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【ナタマメ豆知識】(なた豆予備知識)【8月22日3訂版】502

2004-08-22 16:41:42 | Weblog
【ナタマメ豆知識】(なた豆予備知識)【8月22日3訂版】

《表記》ナタマメ、ナタ豆、なたまめ、なた豆、刀豆、鉈豆
《別名》刀豆(とうず)、トウズ、帯刀(タテハキ)、たちはき、タチハキ、剣の豆
《学名》Canavalia gladiata
《中国名》刀豆 
《英語名》Sword Bean, Jack Bean(⇒《注意》参照)

《特徴》
熱帯原産の1年生豆科植物。春~初夏に蒔き、秋に収穫する。
たくましい成長力が特徴。2メートルから3メートルに蔓(つる)が伸び、30センチもの大きな鞘(さや)に親指の先くらいの豆ができる。

1年生として栽培されるものの、多年生的な栽培も可能といわれる。
寒さに弱いので露地栽培は1年生として扱われる。

中国福建省などの南方で多く栽培され、国内では九州や中国地方の一部など
栽培地域は限られている。園芸愛好家もときおり栽培しているが、初心者向けの一般的な栽培知識や食用知識はあまり普及していない。
若い鞘(さや)はきざんで福神漬けに入れられ、知らずに食べている植物でもある。

鹿児島県吉田町の「薩摩ナタマメ」、兵庫県春日町の「丹波のナタマメ」など伝統・商用栽培地がよく知られる。

種子の数は、10個から14個くらい。
豆は直接食用とせず、ミキサーで粉砕後フライパンで焙煎し、「なた豆茶」として飲用することが多い。
毒性処理後、白餡や素麺、歯磨きなどにも利用されるが、処理には経験知識を要する。

近年、含有物質に様々な医学的効用も指摘され、注目を浴びつつあるが、同じ豆科の植物である「大豆(ダイズ)」に比べ、まだ未知の部分が多い。
後述するように、ナタマメにも様々な種類があり、医学的効用も、どの種類の豆なのか、ある程度把握しておくのがよいと思われる。

入門者(初心者)は、毒性の問題に注意して栽培、試食試飲(お茶など)する必要がある。

《自生種》千葉県以南の暖地の海岸には、ハマナタマメ (Canavalia lineata)が自生し、蔓(つる)で砂浜に這い広がり、大きな群落を作る。種子の数は2個から5個くらい。

《海外呼称あれこれ》
・中国別名:
刀豆子(daodouzi)、大弋豆(dayidou)、大刀豆(dadaodou)、関刀豆(guandaodou)、馬刀豆(madaodou)、刀培豆(daopeidou)
・英語別名:
Sword Bean, Jack Bean, Japanese Jack Bean

《注意1》シロナタマメは毒性がなく、(赤)ナタマメは弱い毒性があり、タチナタマメは強い毒性がある。
ナタマメは総称として使われる場合と、毒性のないシロナタマメに対比して、ナタマメとタチナタマメと分類名称が使われる。
分類名称のナタマメは赤い花と種子(豆)を特徴とし、タチナタマメは種子(豆)が白くシロナタマメと区別しにくい。
タチナタマメの花は淡い紫色で、種子自体もシロナタマメより小さく、ヘソが短いなどの特徴を持つ。
入門者はシロナタマメとタチナタマメの区別をすることが特に食用や薬用を目的とする場合に重要である。

農林水産省「消費者の部屋」(平成15年10月回答)によると、完熟した種子によっては、
溶血作用のあるサポニンや青酸配糖体、有毒性アミノ酸のカナバリンやコンカナバリンAなどに由来する有毒な物質が含まれ、シロナタマメの種子には毒性はなく、ナタマメの赤い種子には毒性分が僅かに、褐色の種子には多く含まれ、特にタチナタマメの完熟種子には強い毒性があることから、注意が必要とされる。

