夏の言の葉

日頃気になった「言葉」についてを中心に、愛猫のこと、ロード・オブ・ザ・リング4コママンガ等、取り上げていきます。

語用論入門 その1

2005-09-23 | 国語学
 今回は、私の専門であった語用論について軽く説明いたします。
でも、説明するより、例を挙げた方が手っ取り早い。

お塩、取ってくれる?

これは、形としては疑問文です。でも、こう言われて返事だけして、お塩を取ってあげない人はまず居ませんね?(笑)

つまり、この発言は疑問文の形を取りながら、実は人に何かを「させる」んです。

言葉によって人に何かをさせる、これが語用論です。

この例は、疑問→依頼→行動 の形です。

こういった例は、身近にたくさんありますね。ちょっと気を付けて聞いてみてください。

あなたもきっと、疑問文に何かをさせられてますよ(笑)。

Can I help you?

英語も同じです。

直訳すると、私はあなたを手伝うことが出来ますか?

でも、これは疑問→申し出。

まぁ、遠回しな言い方の多くが、語用論の範疇です。

特に疑問の形が多いのは、相手に判断をゆだねることで、少し距離を取る、といいますか、押しつけでない言い方にしている、ということが出来ると思います。

一種の丁寧な表現なのでしょう。

以上、入門。

ね?結構「語用論」っておもしろいでしょう?

敬語 その1「とんでもない」

2005-09-23 | 国語学
最近知ったんです。「とんでもない」って言葉の丁寧な言い方。  
Q.どちらを使いますか?  

 1.とんでもございません  

 2.とんでもないことでございます    

さて、どちらを選びました?

そもそも、「とんでもない」と言う言葉の構成はどうなっているのでしょう。

「とんでも」+「ない」でしょうか?

1.を選んだ方は、こっちですね。「ない」の丁寧な言い方が「ございません」なので「とんでも」+「ございません」にしたわけです。

では、「とんでも」とは何でしょう?「とんでも」が無いとは何でしょうか?

ふっふっふ、お分かりですね。

正解は2の「とんでもないことでございます」です。

「とんでもない」は一続きの言葉で形容詞です。「とんでもな・い」なのです。

ですからあえて丁寧な言い方にするとすれば、「とんでもないことでございます」と、なが~くなってしまうのです。

私もつい最近まで「いえいえ、とんでもございません!」などと言っておりました。考えてみるものですね。  

「配偶者」さん

2005-09-20 | 国語学
 先日、私の敬愛する年輩のご婦人が「夫のことを『ご主人』なんて呼ばないでください、って若いお友達に言われたのよ。なんて言ったらいいのかしら?『夫さん』とか?」と笑っておられました。
 私も何気なく「うちの主人が・・・」などと申しておりますが、確かにそう言われると私は夫の下僕ではないのです。気にし始めると何だか素直に「主人」と言えなくなりました。

他にもいろいろな呼び方がありますね。

 法的に言うと「配偶者」「夫」などが適当なのでしょうか。でも、「夫」と書いて「つま」と読んだりする文献もあります。

 「宿六」とか「背の君」とか、ちょっとおもしろいものも。

 子供ができたら「うちのお父さん」とか「パパ」とか言ってしまうことも多いでしょう。


 個人によって同じ言葉でも違う意味を持つこともあります。

 個人の言葉の認識は、その言葉にまつわる記憶に負うことが多いからです。

 同じ言葉でも、人を不快にさせたり、逆に心地よくさせたり、本当に「良く」言葉を使うというのは難しいものです。


 反対に「妻」さんは、なんと呼ばれるのがベストなのでしょう? 「奥さん」は良いようなのですが、この言葉で「ハイソな奥様」をイメージする方もいらっしゃるし、いつでも適当とは限りません。私は「奥」に引っ込んでないっ!と反発なさる向きもあるやも知れません。

 個人的に、私は「女房」と言われるのはイヤです。まず、響きが嫌いです。それに、元は平安時代の天皇のお世話する人たちですよね?

 「家内」はどうでしょう?それこそ「私は家にばかり居ないわ!」と反発されそう。

 「御台所」「北の方」……。どうでしょう?

 私は、明治の文豪の作品なんかに出てくる「妻(さい)」という言い方が、何となく好きです。

~追記~

近頃、気に入った言い方を思いつきました。
「連れ合い」って、どうでしょう?

ちょっと渋いでしょうか?でも、何となく、一緒に歩んできた相手への愛情とか信頼とかが感じられて、良いですよね。もう少し年を重ねたら、私は夫に、そう呼ばれたいです。

国語学とは

2005-09-20 | 国語学
国語学は国文学などに比べて一般的になじみのない学問かも知れません。

大まかに言って、「方言学」、いわゆる「文法」などがこの学問の対象です。

方言はともかく、文法なんて言うととてもお堅いモノのように思われますが、日常使っている言葉が対象なのですから、それほど難しく考えることもないと思いますよ。

特に、私がその昔卒論で扱った「語用論」は、話し言葉が研究対象です。

『研究』などと構えなくても、日常の会話の中で言葉の使われ方を思うのはなかなか楽しいことでした。

でも、それも私がちょっと変わってるからでしょうか?

言葉に妙にこだわってしまうのは、私の癖(へき)です。

子供の頃、「あれとこれ、どっちにするか」と訊かれて、私が「こっちでいいよ」などと言おうものなら「で、とはなんだ!~が、いい。と言いなさい!」などと叱る、父の影響が大きかったのかも知れません。

子供の頃から、言葉の響き、その背景、ニュアンスなどを心に留めていたような気がします。

でも、ここでは難しいことは考えないで、日頃気になった言葉などを取り上げていきます。