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日常のちいさな旅

平 川 渚 Hirakawa Nagisa

作ったもの、見たもの  記録、お知らせ、報告

坂元桂介 木版画展

2008年06月22日 | exhibition
(部分)

由布院駅アートホールで、坂元桂介 木版画展「風のはらっぱ」をみました。
見応えのある大きさの、おおらかな印象を与える作品たち。タイトル通り、風がふきぬけてゆくよう。色がのるものもあるけれど、黒の色がとても気持ちがいい。

私がこれまで見たことのある木版画は、線を残して彫り、線で絵を描いたものだった。ところが坂元さんの木版画は彫ったところ以外の部分、つまり木の部分で絵ができていた。だから版木の木目が絵に現れている。むしろそれを取り込んで絵ができているものもあった。これはハッとさせられた。木、というものをこれほどまでに活かし、感じさせる版画を今までに見たことがなかった。

植物の、あざみを描いた一枚の版画。この作品が私は一番印象的だった。中心から放射状にぎざぎざと茂ったあざみの葉。その図柄と重なるように、版木の渦巻き状の木目がところどころに、幾つも見えてている。描いたイメージと、支持体の元来の模様が重なり一枚の図ができている。そして黒々とした墨の色。いつまでも目が離せない。

私が絵を見た翌日、アートホールに作家さんが来られるというので会いに行ってお話を伺うことができた。とても全てを書き記すことはできないけれど、すごく興味深いお話がたくさん聞けた。「絵を作る時に、自分というものが大きければ自分だけでいっぱいになってしまうけれど、自分が小さいからその分違うものを受け入れることができるのです」と。すごく素敵な考え方だなと思った。はじめに描きたいものがあって木を選ぶことももちろんあるけれど、木から誘発されるようにイメージを作ることも多々あるとのこと。とにかくこの木目の美しさを見てほしい、ということが先にあり、そのために少し手を加えタイトルをつけて色をのせ摺った、という作品もあるそうだ。
しかしながらそれを伝えるためのあらゆる考察をされて、取捨されたものなのだと知る。色にしろ技法にしろ紙にしろ、このイメージを伝えるための様々な考察がなされている。だからこんなにも伝わってくるのだなぁ。ぜひまた見たい。

6/13、福岡

2008年06月17日 | exhibition
6月13日、さらさんと一緒に福岡へ行った。

主な目的は、4月に約1ヶ月滞在制作をしていた冷泉荘のLe coin de Réalité(ル コアン ド レアリテ)で現在開催されている、ギャラリーオーナーであるイシマルユキコさんの個展を見るため。Le coin de Réalitéのアトリエスペースでは色々な国の古いものや美しい小物が販売されており、ここにさらさんのテディベアも最近加わったのです。


「音楽と私 -もう森へなんか行かない-」と題された、クレパスで描かれた絵。今回展示されたのは全て、音楽からインスパイアされて出来た絵なのだそう。
クレパス、という素材はとても多様なマチエールを生み出すものなのだと知る。一枚の絵でも、部分によって様々な表情をしている。幾層にも色の層が重なり、削られ、固くも見えゆるくも見え、水分はないはずなのに水を感じる部分もあったり。見る度に目が楽しめる絵。だから自分の部屋に飾って、日々視界に入れていたいような。ギャラリーには雨の後の森の中にいるような空気が漂う。その空気の中にいつまでも身を浸していたくなる心地よさ。
イシマルさんによると、下地を作った状態の絵を何枚も用意しておいて、その日の気分と合うものに描きたしていくのだそう。滞在中、時折イシマルさんが制作しているところを見る機会があった。毎日の生活、その日の自分、そういうことを大事にして、絵を作っているように見えた。完成の時は決めなくても自ずとやってくるのだとか。イシマルさんが日々の暮らしを大事にして、その暮らしの中で生まれた絵だから、見るものにも身近に置いておきたいと思わせるのだろうな、と思ったりした。



