あなたと夜と音楽と

まあ、せっかくですから、お座りください。真夜中のつれづれにでも。
( by 後藤 純一/めるがっぱ )

「徒然草」メモ

2009年02月16日 00時51分34秒 | Weblog
 昨年後半?から「徒然草」を何度か読み返した。
とても面白かった。
本来なら後、数回読んで、感想を書きたいのだが、
その余裕がない。
いずれ書く機会が来ると思うが、いったんここで
本を置く。

 「徒然草」を読むのは、受験期を別にすれば、
これで三度目である。
最初は、確か、その詩的な話し言葉とでもいった
文体に惹かれた。二度目は、デッサンでも描く
ような好奇心に満ちた眼で人物や事物を
切り取る文章が面白かった。
今回、読むと、この人は誰に向かって語っている
のかが、気になった。
「徒然草」は世捨て人の文章ではない。
宮廷社会の現実に向き合う姿勢で書いている。
その文章のリズムは作者の中の怒りを感じさせ、
作者は文章で現実を打ち据えているところがある。


風景画について

2009年02月15日 21時33分17秒 | Weblog
 ある美術館主催の講演会があり、風景画の歴史について
一時間半ほどの講演を聴いた。
普段、学生相手に話している人が知識のない一般の人
むけに講演するとどうなるかという典型のような講演で、
話す人は意欲的にあれもこれもと説明してくれるのだが、
100人ほどの聴衆のほとんどは頻繁に変わるスライドの
初めて聞く画家や学者の名前に頭が痛くなっただけであった
だろう。
わたしも似たようなものだったが、講演内容はケネス・
クラークの「風景画論」を基調に踏まえたものだったから、
話の流れには付いていくことが出来た。

 クラークの本は面白くて、繰返し読んだ。
本人も書いているが、風景画史論と呼ぶには
やや物足りないが、筆者の絵を見る視線に確かな
ものがあり、クラークの眼を通して個々の
画家に接していると感じさせてくれるものが
あった。
今回の講演は、クラークの本により詳細な
注を付けたような内容で、それはそれで面白かった。
「風景画論」の初版は1949年に出版されている。
講演は以来、半世紀の研究の展開を講演の短い
時間にほのかに感じさせてくれるものがあった。

(近世の風景画に大きく寄与したとされる画家に
ニコラ・プーサンとクロード・ロランがいる。
同時代人で一時はすぐ近所に住んでいたという
二人だが、クラークはプーサンを高く評価し、
ロランについてはあっさりと書いているように
見える。
時間切れで途中で終わった今日の講演は、
プーサンも評価しながら、ロランにより
スポットライトを与えようとしているように
聞こえた。例えば、ロランを太陽を絵に
取り込んだ最初の画家とし、ターナーへの
影響を指摘している。
時間があれば、二人についてもっと詳しく
聞きたかった。)




若桑みどり「イメージを読む」を読んで

2009年02月07日 20時39分32秒 | Weblog
 若桑みどり「イメージを読む」を読んだ。
ちくま学芸文庫。
若桑みどりは名前を知っているだけで、著書を
読むのはこれが初めて。
確かこの著者は、先年、亡くなった。

 大学の講義ノートをもとに話し言葉を活かした
文章は、読みやすく、生き生きとしたイメージを
伝えてくれる。
ミケランジェロ、ダ・ヴィンチ、デューラー、
ジョルジョーネの四人を語る中では、ダ・ヴィンチが
一番面白かった。
ダ・ヴィンチについて読むのは初めてだが、
自分の中に閉じ込もったような個性が、
よく描かれている。
ダ・ヴィンチは同性愛だったという定説?から
距離を置いて、ただ経験がなかったとだけ
示唆しているのは、いかにも学究者らしい
記述で興味深い。
フロイトの「リビドー万能の精神分析に限界がある」と
いう記述にも、好感を持った。

 巻末の「参考書一覧」にこうあった。

「またいいにくいことですが、ほんとうに研究しようとしたら、
じつは日本語ではできません。単行本で出版されているものは、
ごくわずかで、そのまたわずかしか邦訳されていないからです。」
「ほんとうをいえば、英、独、仏、伊語は最低必要と考えて
いいと思います。」

 日本人が欧州美術を調べようとすれば、ひどく無理を
しないといけないことが、この文章によく出ている。