祖父の回顧録

明治時代の渡米日記

第50回(一年生歓迎のRally(大会))

2011-12-08 11:15:49 | 日記
49.一年生歓迎のRally(大会)


 新入生が授業を始めて大学の環境に馴染んだ頃、前期では十月上旬頃後期なら二月下旬頃、恒例として新入生歓迎の学生大会Rallyがギリシャ劇場内で開催せられた。

 開催の数日前に上級の委員が一年生を多数召集して、町から引車を(当時はトラックや貨物自動車はなかった)沢山借りて、学生の日頃出入りする商店や、レストラントやコンフェクショナリー(Confectionary:菓子)や水物商等から不要の空の木箱を貰って、劇場の中央のアレナ(Arena:活舞台)に山と積み上げさせた。

 また全夜祭に必要な煙草や菓子やサンドウィッチ等の寄附を貰い集めて、学生会館に運び込ませて準備をした。

 いよいよ前夜祭の日がくると、学年の差別なく数千の学生が会館に集まって、一晩中騒ぎ廻り、歌を歌う者、ダンスをする者、全く男女学生の無礼講であった。米国の学生は集会には喫煙はしたが飲酒は厳重に大学内では禁止されていた。

 見なければ話しにならんというので、先輩に連れられて一寸会場を覗いたが、大騒ぎの最中で、いたたまれず出てしまった。

 Rally大会は翌日夜七時頃からギリシャ劇場で開かれた。学校側を代表してウィラー総長の挨拶があり、次いで一名の四年生学友会長の新入生歓迎の挨拶があった。一年生はアレナに積み上げられた箱の山の周囲に着席させられ、上級生ほど階段の高い座席に陣取っている。

 油を注いだ木箱に点火されると火はものすごい勢いでバリバリ燃え上がり、火炎は沖天高く劇場の森をパット輝き出すその光景は、ものすごく、また偉観の極であった。

 学生達は一斉に校歌を斉唱する。二万余の観衆のコーラスは大学の丘に響き渡って、エコー(echo:山彦)として帰ってくる。この大学ならではのRally大会だった。

 火の周囲に集まっている我々Freshmanは火勢で頬も真っ赤になり、大変な辛抱で、とんでもない”Fire festival”を受けたのである。
 火もようやく消えると、今度は壇上で上級生の余興が始まり、音楽会やコント劇や、スタント(Stunt:妙技)等を見せてくれて夜遅く大会を終了した。
 このRallyは加大の行事中最も有名なものの一つである。

 今加大の校歌の一節を思い浮かべたので書いておく。

 “Oh, hail, the Blue and Gold.
 To thee we shall cling, 
 The land of the field of poppies,
 To thee we shall sing.”

嗚呼、称えよ、「紺と黄金」の学び舎
吾等の心は汝に愛着して離れざらん、
野にポッピーの咲き乱れる国よ
吾等は汝に声高らかに歌わん。
 

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