≪2018/11/8≫
ロッテVS台湾王者Lamigoも! パ・リーグと台湾が“コラボ”する理由
パ・リーグTVが「Lamigo対千葉ロッテ」を配信するワケ
SMBC日本シリーズ2018は、リーグ2位から駆け上がったソフトバンクがセ・リーグ王者の広島を下し、日本一に輝いた。王者が華やかなスポットライトを浴びる一方で、ポストシーズンに進めなかったチーム、クライマックスシリーズで敗れたチームは、すでに秋季練習や秋季キャンプをスタートさせ、早くも来季に向けてのスタートを切っている。
井口新監督の1年目を終えたロッテは、浦和と鴨川でそれぞれ練習、キャンプを実施しているが、昨年に続き今年もその途中に台湾へ遠征し、現地で試合を行う。昨年はアジアプロ野球チャンピオンシップに出場予定だった台湾代表チームと計3試合を行ったが、今年は4季連続(2年連続で前期後期の)リーグ優勝、そして台湾シリーズを制覇して2年連続6度目の台湾一に輝いたLamigoモンキーズと「桃園最強Power Series 2018 日台バトルカップ」と銘打った3連戦を迎える。
今回の遠征では、ロッテは田村龍弘、中村奨吾、井上晴哉といった主力選手を軸に、岩下大輝、種市篤暉、そして安田尚憲といった将来の主力候補たちが経験を重ねるべく参加予定。対するLamigoも、オフの日本移籍が予想される「大王」こと王柏融を中心としたフルメンバーで臨む予定となっている。今回のロッテはフレッシュな面々が揃うチーム構成ではあるものの、王柏融が日本のチームに対して残す結果・成績が、昨年以上に大きな注目を集めるカードとなりそうだ。
「さまざまな面でご協力をいただいているLamigoさんの多大なご理解とご協力で、国内独占配信は実現している」と、今年もロッテの台湾遠征を国内独占配信するパーソル パ・リーグTVの上野友輔氏はLamigoとの密接な関係を語る。「Lamigoさんは日本にまつわるさまざまなコンテンツを球場で展開する一環で、パ・リーグをはじめとする日本プロ野球とのコラボにも積極的に取り組んでいる。PLMとしても台湾での放映権販売をはじめとする台湾でのプロモーションを行っており、交流は相互のメリットが一致する。大変な協力をいただけているLamigoさんには感謝しかない」(上野氏)という。
パ・リーグとLamigoのコラボにおいては、今年の5月11~13日に桃園で行われた日本イベント「YOKOSO桃猿」に日本ハムがチアとマスコット、楽天とロッテがマスコットを派遣し、台湾の野球ファンとのタッチポイントを作った。またイベント以外でも、Lamigoはロッテが春季キャンプを行う石垣島へ遠征して交流試合を2016年から毎年実施しており、今年は2・3月に札幌へ遠征して日本ハムとの交流試合も行うなど、日本との接点づくりが盛んだ。
もちろんビジネスの側面で相互のメリットが合致することは大事だが、それ以上に「野球を通じて国境を超えたファンを増やし、そこからスポーツの外にまではみ出るような日台交流につなげたい」(上野氏)という、相互の担当者間の思いもある。
パーソル パ・リーグTVにとっては、どうしてもイベント以外のコンテンツが不足がちなオフシーズンに、貴重な「本業」の野球コンテンツとして提供できるのが今回のLamigo対ロッテの試合。それが成り立つのは、日本と台湾間のビジネスを通じて強い結びつき、そして共通の目標があるからこそ、のようだ。
(「パ・リーグ インサイト」編集部)
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≪2018/11/8≫
【連載】チームを変えるコーチの言葉〜吉井理人(1)
投手コーチ・吉井理人の指導の軸は
「チームの勝利よりも選手の幸せ」
クライマックスシリーズ敗退が決まって、翌日の10月16日。投手コーチの吉井理人が日本ハムを退団することが発表された。
吉井は現役引退直後の2008年から同球団の投手コーチに就任し、09年と12年のリーグ優勝に貢献して12年に退団。15年にはソフトバンクの投手コーチに就任し、日本一に輝くと、日本ハムに復帰した16年もチームは日本一になった。
