YOSHIの果てしない旅(人々との出会い、そして別れ)

ソ連、西欧列車の旅、英国滞在、欧州横断ヒッチ、イスラエルのキブツ生活、シルクロード、インド、豪州大陸横断ヒッチの旅の話。

テルアビブ・ロッド空港乱射事件とシーラおばさん達からの手紙の話 ~エルサレムの旅

2022-01-09 09:17:37 | 「YOSHIの果てしない旅」 第8章 イスラエルの旅
・テルアビブ・ロッド空港乱射事件とシーラおばさん達からの手紙の話              
 私がイスラエルを去ってから3年後、昭和47年(1972年)5月31日(水)発行の夕刊の一面に次の様なセンセイショナルな記事が載った。
[5月30日(火)夜、日本人ゲリラ3人(岡本公三、奥平剛士そして安田安之)がテルアビブ国際空港で軽機関銃を乱射、手投げ弾を数発投げ、乗降客に100人近い死傷者(実際は死者28名、重軽傷者78名)が出た。
  3人はローマから到着したエールフランス航空機に乗客として紛れ込んでいたもので、1人は流れ弾で死亡、1人は自殺、残る1人は逮捕された。逮捕された男は『赤軍派』と名乗っているが、日本赤軍派のメンバーなのか不明。しかし、アラブゲリラ組織の1つPFLP(パレスチナ人民解放戦線)はイスラエルに対する報復行為と発表しており、アラブゲリラに同調した日本人急進派による国際ゲリラ事件と見られる。日本人による海外の事件では最大で、国際的にも直ちに大きな反響を呼んでいるが、特にユダヤ系人達の対日感情の悪化が憂慮されている]と、報道された。   
注~岡本公三は生存し終身刑になったが、後に獄中自殺した。岡本公三の兄・岡本武は昭和45年の日航機『よど号』乗っ取り犯の1人で北朝鮮へ亡命。奥平剛士はこの時に射殺、彼は赤軍派最高幹部の重信房子の夫。安田安之はこの時に手榴弾で自爆)                                                                             
 この事件が発生して、日本人の1人としてイスラエル国民にお詫びしたいと言う気持で、イスラエルに知っているミセズ・シーラ・クランケル(シーラおばさん)とキブツ代表者へ私の気持を書き送りました。
 2週間後、シーラおばさんとキブツから折り返し手紙が届きました。イスラエルの一国民がこの事件及び日本に対して如何に思っているのか、日本・イスラエル両国の小さな橋渡しとして、是非皆様にも読んで頂きたく、私が訳したシーラおばさん、そしてキブツ代表者からの手紙をここに紹介致します。

○シーラおばさんからの手紙 
拝啓
 貴方の友好的な心温まるお手紙を受け取り、大変嬉しく思います。日本人は立派な国民であると言われておりますが、テルアビブ空港で如何してこんな恐ろしい事を起こしてしまったのか、とても信じられません。彼等(岡本公三とその一派)の行為は愚かで、きちがいじみていると誰もが思っています。しかし、日本政府及び日本人がこの事件に対し取った態度は、尊敬されるものがあった、と信じております。私はイスラエルに対しこんなに面目を重んじ、又振舞ったくれた国が他に無いと思います。
 今日(こんにち)、世界的に自尊心と道義心が欠けて来ている傾向になりましたが、日本政府及び日本人が振舞ったその行為は、人間性を見るものがありました。私は紳士的に振舞ってくれた日本政府及び日本国民の皆様に、日本の新聞紙上(実際は職場新聞)を使って、私の感謝の気持を伝えたいと思っています。
 この恐ろしい事件に対し、紳士・淑女は如何に名誉ある振る舞いをすべきか、日本は一つの教訓を世界に示しました。イスラエル国民はこの愚かな挑発に対して、毅然とした態度で臨むべきだと思っております。アラブ諸国は他国の人達を使ってこれらの暴力行為をやらせている、なんと臆病者なのか、と我々は嫌悪感を抱いている次第です。
 私が最も恐れている事は、この事件によって大変悩んでいるのは日本人ではないかと・・。現にイスラエル警察当局に嫌疑を掛けられている日本人旅行者を見掛けたからです。
  最後に日本・イスラエル両国家の友好関係が益々発展される事を希望いたします。貴方のご多幸をお祈り致します。                                                 
                             敬具

○キブツ代表者からの手紙                                                                                                                                                                                                                                                                                 拝啓
  今回の事件は我々に取っても、そして日本政府、国民に取っても衝撃的なものでした。我々はイスラエル・日本両国の友好関係がこの事件で悪化する事なく、我が政府が冷静に対処される事を切に望んでおります。我々ユダヤ人もパレスチナ人も昔(パレスチナ戦争以前、所謂第一次中東戦争以前)は仲良く、又助け合ってこの地で長い間、暮らしておりました。悲しい戦争が何度か繰り返されましたが、この地に再び平和が訪れ、以前の様にユダヤ人もパレスチナ人も共存共栄して行ける、そんな時代が早く来る事を我々強く望んでおります。
 貴方はハッゼリムキブツで我々と共に仕事と生活をされて来ましたので、我々ユダヤ人の事、イスラエル国家の事を良く理解されていると思います。日本からは遥かかなたの地でありますが、どうか私達、及びイスラエルを温かい、そして理解ある気持で見守って下さい。---省略--ー                                                                                       
                             敬具


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