ボリショイ劇場 & シドニ-オペラハウス観劇記

元モスクワ、現在シドニ-赴任の元商社マンによるボリショイ劇場やシドニ-オペラハウスなどのバレエ、オペラ観劇記です

白鳥の湖

2008年07月02日 | Weblog

「神戸のUさん」より6月17日の新国立の公演の寄稿頂きました。出待ちでがんばって御撮り頂いた写真です。

白鳥の湖」は、ウヴァーロフ&ルンキナ組で観た事がなかったので、貴重な機会となりました。
男性ダンサーの活躍する場が少ないバージョンで、かつ、舞台の奥行きのなさから、ウヴァーロフの良さが発揮できていなかったような、物足りなさを感じましたが、一幕目など、腕や手を動かすだけでもチャイコフスキーの音楽を優美に表現できるあたりは、やはりロシアのノーブル系ダンサーだなと感じました。
ルンキナの白鳥は、魂を抜き取られたように、人間的な感情を完全に打ち消しており、独特の解釈だなと思いました。最後に悪と戦う部分では、男性が悪を打ち破るとか、2人の愛が悪を負かすというよりは、「生きたい、幸せになりたい」と願う女性(ルンキナ)の意志で打ち勝てたようで、この辺りの演出&表現もこれまで観て来た白鳥とは違って新鮮でした。悪に打ち勝って初めて、ルンキナの演じる白鳥にも温かいものが流れ、表情も人間らしくなったのが印象的でした。
 
出待ちは一時間半以上・・・しかも、出てくるであろう場所も2転3転し、もう諦めかけていたところでした。フェスティバル・ホールは改装予定の為、併設しているホテルも既に封鎖されており、夜になると建物全体が殺風景で寂しい感じでした。結局、主役2人の登場は劇場の正面口でした。明るく写真も取れたので、待った甲斐はありましたが・・・ お二人とも、とても親切にサインや写真に応じておられました。お世話する日本の方に連れられて、徒歩で川の反対側にあるホテルへ帰って行かれました。

出待ちの動画です。

swan0617



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4 コメント

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お疲れ様です (Nana)
2008-07-02 21:05:51
U様。

観劇記、大変興味深く拝見させて頂きました。

■あの日、大阪は予報気温30度。出待ちお疲れ様でした。あの前後、秋葉原と大阪駅で通り魔事件があり、物騒で、私はそそくさと観劇後帰りました。あの中、U様ほか出待ちの方々には、無事に主役二人の親切な対応に出会われ、何よりでした。

☆ウヴァーロフさん、ちょっとセクシーに撮れてますね。

【大阪公演】
私も似たような感想を持ちました。

私は、寄稿者様より席がかなり後ろだったかもしれません。ホールの後方席から、裸眼で全体を俯瞰するように見て、次に双眼鏡で、表情の演技、全身の動きやアダージョの二人の様子も見ます。(見こぼしもあり。)

ウヴァーロフは表現が大きく、全身の表情もあるので、裸眼で後方席でぼーっとしていても、王子ジークフリートの思いや脚本の内容が、伝わってきます。

「ルンキナ」は、王子ほどアピールや磁力がないので、こちらから、見よう、見ようという意識で見てあげないといけない感じで。ルンキナを見ようとする意識で見るか、ぼーっとしてるかで見え方が違うプリマ。席の位置も大いに関係あり、やはり舞台に近い方が、演技の細部まで自然に見えるような。

私は最終シーンのルンキナの解釈については、全然判りませんでした。が、息が合ってお似合いだった(ウヴァーロフは他ともそうだけど)のだけ印象にあります。微笑ましいハッピーエンドに見えました。

というわけで、以下、私も見こぼしある中で、私に見えた雑駁主観的な印象です。

○もっとも感銘を受けたのは、1幕幕切れのウヴァーロフのソロ。高まるチャイコの音楽と一体化し、憂愁の貴公子そのものの表現を見せてくれました。
東京は指揮が違うので、そういうのはなかったです。

○新国でのウヴァロフは、グリゴロヴィチ世界の王子と違い、スケールの大きい踊りを堪能させる版でも舞台(狭さ)でもないので、切り替えて、①舞台で立って歩くことで見せる。②芝居で見せる。③ステップワークで見せる。のどれかを使う気がします。今回③はなし。よく新国の脇役と、即興も含め、芝居してる模様。ウヴァも新国側も、楽しんでやってる感じが素敵です。

○この日、ロビーで聞こえた感想
ウヴァーロフ←「王子があんなにハンサムだと・・云々」→つまり、ご当地での王子役は、あの位の容姿の人が珍しいということか?
ルンキナ←「うん、まあ・・可愛らしい感じ、かな」
版ついて→改変でプロローグが入ったことについて
「あれは良い、気に入った」「え~?なんか変だった」と、お説ごもっともな議論。

○プロローグ○
この版は、冒頭にブルメイステル版のパクリとも言われてるシーンが入る。女性たちが針仕事をしていると、窓の外に悪魔。で、悪魔が羽を広げ、お姫様は白鳥に変えられてしまう。

このシーンのルンキナの芝居だけは悪くなかった。が、白鳥で登場して以来、全体にそっけなく、訴求力が弱く、それが「解釈」なのか演技的実力なのかさっ
ぱりわからなかった。