それだけの実績と経験があっても、球団の方針でコーチが入れ替わるのは野球界の常。来季からロッテの投手コーチとしてまた新たな道に進むことになった吉井自身、もう過去は過去と割り切っているのかもしれないが、2018年の日本ハム投手陣のことは聞かずにいられなかった。
17年のシーズンオフ。ケガの影響で投手としては機能しなかったとはいえ、大谷翔平がMLBのロサンゼルス・エンゼルスに移籍。さらに抑えの増井浩俊がオリックスへ、主力捕手の大野奨太が中日へ、いずれもFAで移籍した。
それ以前に谷元圭介も中日に移籍し、バッテリーに大きな穴が空いて、投手コーチの吉井の苦労は相当なものではないか、チームとしても上がり目はないのではないか、と外から見て考えていた。実際にはどうだったのか。吉井に尋ねた。
「ファイターズの場合は毎年、誰かしら抜けるので、とくに誰が抜けたからどうだって、コーチとしてはあまり考えなかったです。監督はたぶん頭を悩ましていたと思いますし、僕らもチームの勝利を目指してやっているんですが、コーチとしてのひとつの軸はまた別のところにある。その軸というのは、チームの勝利よりも選手の幸せを考えてやることです」
パフォーマンスを上げることはもとより、1年間、投手の心と体のコンディションを良好に保ち、気分よくマウンドに上がってもらうこと。それが投手コーチとして最大の仕事だと考えている吉井にとって、チームの勝利は第一ではない。
「いろんな意味で、コーチというのは選手個人と向き合う方が比率としては高いわけです。そうすると『個人がうまくいけばチームもうまくいく』という考え方になっていく。これはたぶん野球観の違いで、同じコーチでもいろんな人の考えがあると思うんですが、僕は選手個人の幸せを軸にやってきました。だから、チームのメンバーが変わったからどうのこうのと考えたことはほとんどないですね。ただ、これをあまり大きい声で言っちゃうと、たぶん批判があると思います(笑)」
とはいえ、たとえば抑えが抜けたとして、穴埋めに見合った投手を新たに見い出すのもコーチの仕事だろう。その場合、この選手はここでいける、と自身で判断して監督に提案するのか、それとも、監督との話し合いのなかで意見を言って決めるのか。
「最終的に決めるのは監督なんですけど、以前、日本ハムでコーチをしているときは、僕がちょっと意見を言い過ぎました。僕のいちばんの欠点で、ついズバズバ言ってしまって、ちょっと越権な場合もあって……(笑)。それで監督はやりづらかったと思うので、この3年間は主導権が監督の方に行くように、自分では考えてやってきたつもりでした。
そのなかで意見できるところはしっかり、『この選手はこんなタイプなんで、このポジションがいいと考えてます』というふうに言います。『こいつ、クローザーでお願いします』みたいな、そういう言い方はしないです(笑)」
そんな無茶な提案はなかったとしても、コーチの吉井が推し、監督の栗山英樹が新たに抑えに抜擢したのが、高卒4年目の右腕・石川直也だった。実質1年目だった17年は37試合に登板して経験を積んだが、セーブは挙げていなかった。長身から投げ下ろす速球とフォークが武器でも、当然ながら経験不足が心配された。
案の定というべきか、3月31日、西武との開幕第2戦。2対3と1点ビハインドの9回に登板した石川は一死後に四球から崩れ、山川穂高に3ランを浴びるなどして4失点。マウンド上の顔は青ざめ、降板後はまだ裏の攻撃があるのにベンチでうなだれ泣いているようだった。
まして、翌日の第3戦も2点ビハインドで9回に登板すると、タイムリーで1点を失った。セーブシチュエーションでの失敗ではないが、いきなり痛い目に遭った抑え候補に、コーチとしてどう向き合ったのだろうか。
「もちろん、石川本人と話し合いをしました。コーチとしてはまず、選手がその時にどういうことを感じていたか、ちゃんと選手自身で意識してもらいたいんですね。コーチの僕から指摘するのは簡単なんですけど、それだとうわべの反省だけで終わってしまうんで、まずはあの時点でどう思っていたのか、しつこいぐらいに選手に質問していきます。そこから本人との話し合いが始まって、そのなかで気づかせていくのがコーチの仕事かな、と思っています」
