
由布院駅アートホールで、坂元桂介 木版画展「風のはらっぱ」をみました。
見応えのある大きさの、おおらかな印象を与える作品たち。タイトル通り、風がふきぬけてゆくよう。色がのるものもあるけれど、黒の色がとても気持ちがいい。
私がこれまで見たことのある木版画は、線を残して彫り、線で絵を描いたものだった。ところが坂元さんの木版画は彫ったところ以外の部分、つまり木の部分で絵ができていた。だから版木の木目が絵に現れている。むしろそれを取り込んで絵ができているものもあった。これはハッとさせられた。木、というものをこれほどまでに活かし、感じさせる版画を今までに見たことがなかった。
植物の、あざみを描いた一枚の版画。この作品が私は一番印象的だった。中心から放射状にぎざぎざと茂ったあざみの葉。その図柄と重なるように、版木の渦巻き状の木目がところどころに、幾つも見えてている。描いたイメージと、支持体の元来の模様が重なり一枚の図ができている。そして黒々とした墨の色。いつまでも目が離せない。
私が絵を見た翌日、アートホールに作家さんが来られるというので会いに行ってお話を伺うことができた。とても全てを書き記すことはできないけれど、すごく興味深いお話がたくさん聞けた。「絵を作る時に、自分というものが大きければ自分だけでいっぱいになってしまうけれど、自分が小さいからその分違うものを受け入れることができるのです」と。すごく素敵な考え方だなと思った。はじめに描きたいものがあって木を選ぶことももちろんあるけれど、木から誘発されるようにイメージを作ることも多々あるとのこと。とにかくこの木目の美しさを見てほしい、ということが先にあり、そのために少し手を加えタイトルをつけて色をのせ摺った、という作品もあるそうだ。
しかしながらそれを伝えるためのあらゆる考察をされて、取捨されたものなのだと知る。色にしろ技法にしろ紙にしろ、このイメージを伝えるための様々な考察がなされている。だからこんなにも伝わってくるのだなぁ。ぜひまた見たい。