いったいなぜ、中国では近代技術が発達しなかったのでしょうか。(中略)ヨーロッパでは(広く認められているように)技術の発展と、商人階級が権力の座へのぼったことが、緊密に結びついていたからです。これは、科学的発見のためにだれが金銭をたくわえるか、という問題でしょう。それは皇帝でもなければ封建領主でもありません。かれらは変化を歓迎するというよりむしろ恐れます。しかし、商人たちはといえば、生産と貿易の新しい形態を発展させるために、調査研究にお金をかけるひとたちです。まさにそれがヨーロッパ史上の事実です。中国の社会は「官僚制的封建制社会とよばれてきました。初期の科学と技術の輝かしい成功にもかかわらず、中国人がなぜ、ヨーロッパの同僚たちのように、中世思想の壁をつきぬけて、いわゆる近代科学と近代技術をおし進めることができなかったかを説明するには、この見かたがおおいに役に立つでしょう。大きな理由のひとつは、ヨーロッパの牧畜=航海文明とは対照的に、中国は基本的に灌漑=農業文明であり、その結果、商人たちが権力の座にのぼるのをはばんだことだと思います。 ジョセフ・ニーダム
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nakazawayutaka_1958 | |
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著書:『哲学者マクルーハン』(講談社選書メチエ)、『マクルーハン・プレイ』(実業之日本社)
訳書:『メディアの法則』(NTT出版)、『ポストメディア論』(共訳/NTT出版) |