ミセスローゼンの道後日記

路地に降る師走の星の光かな


大月駅。
ニックの弟子の理さんのメンデルスゾーントリオを聞きに行った。ニックも同じ曲を弾いたばかり、名残の気分もあり、今年最後の演奏会でもあり、久々に好きな友人達に会えるのも嬉しくて、いそいそ出かけた。豊洲という街は初めてのはずが、デジャブみたいに見覚えがある。コンサートホールにも見覚えがある。だがやはり初めてだ。メンデルスゾーンも楽しんだが、最初のシューベルト二曲をしみじみと懐かしく聞いた。なぜしみじみするのか、師走のせいか。終演後ニックの話を聞いてそのわけがわかった。シューベルトには偉大な室内楽の傑作があり、未完を含む膨大なスケッチ群がある。名曲とスケッチの中間に位置する楽曲に触れるとき、シューベルトの歌の断片が宝石のように散りばめられているのに気づく。旧友に巡り会ったみたいに嬉しく懐かしいのはそのせいなのだ。シューベルトが傑作に辿り着くまでにどれだけの努力と工夫をしたか、その旅路を一緒に辿ることができるからなのだ。
楽屋でニックが理さんに、「メンデルスゾーン冒頭の、ピアティゴルスキーフィンガリングよくやった。」と褒めていた。師から受け継いだ物を弟子に渡す、その姿勢のブレないニックって本当にいいチェリストでいい先生だと思う。
帰り道、大月の駅裏の路地を安い駐車場目指して歩きながら、ああ浄夜だ、と思った。
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