政治家「又市征治」という男

元政治記者の私が最も興味を持った政治家、それが又市征治だった。その知られざる人物像に迫る。

1万人集会

2007年06月23日 | Weblog
 30歳で自治労富山県本部の書記長に就任した又市征治には、一つの計画があった。
 又市は「1万人集会」をやろうと言い出した。富山県庁の前に、県内全域から組合員1万人を集めようと考えていたのだ。

 これは決して突飛な思いつきなどではなかった。
 警察の介入による弾圧、不当逮捕などを経験し、跳ね返してきた又市だったが、県側の圧力を前に誰も証言台に立とうとしなかったことを見ても、やはり一人ひとりの人間には弱さがあることを痛感していた。
 一人一人の強さには限界がある。だからこそ団結を固めなければならないと又市は確信していた。

 組合員の誰かに対して、もし不当な行為が行われれば、これだけの人間が一緒に立ち上がるのだということを組合員に伝えたかった。そして、相手にもそれが伝われば、不当な行為を未然に防ぐことできる。結果として組合員を守ることにつながるはずである。
 
 最初は又市の発案を誰もが無理だと言った。1万人を集めることがどれほど困難か、そんなことは言われなくても分かっていた。それでも又市は主張を曲げなかった。

 「無理かどうかはやってみなければ分からないし、それを達成するだけの組織と運動を作らなければ、本当に仲間を守ることはできない。」

 又市は全県をまわって集会の意義を訴え、粘り強く話し合った。何度も何度も話し合った。
 その行動と熱意に、周囲の雰囲気も少しずつ変わっていった。

 集会当日、富山県庁前の公園は、続々と集まってきた1万人の組合員で埋めつくされた。
 県の上層部はもちろん各市町村長たちも度肝を抜かれ、組合員もまたその数の多さに驚いたという。それだけの仲間の存在を知った一人ひとりが、どれほど心強く思っただろうか。集会は大成功だった。
 この1万人集会は会場を体育館に移しながらも、30年以上経つ今も続けられている。
(敬称略)

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