果たして、石川は次カード、4月3日の楽天戦でプロ初セーブを挙げている。すぐに挽回ができたのも、話し合いによる効果があったからなのだろうか。
「効果もあったと思いますが、もともと、石川は切り替えがうまい子なんです。打たれてすぐはがっかりしてましたけど、次の日からもう普通に戻ってましたね。そのへんは、性格的には悪く言うと鈍感(笑)。ただ、切り替えがうまいから、早いからと言って放っておくと、本当に鈍感でなにも感じないで、『まぁいいや』ってなっちゃう。そうして次に切り替えられちゃうと、同じ失敗をする。石川の場合、その危険性がなくなったわけではないので、切り替えられるにしても、ちゃんと教訓を残して切り替えてもらいたいなと」
4月末から中継ぎに配置転換された石川だったが、シーズン中盤に抑えに復帰。右内転筋の故障による離脱もありながら、18年は52試合に登板して19セーブと抑えとして結果を残した。
一方、先発陣で大きく成長したのが上沢直之で、プロ7年目にして自身初の2ケタ勝利となる11勝をマーク。4完投で完封が3試合、うち1試合が無四球と安定感のある投球内容が光っていた。16年3月の右ヒジ手術から見事に復活を遂げた形だ。
「上沢の場合、技術的には一軍でローテーションを守れる実力を持っていて、右ヒジの故障で休んでいたので『体のコンディションさえ整えば大丈夫』とこちらは思ってました。去年の秋のピッチングを見ていても、本当に一軍の先発投手の一番手、二番手を任せられる力がある、とわかっていたので、あとはプロとしての考え方ですよね。
これについても、じつは大丈夫だと思っていました。なぜかというと、僕が大学院に行っていた2014年、上沢がちょうど活躍していました。そこで、僕の研究テーマに沿って、彼と宮西(尚生)、谷元、増井、この4人にインタビューさせてもらったことがあったんです」
つづく
(=敬称略)
高橋安幸●文
(Sportiva)
ロッテVS台湾王者Lamigoも! パ・リーグと台湾が“コラボ”する理由
パ・リーグTVが「Lamigo対千葉ロッテ」を配信するワケ
SMBC日本シリーズ2018は、リーグ2位から駆け上がったソフトバンクがセ・リーグ王者の広島を下し、日本一に輝いた。王者が華やかなスポットライトを浴びる一方で、ポストシーズンに進めなかったチーム、クライマックスシリーズで敗れたチームは、すでに秋季練習や秋季キャンプをスタートさせ、早くも来季に向けてのスタートを切っている。
井口新監督の1年目を終えたロッテは、浦和と鴨川でそれぞれ練習、キャンプを実施しているが、昨年に続き今年もその途中に台湾へ遠征し、現地で試合を行う。昨年はアジアプロ野球チャンピオンシップに出場予定だった台湾代表チームと計3試合を行ったが、今年は4季連続(2年連続で前期後期の)リーグ優勝、そして台湾シリーズを制覇して2年連続6度目の台湾一に輝いたLamigoモンキーズと「桃園最強Power Series 2018 日台バトルカップ」と銘打った3連戦を迎える。
今回の遠征では、ロッテは田村龍弘、中村奨吾、井上晴哉といった主力選手を軸に、岩下大輝、種市篤暉、そして安田尚憲といった将来の主力候補たちが経験を重ねるべく参加予定。対するLamigoも、オフの日本移籍が予想される「大王」こと王柏融を中心としたフルメンバーで臨む予定となっている。今回のロッテはフレッシュな面々が揃うチーム構成ではあるものの、王柏融が日本のチームに対して残す結果・成績が、昨年以上に大きな注目を集めるカードとなりそうだ。
「さまざまな面でご協力をいただいているLamigoさんの多大なご理解とご協力で、国内独占配信は実現している」と、今年もロッテの台湾遠征を国内独占配信するパーソル パ・リーグTVの上野友輔氏はLamigoとの密接な関係を語る。「Lamigoさんは日本にまつわるさまざまなコンテンツを球場で展開する一環で、パ・リーグをはじめとする日本プロ野球とのコラボにも積極的に取り組んでいる。PLMとしても台湾での放映権販売をはじめとする台湾でのプロモーションを行っており、交流は相互のメリットが一致する。大変な協力をいただけているLamigoさんには感謝しかない」(上野氏)という。
