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一度一度の機会を大切に。

移動映画館車(富山100む・・・5)

2016-12-17 00:32:41 | 特殊系トラック

先日、名古屋市内でみかけた車両です。

この車両は移動映画館車という車両で、三菱ふそう製の大型トラックをベースにバス型のボディーを架装しています。長距離運転手時代に高速道路の対向で幾度か目撃し、存在は認識しておりましたが、直近で観察・撮影できたので簡単に紹介したいと思います。撮影時、車内では上映中だったようで車内の様子を伺うことはできませんでした。

移動映画館車について調べてみますと、当車両の運用は富山県射水市にある出版会社であるようですが、事実上の運用は出版会社の関連大元である宗教団体であるものと考えます。さて運用元が判明したところで気になる上映内容ですが、やはり宗教団体の教えに関連したものであるということ。撮影当時の車体には広告看板が取り付けられていました。運用のきっかけは東日本大震災で被災された方への「心の復興プロジェクト?」であると、出版会社のウェブログでは記されています。

さて、この移動映画館車は三菱ふそう・スーパーグレート低床3軸車(QKG-FY54VY)をベースに東京特殊車体若しくは京成自動車工業(個人的には前者)で架装され、仕様違いで車体の窓枠が銀色と黒色(今回掲載した車両)の二種類存在しているようです。窓枠銀色の車両は車両登録番号「は3967」で、後部の車両登録番号標の位置は中央。もう一台の窓枠黒色の車両は複数の登録番号があり、いずれも車両登録番号標の位置は右側。また後部上部には換気扇カバー、車両下部には汚物タンクの確認ができたことから車内後部辺りに便所が設置されているものと思われます。

窓枠黒色仕様の車両は画像検索の結果、車両登録番号「100ね2」「4」「100む5」「5」「ほ7」「7」「100も8」「130と10」「130ふ11」「130つ12」「15」の11台が確認できました。画像検索では分類番号やひらがな等、車両登録番号の一部が確認できず、重複集計されている可能性があるとはいえ、該当団体が銀色窓枠車を含め12台の移動映画館車を運用していると思うと非常に驚きです。この運用台数が事実であるかのと調べてみますと、検索結果に個人ウェブログがいくつかヒットし、内容はやはり「十数台規模で半年に1台増備」。また1台あたりの製造費が「4,000万円」の文言が確認できました。恐るべし宗教団体。

▼それでは様々な角度から移動映画館車を見ていきましょう。車体後部は窓がなく、この位置に便所が設置されているものと思われます。車両登録番号の分類番号が「1」であること、車両後端下部には突入防止装置と大型後部反射器が備わっていることから大型貨物自動車登録であることがわかります。車両登録番号標の位置は右側です。屋根から側面の水切りにかけての表面は滑り止め仕様になっています。小さくて見づらいですが「お先にどうぞ」のステッカーもオリジナルなのでしょうね。また車体に[移動映画館]の表記はありません。

▼運転席と車体の接合処理部です。架装会社の特徴が最も表れる部分ではありますが、この移動映画館車は架装会社の特定に苦慮しております。車体側面裾部に架装会社の表記があれば嬉しいんですがね。東京特殊車体か京成自動車工業のどちらかで間違いないでしょうけど自信がありません(東京特殊車体のような気もする)。また車体の安定を目的に4ヶ所に油圧ジャッキが設置されています。フロントタイヤは275/70R22.5です。

▼後輪のホイールアーチ部分です。縁取りに樹脂部品を使用していますが、近年のバス型車両はこの仕様が多いです。リアタイヤは245/70R19.5です。

▼さらに後輪部を覗くとエアサスの提灯。しかし車台が雪国の車両とは思えないほど非常に美しい。日頃の手入れの結果でしょう。到着した上映地でも洗車しているのかもしれませんね!また車台の塗色から推測するにこれは防錆塗装仕様なのでしょうか?

