、その日韓以降、日本選手も海外からの注目を集めるようになり(ジャパンマネーへの関心もあっただろうが)海外移籍する選手が続出した。

つまり、今回のドイツというヨーロッパでのW杯は、日本にとっては「本当の実力を見定める"試金石"」だったのだ。少なくとも、海外のメディアやクラブ関係者で日本の試合を観ていた者はそうだっただろうと思う。その点では、日本は決勝Tに行けたかどうかは別にしても何らかの結果を残さなければならなかった・・・のだが、ご存知の通り最低と言ってもいいような結果だ。
次回の南アでリベンジすればいいと言っても、来年からオーストラリアがAFCに加わることが決まっており、今回のドイツでも韓国以外のアジア勢はなすすべなしの結果に終わっているので、アジア枠が減らされる可能性もある。もし枠まで1~1.5枠減らされれば、リベンジどころか本番まで行けない可能性まで出てきてしまう。だから「厳しい」のである。

「よく頑張りました」は、W杯であれば、言っていいのは初出場(或いは実質初と言ってもいいような40年、50年ぶりの出場とか)の時だけである。何故なら、そこに出てくる選手は、殆どが普段「プロ」のリーグで試合をしている人間だからである。
アマが参加するオリンピックのどマイナーな個人競技で、スポンサーもロクにいない、練習環境を確保するだけで大変って競技の選手であれば成績に文句なんて誰も言えないが、サッカーは世界で最も競技人口の多いスポーツである。プロとして給料貰っていて、代表においても「儲かってる」サッカー協会や各スポンサーからきっちり援助してもらって試合に出ているのだから、特にスタジアムにまで出掛けて行って応援しているサポの方々は、本来もっと文句を言っていいのである。

当然、南米やヨーロッパの強豪国では日本はないので、「勝たなきゃ許さん」とか「綺麗なパスサッカーしないと許さん」とかまでの態度は取る必要がない・取っても仕方がないのだが、今回のブラジル戦のように「最低勝たないといけない試合なのに受け身受け身でロクに走れない(最後まで走っていたのはヒデ一人だけだった)、シュートも打てないor枠に飛ばない(実際ブラジルのGKがファインセーブをしたシーンはなかった。玉田の1点はGKノーチャンスだったし)」ような試合には、純粋に応援しているサポもブーイングの一つでもやった方がいい。
観客の側もサッカーを見る目をつけて、プレーによっては厳しい対応を見せれるようにならないと、やってる側の意識もなかなか変えられない=レベルアップにつながらない。

これが、お芝居やお笑いのライブだったらと考えれば、私の言っていることは理解してもらえるだろうと思う。「課題が見えた」と納得しようとしている関係者・ファンもいるようだが、W杯は、"最高"の"本番"の舞台、すなわち、「課題」をできる限りクリアしたうえで実力を出しきる場である筈で、逆に今回が日本にとって本当に「課題が見えた」だけの戦いだったなら、日本は仏大会から今までの8年間を相当に無為にしただけってことにもなりかねない。

厳しいことを書いたが、やる側も、見る側も、「日本は本当に強くなりたい・強くなって欲しいのか、たまに運良くW杯に参加するだけの弱いままでもいい」のか、態度をはっきりすべきだと思う。
「世界」だって止まっていてはくれないのである。前者=強くなりたい・強くなって欲しいのなら、このままでいい訳はない。


*追記:
「日本に強くなって欲しい」と思っていてこれまでサッカーを余り観ていない方には、是非これからの決勝トーナメントの試合を録画してでも観て頂きたい。今回は波乱は少なく、強豪国が殆ど順当に勝ち上がりを決めている。一発勝負であるし、相当に激しくレベルの高い試合が幾つも観られると思う。