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ミセスローゼンの道後日記

卯の花腐し溜息は伝染す

ニックの兄弟子テリーから依頼があり、過去の演奏ビデオを送ることになりました。テリーはピアティゴルスキー先生の伝記本を書き、弟子達の足跡もまとめているそうです。パソコンの中と戸棚をかき回して、これぞと言う一曲を探していると、お宝映像もちょいちょい出てくるので目が離せません。例えばエルガーの『ため息(Sospiri)』のチェロ版を初めて聞きました。こんな美しい物をまとめて残せてゆけたら素晴らしいと思います。


「ジェリーの話」
ニックの旧友でピアニストのジェリーは、ステージ上で共演者の死に二度立ち会ったそうです。一人はヴァイオリニスト、もう一人は有名なチェリストのヨーゼフ・シュースターです。彼は作曲家グラズノフの弟子で、ピアティゴルスキーの後ベルリンフィルの首席チェリストになり、ニューヨークに移住してからはニューヨークフィルの首席チェロを務めながら、ソリストとしても活躍しました。ニックとジェリーが十代の頃、初めてベートーヴェントリプルを共演したコンサートを偶然シュースターが聞き、その直後、流感に掛かりベートーヴェントリプルを弾けなくなったシュースターの知人のチェリストの代役としてニックを大抜擢してくれたそうです。時は流れ、シュースターがジェリーのピアノ伴奏でアルペジオーネソナタを演奏していた時、曲の途中でシュースターはゆっくりとチェロを脇へ置き、その側に静かに頽れて亡くなりました。その話を聞いたピアティゴルスキー先生は、自分もそうなりたいものだとマジで言われ、最後まで癌の痛みを堪えて演奏しておられましたが、ステージで亡くなる事はありませんでした。ニックはサントリホールでサンサーンスのチェロ協奏曲の途中心筋梗塞を起こしましたが、”幸運にも“サバイブしました。ニックはいつも、「“不運にも”ステージで死に損ねたよ。」と話します。師匠が師匠なら弟子も弟子です。
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