▼車両左前輪部。撮影時には使用されておりませんでしたが、折戸仕様の乗降口が備わります。ステップは床下に格納でき、使用時には展開できる仕様となっています。この辺りの造りをみると京成自動車工業かなと思ってしまいますが、より細部をみると東京特殊車体とも思えてしまうのです。また車体の一部(特に裾部分)にはアルミニウムを材料に使っているようにも感じましたがいかがでしょうか。

▼車体左側後部の屋根には車体を加工してスマートに天幕が納まっています。

▼車両左側後部。乗降用ステップの展開状況です。
乗降用ステップには細かい配慮がみられ、手すりには視認性向上と防寒を意図したのか黄色のクッションが巻かれています。ステップ踏み面には滑り止めも兼ねたマットが敷かれ、ステップ横の金属板部分には切創防止にホースを加工した保護材が施してあります。またテープ状のLED照明も設置されており、利用者の安全を意識した仕様に好感が持てます。リアオーバーハング部には空調機器の室外機が納められています。転動防止の輪止めの使用も素晴らしい意識ですね。

▼最大積載量は6,400kgですが実際にはそこまでの貨物を積載することはないでしょう。
平成21年排出ガス基準10%低減車「Q」及び、平成27年度燃費基準達成車「K」なので排出ガス規制記号はQKG‐で間違いないでしょう。

全体的な感想として、実物を観察、撮影できたことは非常に嬉しかったです。車両外観の特徴のある塗装のおかげで発見も容易でしたが、その場所が和食チェーン店の駐車場というのがなんとも不思議ではありましたが。

また、この車両の最も褒めるべき点は外観の美しさにあります。運用元である富山という地域柄そして全国運用という、冬季は融雪材まみれになるという条件下においてこの美しさを維持できるのは常に洗車という手入れしているからでしょう。一部の写真からもお判りいただけるかと思いますが、車体の反射率が非常に高く、また車体だけではなく足回りそして床下(車台)も含めて乗務員がこの大柄の車体外観美化に日々勤めている姿勢が感じ取れるかと思います。素晴らしいです!

最後に。正直、運用元が宗教団体であるという事実を知ったときに“取り上げるべきではない”車両という考えもありましたが、当ウェブログの目的は私の琴線に触れた自動車等の特徴紹介が主目的であります。つきまして当車両の運用元である出版会社や宗教団体、また流布内容について否定や肯定する意図は一切なく、以後のご判断は閲覧者各位の思想にお任せするところであります。また車体一部には画像加工を施しました。


記事作成にあたり、参考にさせていただいたリンク先

チューリップ企画スタッフブログ「移動映画館って何?」
http://todoroki.tv/idoeigakan-tulip/


NTT東日本長野支社の非常用電源車

2015-02-07 21:36:44 | 特殊系トラック

最近の更新について、某団体のイインチョ様からお電話にて「内容がマニアックすぎて理解し難い」というご指摘を態々いただきました。今回はサルでも解る、緊急車両ネタで進めていきますので、どうぞお付き合いください(笑)

緊急車両と申しましても、今回ご紹介する車両は長野県総合防災訓練会場で撮影したNTT東日本長野支社が保有する「非常用電源車(公共応急作業車)」です。

非常用電源車とはガスタービンで交流発電機を駆動させ、対象施設に電力を供給する車両です。発電出力は車両の大きさによって異なり、今回紹介する車両は出力が1000kVA、電圧が最大で6600Vの定格性能です。燃料は入手・取り扱いが容易だと思われる軽油を使用しています(A重油や灯油も使用可)。

ガスタービンと発電機、その間に介された減速機は共通架台に設置され、車両に架装されています。他にはガスタービン用の吸気装置、吸気用消音装置、排気装置、排気用消音装置、軸受潤滑油用冷却機、始動用発電機、整流器、制御盤、配電盤、内部換気装置、給電部、給電ケーブル用リール、駐車用ジャッキ等の機器が設置、架装されています。

ちなみに新車で導入されたガスタービン等の主要機器は必ずしも新製されるとは限らず、載せ換えられて長年にわたり、使用されることもあるようです(2006年製のPJ-車台に1973年製のガスタービンが架装されている例もあり)。

なお、車両の内部(発電装置)は撮影しておりませんので、取り上げる内容は車両外観のみとなりますが、後述のリンク先のサイトで内部が確認できます。ただし中古車取扱業者のサイトですのでリンク切れになっている場合があります。


2011年に長野県総合防災訓練で撮影した「NTT東日本 非常用電源車」

いすゞGIGA(KC-CXH81P1)をベースに日本フルハーフ製のアルミボディ構造を利用し、発電装置はHIHジェットサービスの「ガスタービン発電」システムを搭載。最終的な架装をヤシカ車体が行っています。 