「消費者の部屋」によると、一般家庭で「毒成分のある」「なた豆」を調理する場合は、2日ほど水にさらしたり、煮た後2~3回水にさらしたり、炒ったり、醗酵したりすれば毒性はなくなるが、含まれている毒成分の量によって消失の度合いが違うので、完熟種子を利用する際は、シロナタマメを用いるほうがよいと思われる。

ケンブリッジ大学出版の『穀類豆類』(Grain Legumes, 1990, Smartt,J.)によると、
ナタマメは、Canavalia属Canavalia亜属のマメで、Canavalia属は4亜属51種から構成される。

赤と白の区別を学問的に書くと、次のようになる。
ナタマメは2つの変種から構成されている。
Canavalia gladiata var. gladiata は、赤みがかった種子と花を持つ。
Canavalia gladiata var. alba は、白い種子と花を持つ。

中国福建省の健康医薬品メーカーのホームページ(http://www.fzrm.com/)を見ると、赤い(褐色の?)Jack Bean の写真が掲載され、学名は次のように表示されている。
Canavalia gladiata jacq. DC.

《注意2》別種の白い豆に毒性のあるタチナタマメ(Canavalia ensiformis)がある。
アメリカでは、Jack Beanというと、タチナタマメを指すことが多いようである。
タチナタマメの英語別名には、次のようなものもある。
One-eye Bean(西インド)、Feijao de Porco(ブラジル)、Horse Gram、Chickasaro Lima Bean、Overlockなど。

なぜ、タチナタマメの英語別名が多いかというと、アメリカ文化圏ではこちらが多く栽培されているからだと思われる。原産が南米との説もある。

《注意3》英語名Jack Beanには、俗称"ジャックと豆の木"(カスタノスペルマム)という豆科のナタマメとは異なる鑑賞用の木もある。
成長すると40メートルに達し、やはり大きな鞘に豆をつける。学名はCastanospermum australe Beany。
分類上はマメ科の1属1種の常緑高木とのこと。
別名、モートンベイチェスナッツ、ブラックビーン、グリーンボールなど。

《注意4》英語名のSword Beanは、中国名の英訳と思われ、あまり慣用されていない印象。
厳密には、英語俗称のJack Beanは、狭義のナタマメを指していないことになる?
試しにマイクロソフトの『エンカルタ』百科事典(http://encarta.msn.com/)で、"Jack Bean"を検索すると、タチナタマメ(Canavalia ensiformis)が表示された。

《補足知識》
ナタマメの含有成分の一つコンカナバリンAが、腎臓機能(フィルター再生機能)改善に効果があるとテレビ番組『スパスパ人間学』などで紹介され、(若)ボケ防止が期待されると一躍脚光を浴びたが、タチナタマメを中心に抽出検証されてきたコンカナバリンAのレクチンとしての効能については、補足説明が必要と思われる。
レクチンとは、免疫反応産物以外の、糖結合性のたんぱく質または糖たんぱく質で、細胞や複合糖質を凝集するもの。

コンカナバリンAはレクチンの一つで、1919年にJ.B.Sumner がタチナタマメから精製し、結晶化した。
これは、精製された最初の赤血球凝集素だという。

1969年には、L.Sachs, M.Inbar がコンカナバリンAも悪性化細胞を凝集することを発見した。

大豆(ダイズ)や小麦胚芽とともに、タチナタマメのレクチンは、ガン細胞に対して強い凝集活性を持ち、ウイルス感染細胞などへの応用が期待される。
リンパ球分裂促進活性も持ち、免疫生化学への応用も期待される。

大豆(ダイズ)や小麦胚芽が世の中の注目を集めてきた一方、タチナタマメは加熱処理などの経験的専門的な知識がないと食用が難しい(人体に有害な物質を含む)ことから、これまでは、一般の関心を呼びにくかったものと思われる。
また、1998年にイギリスのロウェット研究所から発表された報告で、遺伝子組み換えジャガイモを食べたラットの免疫力が低下したという実験に組み込んだレクチン合成遺伝子がタチナタマメなどのものだったことから(報告の信憑性が疑問視される反面)、タチナタマメが恐ろしいものという誤解も一部に招いた可能性がある。

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