原稿が手を離れたら、それまで乗っていた電車を
降りて、一人で線路道を歩いているような気分になった。
失業状態とはこういうことを云うのだろう。
根をつめていたそれまでの気持ちが萎えて、
今までとはちょっと違って原稿が見えてきた。
原稿の悪いところ、どこがというのではなく、
自分の文章そのものの浅い面が見えてきて、
拍子抜けしたような気持ちになっている。
五年近くも書いていた原稿が終ったのだから、
気持ちの反動が否定的に見させているのだと
分かるのだが、なにかもう原稿を振り返りたく
ない気分なのだ。
なにより困るのは、毎朝、手に取る原稿が
ないことだ。朝、新聞を読み、コーヒーを
飲んで、そこに原稿がない。本を読むのでは
だめで、語学の勉強でもだめで、自分の書いた
原稿が欲しいのである。
あたらしいテーマで文章を書こうと思いながら、
そんなテーマがすぐに見つかるはずもない。
獏としたものはあっても、文章になるには
時間がかかる。しばらくは、この手持ちぶたさを
抱えて、おろおろしなければいけないのだろう。
降りて、一人で線路道を歩いているような気分になった。
失業状態とはこういうことを云うのだろう。
根をつめていたそれまでの気持ちが萎えて、
今までとはちょっと違って原稿が見えてきた。
原稿の悪いところ、どこがというのではなく、
自分の文章そのものの浅い面が見えてきて、
拍子抜けしたような気持ちになっている。
五年近くも書いていた原稿が終ったのだから、
気持ちの反動が否定的に見させているのだと
分かるのだが、なにかもう原稿を振り返りたく
ない気分なのだ。
なにより困るのは、毎朝、手に取る原稿が
ないことだ。朝、新聞を読み、コーヒーを
飲んで、そこに原稿がない。本を読むのでは
だめで、語学の勉強でもだめで、自分の書いた
原稿が欲しいのである。
あたらしいテーマで文章を書こうと思いながら、
そんなテーマがすぐに見つかるはずもない。
獏としたものはあっても、文章になるには
時間がかかる。しばらくは、この手持ちぶたさを
抱えて、おろおろしなければいけないのだろう。