パ・リーグとLamigoのコラボにおいては、今年の5月11~13日に桃園で行われた日本イベント「YOKOSO桃猿」に日本ハムがチアとマスコット、楽天とロッテがマスコットを派遣し、台湾の野球ファンとのタッチポイントを作った。またイベント以外でも、Lamigoはロッテが春季キャンプを行う石垣島へ遠征して交流試合を2016年から毎年実施しており、今年は2・3月に札幌へ遠征して日本ハムとの交流試合も行うなど、日本との接点づくりが盛んだ。
もちろんビジネスの側面で相互のメリットが合致することは大事だが、それ以上に「野球を通じて国境を超えたファンを増やし、そこからスポーツの外にまではみ出るような日台交流につなげたい」(上野氏)という、相互の担当者間の思いもある。
パーソル パ・リーグTVにとっては、どうしてもイベント以外のコンテンツが不足がちなオフシーズンに、貴重な「本業」の野球コンテンツとして提供できるのが今回のLamigo対ロッテの試合。それが成り立つのは、日本と台湾間のビジネスを通じて強い結びつき、そして共通の目標があるからこそ、のようだ。
(「パ・リーグ インサイト」編集部)
***************************************************
≪2018/11/8≫
【連載】チームを変えるコーチの言葉〜吉井理人(1)
投手コーチ・吉井理人の指導の軸は
「チームの勝利よりも選手の幸せ」
クライマックスシリーズ敗退が決まって、翌日の10月16日。投手コーチの吉井理人が日本ハムを退団することが発表された。
吉井は現役引退直後の2008年から同球団の投手コーチに就任し、09年と12年のリーグ優勝に貢献して12年に退団。15年にはソフトバンクの投手コーチに就任し、日本一に輝くと、日本ハムに復帰した16年もチームは日本一になった。
それだけの実績と経験があっても、球団の方針でコーチが入れ替わるのは野球界の常。来季からロッテの投手コーチとしてまた新たな道に進むことになった吉井自身、もう過去は過去と割り切っているのかもしれないが、2018年の日本ハム投手陣のことは聞かずにいられなかった。
17年のシーズンオフ。ケガの影響で投手としては機能しなかったとはいえ、大谷翔平がMLBのロサンゼルス・エンゼルスに移籍。さらに抑えの増井浩俊がオリックスへ、主力捕手の大野奨太が中日へ、いずれもFAで移籍した。
それ以前に谷元圭介も中日に移籍し、バッテリーに大きな穴が空いて、投手コーチの吉井の苦労は相当なものではないか、チームとしても上がり目はないのではないか、と外から見て考えていた。実際にはどうだったのか。吉井に尋ねた。
「ファイターズの場合は毎年、誰かしら抜けるので、とくに誰が抜けたからどうだって、コーチとしてはあまり考えなかったです。監督はたぶん頭を悩ましていたと思いますし、僕らもチームの勝利を目指してやっているんですが、コーチとしてのひとつの軸はまた別のところにある。その軸というのは、チームの勝利よりも選手の幸せを考えてやることです」
パフォーマンスを上げることはもとより、1年間、投手の心と体のコンディションを良好に保ち、気分よくマウンドに上がってもらうこと。それが投手コーチとして最大の仕事だと考えている吉井にとって、チームの勝利は第一ではない。
「いろんな意味で、コーチというのは選手個人と向き合う方が比率としては高いわけです。そうすると『個人がうまくいけばチームもうまくいく』という考え方になっていく。これはたぶん野球観の違いで、同じコーチでもいろんな人の考えがあると思うんですが、僕は選手個人の幸せを軸にやってきました。だから、チームのメンバーが変わったからどうのこうのと考えたことはほとんどないですね。ただ、これをあまり大きい声で言っちゃうと、たぶん批判があると思います(笑)」
とはいえ、たとえば抑えが抜けたとして、穴埋めに見合った投手を新たに見い出すのもコーチの仕事だろう。その場合、この選手はここでいける、と自身で判断して監督に提案するのか、それとも、監督との話し合いのなかで意見を言って決めるのか。
