あなたと夜と音楽と

まあ、せっかくですから、お座りください。真夜中のつれづれにでも。
( by 後藤 純一/めるがっぱ )

原稿を終えて

2010年10月28日 23時08分09秒 | Weblog
 原稿が手を離れたら、それまで乗っていた電車を
降りて、一人で線路道を歩いているような気分になった。
失業状態とはこういうことを云うのだろう。

 根をつめていたそれまでの気持ちが萎えて、
今までとはちょっと違って原稿が見えてきた。
原稿の悪いところ、どこがというのではなく、
自分の文章そのものの浅い面が見えてきて、
拍子抜けしたような気持ちになっている。
五年近くも書いていた原稿が終ったのだから、
気持ちの反動が否定的に見させているのだと
分かるのだが、なにかもう原稿を振り返りたく
ない気分なのだ。

 なにより困るのは、毎朝、手に取る原稿が
ないことだ。朝、新聞を読み、コーヒーを
飲んで、そこに原稿がない。本を読むのでは
だめで、語学の勉強でもだめで、自分の書いた
原稿が欲しいのである。
あたらしいテーマで文章を書こうと思いながら、
そんなテーマがすぐに見つかるはずもない。
獏としたものはあっても、文章になるには
時間がかかる。しばらくは、この手持ちぶたさを
抱えて、おろおろしなければいけないのだろう。