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ミセスローゼンの道後日記

赤子蹴る紅葉かつ散る赤子蹴る

忘れもしないあの午後は風のある晴天で、笹塚の社宅の近所にあった代々木上原の小公園の砂場で遊んでいた。銀杏や楓の葉っぱが黄や赤の紅葉のまま、砂の上に散っていた。朝から元気にお腹を蹴っていたので、まだまだ生まれないだろうとのんびりしていたら、突然陣痛が始まった。長女は滑り台を始めてしまった。最低20回くらい滑るまでは終わらない。その後ぶらんこ、シーソー、と乗り終わるまで帰れない。そばに居たママ友に、陣痛始まっちゃったけど、まだお腹を蹴ってるからいいよね? と聞いたら、「二回目はあっという間に降りてくるよ。」と脅かされ、ぐずる長女をごまかして連れ帰り、ランチを食べさせ、昼寝させ、シャワーを浴びて入院しようと焦れば焦るほど、長女はいつも以上にゆっくりと食べ、何冊も何冊も絵本を読んでくれとせがむ。うーんうーんと声が出るくらい痛くなってもまだ寝ないので仕方なくバーバに後を任せ、長女の泣声を背に病院へ向かった。初産のママを三人抜きして、あっという間のお産。産まれる瞬間(私が)呼吸困難になりヤバかったが、ともあれ無事産まれた。2時間の安静後、自力で階段を歩いて降り、ロビーの自販機で缶コーヒーを買い、腰に手を当てて一気飲みした。ぷっはー。あんな美味しい缶コーヒーは、あれ以来飲んだことがない。今になって思えば、あの激しい蹴りは、生まれるよ、生まれるよ、と知らせていたのかもしれない。

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