保阪和志・作 小沢さかえ・画「チャーちゃん」という一冊です。
保坂和志の小説のファンなら、誰でも知っていると思います。
保坂さんが飼われていた猫のチャーちゃん。若くして病気で亡
くなってしまった猫。
「カフカ式練習帳」の中にもチャーちゃんが語るお話が出てき
てましたので、ひょっとしてと思っていましたが、ありました。
昨年の10月の福音館書店から、初版発行しておりました。
チャーちゃん自身が語る今のチャーちゃんです。
生きてこの世にあった時と同じに、元気に動き回るチャーちゃん。
明るく伸び伸びと振る舞うチャーちゃんに、やっぱり作者同様、
ちょっぴり涙が流れてしまいます。
痛ましい事件の起こる昨今、優しい気持ち、優しい心は子どもの
ころからの社会、環境の中で育まれて行くものだと思います。
養われてこそ、心はより良く育っていくものではないでしょうか?
いい絵本をいっぱいいっぱい子どもたちに……。
そして大人たちに……。
今年の3月に、名古屋で作家の多和田葉子さんのトークショーがあり、
足を運んだその折、ご本人がその一部を朗読もされた、集英社文庫ヘ
リテージシリーズ。ポケットマスターズ01カフカを購入し、今ようや
くに手にすることが出来、読書中です。
この文庫本、多和田さんが訳した「変身」これ、かわりみと読ませま
す。この作品を巻頭に置き、カフカの作品14篇を読むことが出来ま
す。
私は今10作品目の「巣穴」を読んでいますが、あらためてカフカの
面白さ、不思議さに感じ入っています。
この1冊の名訳・新訳でカフカを読み返してみると、なんてカフカの
作品って映像的で、なおかつ実際には映像にはなり難いものだと感心
しつつ読み進めています。
かつて私たちはカフカの「変身」で、グレゴール・ザムザが変身する
ものを、ゴキブリとか毒虫といったような訳で読んで来ましたが、多
和田さんの訳では、ウンゲツィーファー(生贄にできないほど汚れた
動物あるいは虫)と訳されていて、カフカが用いたドイツ語の原語その
ままで、あまり特定的な訳者の想像の域を限定させていません。
つまりは読者の想像の域を広げかつ、特定さないがゆえに、かえって
自由に(いやある種不自由に)グレゴールに狭い部屋の中をを動き回ら
せています。
現代日本において、介護というものを経験した者にとって、これはま
さしく介護小説としても読めてしまうものです。
私自身、母を介護した三年間のうちに、何度意思の疎通が不可能にな
っていく自分の母親をモンスターと思ったことか……。
そんなわけで、これはある意味切実な小説であり、どの時代にも通ず
る普遍の問題を抱えた小説として、読み応え充分です。
今年の読書量は、例年に比べとても少ないです。
というのも、春先から谷崎潤一郎著「細雪」の
再再読、完全音読読破と言うものにチャレンジ
して、その目標読了にかなり時間を要したこと
が、原因の一つではありますが、とにかく5月の
読書量が半端なく少なく、いまだにそのロスから
抜け出していないのが現状です。
そんな中で今読んでいて面白いのが、村田喜代子
著「ゆうじょこう」という小説です。
硫黄島出身の娘青井イチが熊本の遊郭、東雲楼に
売られてきて送る日々のお話しです。
何故か昔から、苦界に身を沈めた女性の歴史に興
味があり(若い時に山崎豊子の「サンダカン八番
娼館」という作品に触れたからかもしれません)、
いわゆる娼婦物の小説をいろいろ読んできました
が、これはまた女性史としても、かなり読みごた
えのある一冊です。
もっとも信頼と敬意を寄せる映画監督のひとり
である、イランの巨匠アッバス・キアロスタミ
監督が4日パリで亡くなられました。
1997年にカンヌでパルムドールを受賞した
「桜桃の味」はもとより、初期の作品「友だち
のうちはどこ?」そして最高に好きな作品「オ
リーブの林をぬけて」など、すべての作品だい
だい大好きでした。
彼の作品を観てイランという国を嫌いになる人
はいないのではないかとまで思います。
政治や宗教、様々に難しい問題はあるかもしれ
ませんが、それを乗り越える素晴らしさを人間
は有している、と信じられるのがキアロスタミ
監督の作品であり、映画に国境はないというこ
とを教えてくれた偉大なアーティストでした。
心よりご冥福をお祈りいたします。
である、イランの巨匠アッバス・キアロスタミ
監督が4日パリで亡くなられました。
1997年にカンヌでパルムドールを受賞した
「桜桃の味」はもとより、初期の作品「友だち
のうちはどこ?」そして最高に好きな作品「オ
リーブの林をぬけて」など、すべての作品だい
だい大好きでした。
彼の作品を観てイランという国を嫌いになる人
はいないのではないかとまで思います。
政治や宗教、様々に難しい問題はあるかもしれ
ませんが、それを乗り越える素晴らしさを人間
は有している、と信じられるのがキアロスタミ
監督の作品であり、映画に国境はないというこ
とを教えてくれた偉大なアーティストでした。
心よりご冥福をお祈りいたします。