ベースとなるGIGAは型式が示すとおり初期型でフロント22.5インチ、リア17.5インチのホイールを装着する異径4軸車(8×4)。非常用電源車は低床構造が用いられることが多く、当時のシャシ構成からするとこれが最適だったのでしょうか。GVWを20t以内に抑えた構造(W/B)で、前後軸と後前軸間に発電用の機器類を架装するという独特のスタイルに興味がそそられます。

車両のバッテリーやエアタンクといった補機類が見当たりませんが、キャブと主荷台との間に設けられた小さめの箱部分に補機類を移設、またスペアタイヤや車載工具等が積載されているものと推測します。

車両右側(運転席)に設置された機器類の状況です。一見すると冷凍車の冷凍機のようにも見えますが、これはガスタービンと発電機の間に介された減速機の軸受を潤滑させるための油を冷却する油冷却機(オイルクーラー)です。写真でも判るとおり設置はシャシを介した方法ではなく、荷台床面から吊り下げられており、通常の箱車構造とは違い床面は強化されているものと推測します。

フェンダーとオイルクーラー間には僅かながらサイドバンパーを設置。その奥側には駐車時にタイヤの変形を防ぐことを目的としたジャッキが設置されています(発電時の車両安定用ではないのか)。ジャッキは左右・前後に4ヶ所設置されています。

車両左側(助手席)に設置された機器類の状況です。車両前方から駐車用ジャッキと荷室内進入用ステップを兼用したサイドバンパーを設置。スペースのほとんどを燃料タンクが占めています。車両用(走行用)燃料タンクは約100Lほどでしょうか。装置用(発電機用)燃料タンクは370Lの容量があり、燃料配管には筒状のストレーナーが設置されています。ちなみに車両用にもストレーナーが設置されていますが写真では判明できません。また車両用燃料タンクの保持方法に特徴がありますね。初めてみました。


2013年に長野県総合防災訓練で撮影した「NTT東日本 非常用電源車」

こちらはいすゞGIGA(QKG-CXY77AJ-QX-M(W/B区分のQは推測))をベースに発電装置はMEIDEN(明電舎)の「GV型ガスタービン発電」システムを搭載。最終的な架装をコーワテックが行っています。発電運転時にはガスタービン用の空気を取り込めるよう、天井の前方が開放されるようになっています。

余談ですが、コーワテックは自社でバン型ボディをイチから製造しているのでしょうか…一部の製品(車両)に限った話でありますが、箱の裾や角といった部分を気にしていると「既製品のボディパーツを流用しているのではないのかな…」と思ってしまいますがいかがでしょう。裾の構造も車両によって異なり、ビス止めもあればボルト止めもあります。個人的にかなり気になる点ですので今後も観察を続けましょうか。

ベースとなるGIGAは型式のQKG-が示すとおりポスト新長期規制適合車でタイヤサイズはフロント275/70R22.5、リア245/70R19.5を装着する低床3軸車(6×4)。これらのタイヤサイズや前面に“20t超”の表示がないことからGVW20t車であると思われます。こちらも低床構造となっており、非常用電源車の基本姿勢であると思われます(GVW25t車を除く)。

NTT災害用伝言ダイヤル…等の文言が表記された後方上部はガスタービンから排出されたガスを排気する排気口が設置されています。二段構造となっており、発電運転時にはこの部分が開放すると思われます。そのためリアカメラ本体の設置位置も車体中間部となっています。

先の車両とは違い、車両右側(助手席)には排出ガス処理装置とバッテリーがW/B間を占めています。潤滑油用の油冷却機が見当たりませんが、荷室内に設置されている若しくは、明電社製は不要となるシステムなのでしょうか。気になります。

バッテリーは車両機関始動用(24V)と発電機関始動用(48V)とが供用と思われます。メーカーサイトによれば「ガスタービン専用(DC48V…)」と記されていましたが、車両外観からは車両機関始動用バッテリーが見当たらず、この配置(12V×4)から供用されているのではないかと推測。またリレーボックスが手前のバッテリー前に設置されていることも大きな推測理由です。

またサイドバンパーはバッテリーの交換時に引き出せるよう、手前に折りたためるように加工されており、整備のことも考えられた仕様となっています。バッテリーの奥には駐車用ジャッキも見えます。

同じく車両右側、ROH部分の構造です。こちらも駐車用ジャッキと輪留め収納部分が設置されています。後輪用スペアタイヤ(19.5インチ)とその上部両側にはジャッキの油圧発生装置と思われる機器が設置されています。前輪用スペアタイヤ(22.5インチ)は車両左側ROH部分に設置されています。またスペアタイヤキャリア上にはリレーボックスらしき箱が見えます。ちなみにチラっと見えていますがエアサス仕様です。

