あなたと夜と音楽と

まあ、せっかくですから、お座りください。真夜中のつれづれにでも。
( by 後藤 純一/めるがっぱ )

須田ノート:旅のスケッチ

2012年11月25日 19時40分43秒 | Weblog
 没後50年展には、須田が旅先で描いたスケッチがいくつか
展示されている。
須田は国内各地を頻繁に旅している。京都の画家と言われがちな
須田だが、その風景画に京都市内の絵はほとんど見当たらない。
畿内の山並みは繰り返し描いているが、かなりの数の風景画が
日本各地のものだ。

 須田の旅先のスケッチを見る機会はあまりなく、今回、ほとんど
初めて少し時間をかけてみることが出来た。
すぐに目につくのは、須田の画面の捉え方が大きいことだ。
須田は風景を空間の展開とみている。
自然にもし風の道があるとすれば、空間の道もあるのかもしれない。
入り江や樹木や岩礁が作る空間の道が大きくうねり曲がり
広がる様をスケッチは描いている。
スケッチブックの四隅をぎりぎりに近いほど大きく
使っていることもこの印象を強めている。
もうひとつはスケッチの描線がいかにもダイナミックで
力強いことも特徴だ。
須田の持つ空間意識が動的に描かれている。
デッサンではなくラフスケッチだからとも言えるが、
須田の持つエネルギーが時にむせかえるように伝わってくる。

 音楽家には歌ったり楽器を演奏することが楽しくて仕方がないと
感じさせる人がいる。
音楽に触れることで喜びを感じるのはだれもが経験することだが、
世の中にはその喜びが普通の人より高いレベルに感じ取る人が
いるようだ。
画家にもそういう人がいるのだろう。
須田のスケッチには須田がスケッチを描くのが楽しくて
仕方がないと感じていたのではと、想像させるものが
ある。


追記

旅先のスケッチは鳥取県立博物館での展示。