「私の従軍記」 子供たちへ

平成元年父の誕生日に贈ってくれた本、応召されて帰還するまでの4年間の従軍記を今感謝を込めてブログに載せてみたいと思います

英語

2006-09-28 18:36:15 | Weblog
 日本人の間でもお国なまりが入ったりすると、分からないことがあるのに作業は英人が指導するのだからトラブルがあった。そこで初めには英人から言われたら、
 「ノウ、スピーキング イングリッシュ(私は英語は話せません)と答えるが無難だと教えられたが、実際それをやってみたら、相手から
 「そんな立派な英語が使えるではないか」と怒られたという話があった。
 ある日、私が建築現場の作業に行ったとき、若い兵士が何か道具を借りて来いと言いつけた。言葉が分からないので口写しの英語でそこから30m位離れた所で大工作業をしていた者にそう言ったら「そんな物は無いよ」と言う。 戻って英兵に手まねでそう伝えると、怒った顔をしてツカツカと作業隊員の所に行ってその道具を持って来た。そして私の顔を睨みつけて何か怒鳴った。
 「貴様、嘘をついたな!」と言っているそうだが、私はどうしてよいか分からず、立ち往生してしまった。すると同じ作業場にいた者が
 「斉藤、謝れ、敬礼をしろ!」と大声で叫んでくれた。 私はすぐに直立不動の姿勢で挙手の礼をして英兵の顔を見ていた。もしかしたら、帰還不能になるのではないかとの思いがチラッと脳裏をかすめた。
 やがて事情が分かったらしく、英兵の顔が穏やかになり、何か言ってその場はやっと収まった。そんな事もあった。

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