車両左側(助手席)には前方から尿素水タンク、走行用(車両用)燃料タンク、発動発電機用(装置用)燃料タンクが架装されています。燃料タンクはそれぞれ300Lの容量かと思われます。

メーカーサイトからの引用となりますが、発電時の燃料消費量は一時間あたり480Lとのことで、連続運転時には途中給油が必要となってきます。この消費数値はA重油で100%負荷運転時の数値であり、燃料の発熱量によって異なるようです。ちなみに連続運転は72時間以内だそうです。


インターネット上で拾ってきた情報を主に「非常用電源車」の紹介をしてきましたが、詳細は下記のリンク先(コピペしてね♪)を参考にしてください。

▼昭和47年から基本的なスタイルが変わっていない。

日本ガスタービン学会「1000kVAガスタービン移動発電装置」
http://www.gtsj.org/gasturbin/gallery/g_0106.html

▼中古車販売業のサイト。内部詳細写真有。
関東トラック販売「H18/6 いすゞギガPJ-CYZ51Q6J 移動電源車」

http://www.kanto-truck.com/Photo/2013070049.html

▼今回、一台目に取り上げた車両と同じ仕様だと思われる。
ヤシカ車体「電話用非常電源車」

http://www.yashika.jp/article/13977788.html

▼電源車と制御車の二台セットでの運用。電源車は低床4軸。制御車は中型3軸。
ヤシカ車体「非常用移動電源システム」

http://www.yashika.jp/article/14880877.html

▼ショートキャブ低床4軸車と中型3軸車(FVZ)
IHIジェットサービス「4500kVA級 ガスタービン電源車 IM-400 MGG」

http://www.ihi.co.jp/ijs/catalog/IM400.pdf

▼今回、二台目に取り上げた車両はこのサイトを参考にした。
明電舎「GV型 明電移動電源車」

http://www.meidensha.co.jp/catalog/jp/cb/cb38-2735e.pdf

▼内部構造のイラストやガスタービンの利点が書かれている。
川崎重工業「移動電源車(カワサキMPUシリーズ)」

http://www.khi.co.jp/gasturbine/product/industry/move.html

▼主要諸元や搭載品、またジャッキは安定用というより、駐車用であるとの記述も。
川崎重工業「第161号 ガスタービン・ジェットエンジン特集号(移動電源車NTTドコモ向け)」

https://www.khi.co.jp/rd/tech/161/nj161ts02.html


9.6KL液糖タンクローリー

2015-01-31 12:16:26 | 特殊系トラック

2012年3月に福岡県で撮影した「9.6KL液糖タンクローリー」をご紹介します。

液糖とは液状の水飴や異性化糖、しょ糖類のことを指し、食品原料として輸送は専用のタンクローリーが用いられます。タンクは保温構造となっており、これにより液質の変化(温度低下による粘度の増加や結晶化)を防いでいます。タンク内は防波板で三室程度に区切られ、危険物のように完全な仕切りではなく防波板の上下が通っています(写真参照)。またタンクを新円形にすることで洗浄を確実のものとし、各配管や接続部は取り外して洗浄しやすいように工夫されているのが食品用タンクローリーの特徴です。

最大数量は9.6KL、最大積載量は12,000kgと積載性能はGVW25tの単車並ですが、ホイールベースの関係からキャブとタンクとの間に無駄なスペースが発生してしまう単車と比較すると、全長の短縮や取り回しの良さはトレーラの方が良いでしょう。比重は1.25と推測。トレーラー化することで架装量にも余裕があることから、車検取得の際に装備等を取り外す必要がなく、正しい車検を受けることができます。

積込は主にタンク上部のマンホールから流入し、排出は後部に設置された油圧駆動のポンプで実施します。自車ポンプを駆動させるにはPTOを備えたトラクターが必要となりますが、異物混入の防止や洗浄方法の観点から客先がポンプ本体の管理を実施するケースもあり、その場合は自車のポンプは使用せずに客先の設備を使用します。

これらの流入・排出作業を行う場合、タンク内圧力の過大な変化を防ぐため先頭のカマボコ状のカバー内には通気口とフィルターが装備されています。しかし、このショート尺のタンクにマンホールが大小合わせ、4ヶ所も必要なのか?と思ってしまいますが、マンホールに狂いなくセットできるような洗浄・積込の位置にシビアな出荷場所があるのでしょうか?

