猫の音

君の言葉を借りてみた  ~ 心のお天気 覚え書き ~

壊れた街、第二章

2004-10-20 | 心のお天気
近づく側から足元が崩れ地上に舞い落ちてしまいそうな恐怖にも
切断された思考回路を無理やり起こして窓に寄ってみる。
最上階の窓から見た地上は、すべてが無かったことのように鎮まり
色と呼べない暗黒が広がるだけだった。
残りの五感の1つが直ぐに火の気を感知した、・・・逃げなければ・・・・。

「ひめっ?よし姫っ!!」
完全に押し殺された彼女の気配を深い闇の中で探る。
まさか、を打ち消し
扉が壊れたのか穴が開いたクローゼットに検討をつける、
手を突っ込むと確かに長毛に触った、心臓が早鐘のように打ち鳴る。
大丈夫生きている。
しかし怖れた彼女は更に奥で蹲ってしまう。
「ダメだキャリーバッグが要る!」
キャリーバッグは玄関に近い部屋に置いてあるはずが
廊下を隔てるドアが倒れて前を塞ぎ進めない。

怯んだとき、今思えば奇跡のような事が起きた。
扉が外れたクロークから散乱した物の1つが足元に触る・・・、懐中電灯だ。

怒り狂ったように鳴り響く非常ベルの音が焦りを恐怖に代える。
落ち着いて落ち着いて、と自分に言い聞かし
奪うようにしてキャリーバッグを手にしてからは手段を選ばず、
彼女の長毛を掴み力ずくに引き寄せ、すかさずバッグに押し込めた 。

壊れた街

2004-10-20 | 心のお天気
外は相当な激しさではないだろうか、
天窓に打ち付ける風雨の音でアタシの眠りは小休止された。
一昨日の午後は微震であるも地震による揺れでアタシは目を覚ましている。

風物詩とは最早いえないような度重なる気象の荒れと
頻繁に見られる大地の揺れに誰もが危惧感を胸にしているのだと思う。
過去記事でも話したアタシの先輩猫である「姫ちゃん」は
主との2人暮らしの中で震災を経験している。
当時の住まいは震度7の揺れが走った地域である、
嵐の音を聞きながら時計を巻き戻すように主の記憶を辿ってみよう。

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新年の装いがまだ所々見られる街の中
明日から始まる平常に備えて主は帰路を急いでいた。
前触れとも思わせる揺れがあったというが移動中の主は覚えにないらしい。
やけに空が低く重く感じたのは、夕刻と舞い始めた雪のせいだろうと
まさかの思いは微塵にもなかったという。

アタシと違って姫ちゃんは主と一緒に寝る習慣がない。
彼女がリビングのソファーを今夜のベッドに決めたことを確認し
扉を隔てた寝室で主は眠りについたという。

表現難い不気味な轟音に意識が覚めた直後のことだった。
キングサイズのベッドごと寝室から4枚扉を破ってリビングまで飛んだ。
揺れではなく壊れようとしているといった方が的確かもしれない。
破壊を思わせる音が耳に激しく、その記憶は今も消えることがない。
自分だけが単体で壊れようとしているのか、
すべてが破壊されようとしているのか正常に判断できず、
襲い掛かるその正体が解らなくも、このままでは倒壊してしまうと確信した。

時間の経過は定かでない、
体の震えと、落ちてやまない破片の音が響き
リビングの大窓の割れが埃の匂いがする冷気を運んでカーテンが揺れている。
額から流れる冷たさを主は冷気のせいだと思っていた 。