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レポピ - Piano Lesson Report

埼玉県上尾市&桶川市にある「たかすぎ音楽教室」(ピアノ・声楽・ソルフェージュ・楽典)のレッスン風景をつづります。

リタルダンドのかけかた

2006年07月22日 | レッスン

いよいよ開催がちかづいたたかすぎ音楽教室「第21回発表会」の第Ⅱ部・アンサンブルの部で、春畑セロリ編曲の「バッハ メヌエット BWV Anh.115」(ト短調のメヌエット)を連弾するやっちゃんと、ゆうさんのレッスンです。

前回までのあわせ練習でおふたりとも、この曲の内容をよく理解し、音楽的にまとめあげるためのきっかけをつかむことができたと思います。
舞台でのリハーサルまで7日間をきった今日、2週間ぶりに特別レッスンを組みました。

まず通奏。
これまでのアドバイスがよく生かされていて、流暢にながれています。
技術的にむずかしかったいくつかの部分も克服されていました。

さてこれから仕上げにむかって、どんなことに気をつけて練習していったらよいのでしょうか?

第1奏者であるやっちゃんには、主旋律をさらによくレガートで歌えるよう、表現を練りあげていくことをお話ししました。
やっちゃんはもともと歌ごころがあって(じっさいに合唱団でも歌っています)、旋律に上手にクレッシェンド&ディミヌエンドをかけることができます。
それをもっと徹底させて、おおきな部分・おおきなながれにおける強弱だけでなく、節のひとつひとつにも繊細な心くばりがあると、さらに音楽がうつくしくなると思います。

旋律を歌いきること。
旋律が閉じるときの最後の音は、とくに気をつけてやわらかく奏します。全曲とおして、すべてのフレーズにきちんとしまつをつけてゆきます。

第2奏者のゆうさんには、音楽のボリューム・アップをアドバイスをしました。
どんなにやっちゃんが主旋律を強く弾きたい、あるいは音楽をふくらませたいと思っても、もともとピアノの弦がみじかくほそい高音域のパートでは限界があります。むしろ低音弦をよく鳴らしてあげると、倍音の効果(ある音=基音を鳴らしたとき、その整数倍の振動数をもつ上の音域の音が自然発生する)で高音弦がひびきやすくなるのです。

冒頭のメロディが繰りかえされる部分では、第2奏者のパートが音楽をふくらませやすいよう、上向きのアルペジオ(分散和音)の音型が敷きつめられています。この伴奏形を上手に利用して、左手から右手へなめらかにクレッシェンドを移行させ、全体のひびきにもっとボリューム感を出してあげると、やっちゃんがとても歌いやすくなるはずです。

長調に転調した後半部分からは、第2奏者のパート(右手)にも、いわば副旋律ともいうべきちいさな旋律的要素があちらこちらに登場します。
この旋律的要素はバッハの原曲には存在しない、セロリ流のオリジナルの対旋律ですよ! その証拠に、これまで対旋律を担ってきた第1奏者の左手はほとんど動きがなく、もっぱら和声上必要か、主旋律の一部をなぞっているだけの音符がならんでいます。
ここはゆうさんの出番なのです。

さて最後に、曲の終わりかたの練習をしました。
楽譜には「2nd time rit.」(2回めはしだいに遅く)と書かれています。終わりらしく、ゆっくりしながらていねいに曲を閉じます。
ひとりならそれらしくできるのですが、ふたりで呼吸をあわせてとなるとなかなかむずかしく、どんなふうにリタルダンドするのか、約束を決めておいたほうがよさそうです。

数回弾いているうち、やっちゃんが主旋律の最後の節「ドレミ・ラ・ソ♯・ラ」(原曲はト短調ですが、セロリ版はイ短調で書かれています)の「ドレミ」から遅くしようとしていることに気づきました。ゆうさんは、あわせにくそうです。
前の部分からふくらんできていちばん重さがのり、勢いもあるフレーズが「ドレミ」なので、そこでブレーキをかけてしまうのは適切なタイミングとはいえません。

「ドレミ」はテンポで弾き、つづく第2拍めからの「ラ・ソ♯」で遅くして、最後の「ラ」へ落ちつくほうがおさまりがよいみたいです(楽譜で「rit.」の指定が第2拍めから書いてあるのは、音楽的な理由があってのことなのです)。

そうすると、じっさいに曲にブレーキをかけてゆく役目は、「ラ・ソ♯・ラ」を弾く主旋律のやっちゃんではなくて、おなじ箇所を8分音符で伴奏するゆうさんにまかされているといえます。曲のリズムやテンポを支配しているのは、この場合、ゆうさんのパートです。

リタルダンドを上手にかけるコツは、自分の音を最後までよく聴くこと。各音の持続をすべて耳で追いかけて、注意を逃がさないこと。これにかぎります。

第2奏者の右手「レ・ファ♯・ソ♯・シ」という8分音符のフレーズに気をつけます。この各音をよく聴きながら、あたかも車輪が物理の法則にしたがって自然に回転をゆるめ、やがて停止するように、どの音もしだいに遅く(ながく)なってゆくように弾くのです(すこし理屈っぽいですが…)。

指にまかせると、脳から「この音を弾け」とすでに命令をうけている指は、どんどんさきに弾いていってしまいますよ! かならず耳で聴いて、コントロールします。

なんどかためして練習しました。ゆうさんだけで、おおげさにリタルダンドしながら弾いてもらうこともしました。
そのくらいおおげさでも、ふたりであわせるとちょうどよくなりますよ。

ながれてゆく音楽をとめることは意志のいることです。かなり意識して「お・し・ま・い」といわないと、じっさいにはたいしてゆっくりになっていない場合が多いのです。おおげさなくらいが適当です。

ほら、上手にできました!(こうき)

レッスン日 2006年7月21日(金) 12:00


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