ひとり語り 劇車銀河鐵道 いちかわあつき

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中村紘子さんの死を悼む。

2016-07-29 11:39:52 | 日記

ピアニストの中村紘子さんが亡くなられました。大大大好きな方でした。
ショパンを日本語に訳して弾いておられるとそう思った方で、そう思えた
ら、どんどんむつかしいと思っていたクラッシックの曲が、楽しいものに
なった、そんなきっかけを作っていただいた方でした。
もちろん、エッセイストとしての中村さんも大好きで、「チャイコフスキ
ーコンクール」「ピアニストという蛮族がいる」「アルゼンチンまでもぐ
りたい」どれも愛読書です。

残念です。心よりご冥福をお祈りいたします。

今日は絵本をご紹介します。

2016-07-27 23:19:34 | 日記

保阪和志・作 小沢さかえ・画「チャーちゃん」という一冊です。

保坂和志の小説のファンなら、誰でも知っていると思います。
保坂さんが飼われていた猫のチャーちゃん。若くして病気で亡
くなってしまった猫。
「カフカ式練習帳」の中にもチャーちゃんが語るお話が出てき
てましたので、ひょっとしてと思っていましたが、ありました。

昨年の10月の福音館書店から、初版発行しておりました。
チャーちゃん自身が語る今のチャーちゃんです。
生きてこの世にあった時と同じに、元気に動き回るチャーちゃん。

明るく伸び伸びと振る舞うチャーちゃんに、やっぱり作者同様、
ちょっぴり涙が流れてしまいます。

痛ましい事件の起こる昨今、優しい気持ち、優しい心は子どもの
ころからの社会、環境の中で育まれて行くものだと思います。
養われてこそ、心はより良く育っていくものではないでしょうか?

いい絵本をいっぱいいっぱい子どもたちに……。
そして大人たちに……。

新訳でカフカを読む。

2016-07-23 22:49:10 | 日記

今年の3月に、名古屋で作家の多和田葉子さんのトークショーがあり、
足を運んだその折、ご本人がその一部を朗読もされた、集英社文庫ヘ
リテージシリーズ。ポケットマスターズ01カフカを購入し、今ようや
くに手にすることが出来、読書中です。

この文庫本、多和田さんが訳した「変身」これ、かわりみと読ませま
す。この作品を巻頭に置き、カフカの作品14篇を読むことが出来ま
す。
私は今10作品目の「巣穴」を読んでいますが、あらためてカフカの
面白さ、不思議さに感じ入っています。
この1冊の名訳・新訳でカフカを読み返してみると、なんてカフカの
作品って映像的で、なおかつ実際には映像にはなり難いものだと感心
しつつ読み進めています。
かつて私たちはカフカの「変身」で、グレゴール・ザムザが変身する
ものを、ゴキブリとか毒虫といったような訳で読んで来ましたが、多
和田さんの訳では、ウンゲツィーファー(生贄にできないほど汚れた
動物あるいは虫)と訳されていて、カフカが用いたドイツ語の原語その
ままで、あまり特定的な訳者の想像の域を限定させていません。
つまりは読者の想像の域を広げかつ、特定さないがゆえに、かえって
自由に(いやある種不自由に)グレゴールに狭い部屋の中をを動き回ら
せています。

現代日本において、介護というものを経験した者にとって、これはま
さしく介護小説としても読めてしまうものです。
私自身、母を介護した三年間のうちに、何度意思の疎通が不可能にな
っていく自分の母親をモンスターと思ったことか……。

そんなわけで、これはある意味切実な小説であり、どの時代にも通ず
る普遍の問題を抱えた小説として、読み応え充分です。

最近の読書事情。

2016-07-11 12:45:30 | 日記


今年の読書量は、例年に比べとても少ないです。
というのも、春先から谷崎潤一郎著「細雪」の
再再読、完全音読読破と言うものにチャレンジ
して、その目標読了にかなり時間を要したこと
が、原因の一つではありますが、とにかく5月の
読書量が半端なく少なく、いまだにそのロスから
抜け出していないのが現状です。
そんな中で今読んでいて面白いのが、村田喜代子
著「ゆうじょこう」という小説です。
硫黄島出身の娘青井イチが熊本の遊郭、東雲楼に
売られてきて送る日々のお話しです。

何故か昔から、苦界に身を沈めた女性の歴史に興
味があり(若い時に山崎豊子の「サンダカン八番
娼館」という作品に触れたからかもしれません)、
いわゆる娼婦物の小説をいろいろ読んできました
が、これはまた女性史としても、かなり読みごた
えのある一冊です。

アッバス・キアロスタミ監督の死を悼む。

2016-07-06 23:19:25 | 日記
もっとも信頼と敬意を寄せる映画監督のひとり
である、イランの巨匠アッバス・キアロスタミ
監督が4日パリで亡くなられました。
1997年にカンヌでパルムドールを受賞した
「桜桃の味」はもとより、初期の作品「友だち
のうちはどこ?」そして最高に好きな作品「オ
リーブの林をぬけて」など、すべての作品だい
だい大好きでした。

彼の作品を観てイランという国を嫌いになる人
はいないのではないかとまで思います。
政治や宗教、様々に難しい問題はあるかもしれ
ませんが、それを乗り越える素晴らしさを人間
は有している、と信じられるのがキアロスタミ
監督の作品であり、映画に国境はないというこ
とを教えてくれた偉大なアーティストでした。

心よりご冥福をお祈りいたします。