日常のちいさな旅

平 川 渚 Hirakawa Nagisa

作ったもの、見たもの  記録、お知らせ、報告

福田里香展 「木甘橘系」

2006年01月09日 | exhibition
福岡2日目は三菱地所アルティアムで開催されている「木甘橘系」をみに行きました。
福田里香さんは、プロフィールを拝見すると福岡出身で武蔵野美大卒の料理研究家。書籍もたくさん出されているようです。照度を抑えた会場内に、ずらりと並んだガラス瓶。中身をよく見ると、白いミルクと焼酎の液体の中に黄色い檸檬がたゆたっているのでした。同じ材料で作られているはずなのにひとつとして同じものはなく、僅かな条件の差で色んな様相が出来上がっています。また、これらは会期中日々変化し続けていっているとのこと。会期の始めの方と終わりの方では作品の様子が全く違うそうです。その周りにはお酒が入った大きな瓶の中に吊るされた金柑や文旦。オブジェとして吊るされているのではなく、お酒の香りづけのためなのだそう。ギャラリーの方の話によると、これらの果物やお酒は全て福岡のものを使用しているそうです。福田さんはこの展覧会を開催するにあたり、山に果物を採りに行くことから始めたのですって。
また、大きな網の上には「クリスタリーゼ」という状態のちいさなみかんがたくさん並べられています。グラニュー糖が表皮を覆ってあり、ジュエリーのようでした。これは食べたらすごぉくおいしいのだそうです。
そう、これらの「作品」は、おいしいお酒やお菓子を作る過程がそのまま美しい作品となっているのです。  ・・・これってすごいことですね。そもそもは「美」を目的としたものでなく、「食」という到達地点があり、そこに副産物的に「美」がうまれているとでも言いましょうか。
しかしやはりそれらを福田さんが素材として使用し、構成して見せる時点で紛れもなく「作品」となっているのですね。横尾忠則氏が「アートは目的のない遊び」とおっしゃっており私も同感ですが、こんなに有益な目的(おいしい!)のあるアート。いや、すばらしいですね。
最終日には、果実酒の試飲会も行われるそう。あぁ!なんだかこの作品は飲んでから完結するような気がする・・・残念です、行けません。

福岡アート探訪 1/8

2006年01月08日 | exhibition
福岡に行ってきました。
11月30日に報告した、「坂崎隆一展 -長い長い箸の話-」にもう一度訪れました。前回は公開製作中で、完成した作品を見るのを楽しみにしていました。長い木のテーブルに、整然と並べられた長い長い箸と器に盛られた穀物。会場隅にはここで制作されたことを示す木屑が円形を描いていました。会場に作家さんがいらして、前回訪れた時のことを憶えていてくださいました。そしてこのブログも見てくださったそうでびっくり。また見ていただけたらコメントくださいね。テーブルを置く台なども既製品を都合よく使うのではなく、あくまでその場にぴったりなものにするため、全て制作されるのだそうです。そこまでするのはなかなか大変なことだと思うのですが、こともなげに体現されているように見えたので、プロとはこういうものかと感心しました。

次に、昨年10月に日本で4番目の国立博物館としてオープンした九州国立博物館へ行くため、太宰府に向かいました。すぐ隣にある太宰府天満宮への参拝客なのか、駅も参道もすごい人でした。途中名物の梅ヶ枝餅をぬかりなくほおばりながら参道を進んでゆくと、現れた博物館へのアプローチに驚かされました。(左)

こんな外観に中は長ーいエレベータで山を突き抜けて、それが終わると周囲が七色に光る動く歩道のトンネルで入り口まで運ばれます。本館はウェーブ状の屋根を持つ近代的な建物でした。内部には、何故かセントレア空港に似た印象を抱く。おもしろかったのが、「あじっぱ」という子どもが遊べるブースでした。この博物館は「日本文化の形成をアジア史的観点から捉える」が理念なので、ここではアジア各国の生活文化品や民芸品などを展示していて、それを子どもたちが自由に手にとったり民俗楽器を鳴らして遊んだりしていました。靴を脱いで入り、大人が見てもとっても楽しめました。また、ミュージアムグッズもおもしろかった。所蔵品に「針聞書」という永禄11年につくられた東洋医学資料があり、そこには病気の原因と考えられた想像上の虫とその特徴、治療法が書かれているのですが、この虫たちが大変ユニークで、ものすごくあやしくてかわいいのです。この虫にちなんだグッズが色々つくられていました。「最近の虫ブームにあやかって」だそうですが、今虫ブームなんですか?私はその中からポストカードとシールを購入しました。右は中国の布製やぎ。

特別展は「中国 美の十字路」を開催中、常設展もとても充実していました。

天神に戻って福岡アジア美術館の地下にある「ギャラリー アートリエ」で開催されている「通りと広場2」をみに行きました。福岡の若手アーティストの作品が展示されており、その中鍋島哲治さんという方の作品にひかれ、資料を見ていたら数年前に警固公園の「ART CORE」で私がポストカードを購入した作家さんでした。作品は変わっても滲み出るものは変わらないものなのですね。いじわるでかわいい宇宙人みたいな「ホワイトペット人形」がおもしろかった。