車台(タンク下)には通常の各ブレーキラインや電気ラインの他、油圧用の配管も引き通されています。タンク本体は細部の特徴から「青木製作所」製であると思われ、車台は「日本フルハーフ」製で間違いないでしょう。

後部は中央部分に吐出口バルブ、食品用のロータリーポンプを配置。左側部分にはロータリーポンプを駆動させるための油圧ポンプと減速機が設置されています。上部へアクセスするはしごはタンク側面に設置されることが多いのですが、この会社の液糖ローリーは基本的にはしごが後部設置されているのが特徴です。

フェンダーやサイドバンパーの形状、そして吐出口とポンプ周辺機器を被うカバーの形状からは“青木製作所らしさ”を感じ取れないことから、車台とタンクの結合(載せ換え)やタンク本体以外に関わる部分の製作が泥除けタレゴムに明記された「矢野特殊自動車」であると思います。このように各部から「青木製作所」「日本フルハーフ」「矢野特殊自動車」と、それぞれの特徴を見出すのも楽しみのひとつです。矢野特殊自動車がライセンス生産しているのであれば内容は変わってきますがねぇ。

それと少し扁平気味のタイヤも気になりますね。


液化水素ローリー(トレーラー)

2015-01-25 19:32:21 | 特殊系トラック

2012年3月に三重県内で撮影した「液化水素ローリー」をご紹介します。

複数の容器を束ねた従来のカードル方式で輸送していた高圧水素ガス(H2 )とは違い、水素をマイナス253℃で液化(LH2 )。体積を凝縮することで搬送効率を最大で12倍にも高められ、今後見込まれる水素エネルギーの普及により、大量輸送・安定供給には欠かせない輸送方法を担う車両です。

極低温で液化された水素の蒸発を抑えるため、運搬容器はかなりの断熱性能を求められることから真空積層断熱方式とし、容器容量は36,960L、液水最大積載量は2,617kgを確保。タンクは海上コンテナの規格である40フィート寸法であり、タンクの前後には海上コンテナの緊締装置ような保護枠が設けられていますが、実際の運用では車台(トレーラー)から着脱する場面はあるのでしょうか。写真からは判別できませんが、タンクの製造は川崎重工業であると思われます。

「液化水素40フィートコンテナ車を導入!」(岩谷物流)
http://www.iwatani-butsuryu.co.jp/news/2007112101.html

後部にはオーニング(天幕)が設置され、荷役の際に使用されるのでしょう。タンクが積載された車台はトレクス製。規制緩和車両で最大積載量は24.80t 車両重量は29.39tと表示され、カードル方式と同じく車両総重量の殆どが車両重量であることが伺えます。

車両は習志野登録車(HD-3)であり、水素の充填(積込)は千葉県市原市で実施されているものと思われます。また、車両の前後には車両状態を表す「充」掲示され、これは千葉周辺で見かけるタンクローリー車の特徴でもあると思います(あくまでも個人的感想)。空車や回送になると表示板を裏返して「空」掲示で運行されています。

タンクの“腹”部分には加圧蒸発器を設置。加圧蒸発器を通された液化水素はガス化され、タンク内部を昇圧させることで車両単体での払い出しが可能とのこと。

また、加圧蒸発器の上部に設置された二本のボンベの用途・内容物が気になりますね。構造的に水素ガスではなさそうですが、水素を払い出し後、配管に残ったガスを完全に送り出すために使われる窒素ガスでしょうか。

今回、液化水素ローリーを簡単に取り上げてみましたが、普段よくみかけるLNGローリーとは違った魅力がありますね。以前、私は単車(前二軸)の液化水素ローリーも撮影していますので、機会があれば取り上げてみたいと思います。


韓日ダブルライセンストレーラー

2015-01-18 21:26:13 | 特殊系トラック

2015年1月に福岡県九州道で撮影した「韓日ダブルライセンス車」をご紹介します。韓日ダブルライセンス車とは韓国と日本の車両登録番号(ナンバープレート)を取得し、双方の公道を走行できるようにされた車両(措置)です。

主な特徴としては韓国と日本の車両登録番号標を表示しており、車両中央に配置された韓国内用の黄色い登録プレートには「人ト(さ)4709」と読み取ることが出来ます。車体の構造や灯火器類といった保安基準に関しては日本に準じているようで、日本でみられない“韓国独特”といった類の装備は登録プレート以外は見受けられません。

