
ここまで書いて、PCのバッテリーが切れた。充電しようと思ったら、アウトレットの穴が違った。北米の穴はロボットの鼻で、南米の穴は豚の鼻みたい。てなことをもし、楼前先生に言うと、「なぜNYでアダプターを買ってこなかったのですか。ぼくのスキーホリデイをそんなくだらんことで台無しにしないで」なんてってクサクサするから、そしたら私も「あんたは毎日がホリデイやろ、あたしは毎日肉体労働して、これが本当の今年の夏最後のホリデイなんだからね」「ぼくだって毎日チェロの練習してんだよ、怠け者なんかじゃないぞ」なんてまた喧嘩になるから、もう言わないで、チリワインのティスティングへ行く。
チリワインがなぜフレンチワインに匹敵するほど美味しいか、雨の降り方、流れ方とか、夜と昼の温度差とか、放牧の動物を使った自然肥料とか、まあそういうことを、チリワインのファウンダーのひ孫という身重の美人が長々と喋る。楼前先生は三つ目のグラスくらいから酔っ払って、派手にデキャンタして見せたり、グラスハープでモーツァルト弾いたり、それが妙にうまくて拍手が起きたり、「アルゴアみたいなことばっか言ってないで、あんたも一口くらいお相伴したらどう? おなかの子はワインカンパニーの跡継ぎなんだろ?」なんてってセクハラまがいのこと言って笑いをとったり、目立ちまくる。
最後の質問コーナーで三人くらい、「この赤ワインにはどんな料理が合うのですか?」なんて月並な質問が続き、みんながまた退屈したところで、先生がまた手を上げた。
全員がはらはらした。やな顔する人もいた。
「心配しないで」と小声で言って先生はしゃんと立ち、「今日のワインはどれも美しかったけど、特に最初に味わったソーヴィ二ヨンブランクはポルティーリョの雪くらい素晴らしかったよ。どうしたらあんなワインが作れるのか、最初からすっかりもう一度聞きたいくらいですよ」なんてって、満場の拍手と歓声を浴びる。
終わって先生は、苦笑してるひ孫娘のところへすり寄ってって謝ったりちやほやしたり、彼女のきれいな首にキスしたり、けっきょく彼女から「盛り上げてくれてありがとう」と言われワインをもらってた。あきれるるくらい酒と人生を楽しむ男だよなあ。
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