「最終的に決めるのは監督なんですけど、以前、日本ハムでコーチをしているときは、僕がちょっと意見を言い過ぎました。僕のいちばんの欠点で、ついズバズバ言ってしまって、ちょっと越権な場合もあって……(笑)。それで監督はやりづらかったと思うので、この3年間は主導権が監督の方に行くように、自分では考えてやってきたつもりでした。
そのなかで意見できるところはしっかり、『この選手はこんなタイプなんで、このポジションがいいと考えてます』というふうに言います。『こいつ、クローザーでお願いします』みたいな、そういう言い方はしないです(笑)」
そんな無茶な提案はなかったとしても、コーチの吉井が推し、監督の栗山英樹が新たに抑えに抜擢したのが、高卒4年目の右腕・石川直也だった。実質1年目だった17年は37試合に登板して経験を積んだが、セーブは挙げていなかった。長身から投げ下ろす速球とフォークが武器でも、当然ながら経験不足が心配された。
案の定というべきか、3月31日、西武との開幕第2戦。2対3と1点ビハインドの9回に登板した石川は一死後に四球から崩れ、山川穂高に3ランを浴びるなどして4失点。マウンド上の顔は青ざめ、降板後はまだ裏の攻撃があるのにベンチでうなだれ泣いているようだった。
まして、翌日の第3戦も2点ビハインドで9回に登板すると、タイムリーで1点を失った。セーブシチュエーションでの失敗ではないが、いきなり痛い目に遭った抑え候補に、コーチとしてどう向き合ったのだろうか。
「もちろん、石川本人と話し合いをしました。コーチとしてはまず、選手がその時にどういうことを感じていたか、ちゃんと選手自身で意識してもらいたいんですね。コーチの僕から指摘するのは簡単なんですけど、それだとうわべの反省だけで終わってしまうんで、まずはあの時点でどう思っていたのか、しつこいぐらいに選手に質問していきます。そこから本人との話し合いが始まって、そのなかで気づかせていくのがコーチの仕事かな、と思っています」
果たして、石川は次カード、4月3日の楽天戦でプロ初セーブを挙げている。すぐに挽回ができたのも、話し合いによる効果があったからなのだろうか。
「効果もあったと思いますが、もともと、石川は切り替えがうまい子なんです。打たれてすぐはがっかりしてましたけど、次の日からもう普通に戻ってましたね。そのへんは、性格的には悪く言うと鈍感(笑)。ただ、切り替えがうまいから、早いからと言って放っておくと、本当に鈍感でなにも感じないで、『まぁいいや』ってなっちゃう。そうして次に切り替えられちゃうと、同じ失敗をする。石川の場合、その危険性がなくなったわけではないので、切り替えられるにしても、ちゃんと教訓を残して切り替えてもらいたいなと」
4月末から中継ぎに配置転換された石川だったが、シーズン中盤に抑えに復帰。右内転筋の故障による離脱もありながら、18年は52試合に登板して19セーブと抑えとして結果を残した。
一方、先発陣で大きく成長したのが上沢直之で、プロ7年目にして自身初の2ケタ勝利となる11勝をマーク。4完投で完封が3試合、うち1試合が無四球と安定感のある投球内容が光っていた。16年3月の右ヒジ手術から見事に復活を遂げた形だ。
「上沢の場合、技術的には一軍でローテーションを守れる実力を持っていて、右ヒジの故障で休んでいたので『体のコンディションさえ整えば大丈夫』とこちらは思ってました。去年の秋のピッチングを見ていても、本当に一軍の先発投手の一番手、二番手を任せられる力がある、とわかっていたので、あとはプロとしての考え方ですよね。
これについても、じつは大丈夫だと思っていました。なぜかというと、僕が大学院に行っていた2014年、上沢がちょうど活躍していました。そこで、僕の研究テーマに沿って、彼と宮西(尚生)、谷元、増井、この4人にインタビューさせてもらったことがあったんです」
つづく
(=敬称略)
高橋安幸●文
(Sportiva)
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