
サンチアゴから乗り合い自動車で、ポルティーリョ山へ到着した。私は飛行機の中で風邪を貰ったようで喉がひりひりする。あちらの風邪薬は強くて一日中ぼうっとする。おかげで車酔いも知らず、ガードレールの無い凍結した崖っぷちの道をトラックやバスとすれ違うシーンも見ずに済んだ。ニックは車内のアメリカ人とずっと喋っていた。アンデス山脈越えの途中、道路封鎖で止められた。今氷を融かす塩まきトラックが作業しているから、とのことで、封鎖地点の手前にあるコカコーラの旗が寒そうに立っている食堂へぞろぞろトイレを借りに歩く。
一人200ペソ(30円)払ってトイレに入る。冷たい便座。硬い紙。ちょうど昼時で、食堂の主人が鶏を焼いたのを見せてサンドイッチを食べろと言う。が、私達はポルティーリョのランチが楽しみなので我慢する。バナナとクッキーを買い、車に戻り、みんなで分けて食べる。
ニックが、あの食堂はいいよね。あそこ目当てに来る客はいないだろうが、ともかく客は来るんだから、と言うとみな笑う。スペイン語しか喋らないと思ってた人も笑うから、英語わかってたんだとわかる。
一時間半待って車の列が走り出す。ポルティーリョの黄色い建物が見え出した所でまた止まる。今度はチェーンを巻くのだ。さっき止まった時に巻いとけよ、と日本人なら思うだろうが、段取りしないのがスパニッシュの人のいいとこでもある。ようやくホテルポルティーリョについたのは、朝九時にサンチアゴを出てから五時間後だった。
フロントはチェックインの人でごった返している。五年前に来た時と同じ光景。ホテル犬のラドカがロビーの真ん中にどでんと寝てるのも同じ。