相互に乗り入れできるこれらの措置は、福岡県の日産自動車九州と韓国(釜山)のルノー・サムスン自動車との間で自動車部品を輸送する目的で導入され、積載物の積み替え作業が不要になる他、手続きの簡略化から輸送日数も大幅に短縮されるとのことです。

発見、気付くことが遅れたことやコンデジかつ、ISO感度を上げた撮影となったため、解像度の低い写真になってしまったのが非常に悔やまれます。この地区には「韓日ダブルライセンス車」が運用されていると念頭に入れ、今後はデジタル一眼レフで撮影に望みたいですね。

ダブルライセンス車ではありませんが、日本登録車両にて海外渡航輸送を実施する例としては活魚輸送もそのひとつであり、主に中国や韓国と日本との間で活魚輸送が行われているようです。そのためか、それらの輸送を担っている活魚運搬車の後部には両国の国名や国旗が描かれているのが特徴です。

注)文中にある国の順位は車体表記に準じており、他の意図はございません。


単車では最大積載量を誇る、LNGタンクローリー

2015-01-11 00:42:26 | 特殊系トラック

今回は2014年4月に広島県廿日市市内で撮影した「低床四軸車台に架装された液化天然ガスタンクローリー」をご紹介します。

不鮮明な写真から読み取れることは、日野プロフィア低床四軸(QKG-FW)にLNGタンクを架装されたという珍しい組み合わせであること、キャブのカラーリングから運送会社が日本通運(株)であることのみです。

信号待ちに急いで撮影したので手ブレがヒドイですね。私が住む地域ではなかなか見かけない仕様だけに、この不鮮明な写真では非常に残念です。

さらに詳細を検索していたところ、日本車両製造(株)の公式ウェブサイトに同車が掲載されていました。主な特徴や製造の経緯はリンク先をご覧ください。

「日車トピックス 8.82t LNGタンクローリーの紹介」
http://www.n-sharyo.co.jp/business/yuso/topics/tp131017.html

 


いすゞのエアサスを流用したタンクローリー

2014-12-31 05:19:49 | 特殊系トラック
栃木県矢板のトラックステーションにて。  

▼牛乳ローリー全景。
トラックステーションに立ち寄ると思いもがけない珍味に出会うことがある。そして、この手のタンクローリーには視線を熱く注いでしまう。それが今回の産物。
 
▼同じく後景。
青木製作所製と見受けられるが、架装者とタンク製造者は異なるかもしれない。この積載物について詳しくはないが、あまり青木の特徴を感じられない。どちらかと言うと安田かな。
タンク下には薄いフレームは存在するが梁のような頑丈なフレームが見当たらない。連結面、キングピン付近の縦軸補強も薄いフレームを解してタンクに繋がっているように見えることから、タンク本体で強度を保っているのであろうか。
 
▼けん引台車の後軸。
注目したいのがトルクロッドブラケット。この特徴ある形はギガ(マックス)の初期型に装着されていたブラケット。
またこのブラケットが取り付けられ、薄いタンクフレームと接合された台枠(車台)は何かの流用だろうか。ある意味、純正部品を流用したエアサス化において、車両の水平レベルや転角等の問題をクリアするにあたり、この台枠がかなりの重要部品だったりするのではないかと予想。
また、タンクの側板がフレームにかかっているところも見逃せない。内タンク本体は薄いフレームに直付けされていると予想することから、フレームとタンクの両方で強度を保っていると考えてよいだろう。
 
▼後軸サスペンション近影。
はい、いすゞのロゴ(笑)この穴あきのブラケットは初期型の最たる特徴である。
トラクターヘッドがいすゞであることから、廃車された車両から部品を流用したのかもしれない。当然、トルクロッドやエアスプリング、スタビ、スタビロッドといった構造一式の流用。ちなみにこの運送会社はトラクターヘッドを35両、15t積ローリーを22両保有するが、同様の改造を施している車両は他にも存在するのであろうか。
 
▼斜め前方より近影
パラレルリンク式エアサスペンション。奥側に見えている黒い物体がエアスプリング。それを支えるのがサスペンションビーム。横に伸びる棒はトルクロッド。ただし、車高調整用のセンサ等は見受けられない。切断面が見えているのが台枠。

自動車メーカーのエアサスを用いた改造例というのは聞いたことなかったが、このような実例は非常に珍しいものではなかろうか。