次に訪れた博多リバレインの中にあるギャラリーアートリエでは、藤本英明さんの「残熱行」と題された絵画展が開催されていた。
絵を見たとき、一瞬頭の中がぐらりとする。どうやって画面が作られているのかわからない。絵の具でできているはずなのに、硬質の金属のようにも見える。
制作の様子をDVDで見ると、絵からは想像できないような手作業の繰り返しで、細かく計算に基づいて色を塗り重ね、やすりのようなもので表面を削って絵を浮かび上がらせている。「絵を描く」というよりは何かの職人の仕事を見ているようでもあり、土に埋もれた宝石を掘り出す採掘家みたいにも見えた。一色で覆われた表面から、様々な色が現れ出る様は見ていてもドキドキしたし、実際とても魅力的な瞬間なのだろうな、と思う。
ギャラリーアートリエの今年のテーマは「旅するアート」。藤本さんの絵画がどうテーマと関連するのだろう、と思っていたら、作家によるコンセプト文を読んで、深く納得した。作者が何を思って作品を作っているか。それを知ることが作品の見え方そのものも変えることもあるんだなぁ。http://gaartlier.exblog.jp/7879177/


最後に、アートスペース貘で開催されていた小林重予さんの個展「鬼のいる庭」を見た。
小林さんの作品には、毎回くらくらさせられる。海の中に住んでいそうな、もしくは湿った森の中に住んでいそうな、なまめかしい生き物みたいな立体作品。どうしてここまで見ることができるのだろう。想像して作ったもの、というより小林さんにはこれらが細部まではっきり見え、それを現実世界にある様々な素材に置き換えて、目の前に出現させているかのようだ。また、壁面には詩家の方との往復書簡が展示されていた。小林さんの絵に対して詩家の方が言葉をつけるというもの。そのイメージの多様さに驚く。毎日これだけのイメージを生み出し続ける深い深い沼のようなパワーに圧倒された。


自分の展示中に場所を離れることはあまりしないのだけれど、他の人の作品に触れて少し空気の入れ替えができた気がした。

糸の中

2008年06月15日 | exhibition
現在進行中の「部屋を編む」。糸の部屋の中はこんな感じです。





小さい子が入ってくれると縮尺が変わって見えて、とてもおもしろい。そしてダイレクトに、これをそのままで受け取ってくれているようです。


先日、珍しいおきゃくさんが。




4日目

2008年06月04日 | exhibition


「部屋を編む」平川渚、 始まって4日経ちました。

会場であるgallery blue ballenのホームページの「今月のgallery」コーナーで、紹介してくださっています。

また、NHK大分放送で、明日5日の18時10分から19時までのどこかで6分間、今回の展示のことも含めて紹介してくださる予定です。制作の動機とか展示をする意味とか観客をなぜ必要とするのかとか、かなり色々な質問に答えたので、どこまで放送で使われるのかはわかりませんが、お時間があればぜひ。

公開制作の3日間は終わりましたが、せっかく会期も長いし近いところにいるので、朝とか夜に、まだまだ少しずつ編みたしていきます。通りに面したガラス張りのギャラリーなので、毎日通学や通勤で前を通る人、湯布院に連泊している人などが少しずつ部屋が満ちていくのを楽しんでもらえたらいいなと思います。




「部屋を編む」平川渚 始まりました

2008年06月02日 | exhibition
6/1より、大分県湯布院町のgallery blue ballenで、『「部屋を編む」平川渚』が昨日から始まりました。
今回は最初の3日間を公開制作として会場で糸を編んで作っていっています。
DMの画像のような感じで部屋全体を編んでいくというイメージです。


「部屋を編む」平川渚
6/1(日)~6/30(月)※6/11(水)定休日
6/1(日)~3(火)公開制作
10:00~18:00
gallery blue ballen
大分県由布市湯布院町川上1510-7
tel.0977-84-4968


今回はガラス張りのギャラリーで、外は観光客がひっきりなしに通る。午前中ギャラリーの前を通った人が午後にまた通って「だいぶ進みましたね」とか「わっ、でかくなってるー」と声をかけてくれたりした。そういう風にギャラリーの中に入らないまでも、チラチラ視界に入って経過を観察できるというのはいいなと思った。今日明日で、どこまで拡がるか。やはり編む作業は気持ちいいです。