○第一幕 
王子、王妃、道化、王子の友人、家庭教師ら。王子と新国立脇役陣が踊り、芝居で楽しませる。ウヴァーロフ、時々芝居をするので、つい目がいく。王子がどんな人かよくわかる。道化の八旛さん、ジャンプが素敵!花は赤とかいてしまいましたが、白でした。友人トレウバエフ拍手、やや大きめ。

○第二幕
ルンキナ:オデット登場。か細く長い手足。よく訓練の行き渡った良い体で出てきた。踊りは非凡というほどでなくても、堅実。だが、表現が・・・ない。

ルンキナは、内に沈静し、師に教わった通りのクラシックの踊りを、きちんと踊ろうとしているように、私には見えた。全身の筋力を程よく均等に使った、「形」だけなら、個人的には好感の持てる踊り。クラシックバレエは難しい。ルンキナは、その良い体で、クラシックのパを正確に踊ろうとしている。今の彼女は、それで精一杯なのではなかろうか(?)というのが私見。

(或いは寄稿者さまの示唆のように、それが解釈?
ああいう踊り方をマクシモアから教えられた可能性もゼロではないが。マクシモアは、白鳥レパートリーがなかったはず。この点が気になる)

クラシックを良く踊ることを優先したルンキナの踊りに欠けていたもの。
①演技
②王子役との交流。アダージョで観客が引いていて焦った。
③音楽との一体感(これはパリオペラ座ダンサーも一部にも感じるけど。パリオペは、あれが舞踊スタイルなのかもしれないけど)
④コールドとの一体感。

つまり、1点に集中していて他までなかなか手がまわらないのでは?と。

王子役の熟練者、ウヴァーロフは、このルンキナの足りない部分を、観客がそれと気づかない所も含め、よく補完し、ルンキナ日本公演史上最良の成功へと彼女を導いた。ウヴァーロフは、とにかく良く白鳥の湖を理解していると感心。

ルンキナさんは、見かけは女の子らしい。が、要は、「愛嬌」が足りない。ウヴァーロフは、ザハロワと踊ると男と女の雰囲気に時々なる。が、体ひとつ小さいルンキナとは、少し年齢差のある男女の、男性が女の子を可愛いと思ってそうな関係性に(ルンキナをあまりUPで見なければ)見える。

白鳥姫と王子の出会いでは、ルンキナが肩透かしだったが、あまり笑わない女の子を好きな男性もいるし、とりあえず、二人は恋に落ちたのねと思って見る。

ルンキナは表情に乏しいが、ウヴァーロフが王子の心になって舞台の上でルンキナを見ると、父性本能を掻き立てられるのか(?)情があり、包容力のある王子に見えた。2幕湖のほとりのグランアダージョの途中で、ウヴァロフさんのお顔、表情が「好きな女の子にメロメロ」っぽくなったりして、楽しい。

(ザハロワの時とは、このメロメロはなかった。ザハロワのクールさにあわせてるのか?。
ウヴァロフのあのメロメロっとなるのは、芝居でもあるけど、ご本人の地も、あんな感じはあると思ってます。スタープリマ相手だと、あまり出なくてつまらないんですが。情熱的な演技は、昔は得意な人でした。)

2幕、終わり、ウヴァーロフがルンキナをリフトし,群舞が囲む所で、客席から大きな拍手で盛り上がる。ブラボーの代わりにピューと口笛が。

そして二人の別れ。トゥで立ち、去ってゆく姫。片膝ついて腕を差し伸べる王子。その腕が去ってゆこうとする姫の腕を掴む。「行かないで」と言っている風。

(こういう時、手で手を持つんじゃなくて、ウヴァの手はルンキナの肘の辺りを持って、二人の腕と手が重なるようにやるのですが、こういうのがノーブルな中にも情の濃そうな演技するな~と、私的には思います。ザハロワとのライモンダでもやってましたが、クールなザハロワに、ウヴァのこの芝居は効かないようで、気持ち的に肩透かし食ってました。ルンキナは素直に受けて、腕握られた間、ポアントキープしてました。芝居の段取りは東京のザハロワもほぼ同じ。でも二人の雰囲気が変わりますね)

○第3幕
ルンキナのオディルは、オデットを見た後だと、まだ表情がある感じ。もっとオディルが得意なプリマと比べると、物足りないが。

ルンキナ、ウヴァーロフの衣装は「お揃い」で。上が黒に銀糸、下が白タイツ。ルンキナはザハロワより目立たないので、王子とお揃いで、息の合った所を衣装で見せられたのは良。

(東京では、ザハロワのオディールが黒で邪悪の色。
ウヴァロフが白、で王子の純粋さを表し、これもこの二人に合ってて良。)

当然、二人ともヴァリはボリショイ版でなく、新国版(つまりマリインスキーのと同じ)を、ちゃんと踊ってました。通常慣れた版ではないはずだけど、OK.
ここまで手抜きなく踊ったルンキナは、ここではじめて「あれ?」と思うこともありましたが、全幕ものは体力がいるのでしょう。

ウヴァーロフ、いつもの版と違い、これはヴァリの中間の拍手が本当に入れにくい版ですね。

ルンキナ32回転は、前半にダブルを2回か4回か(失念)入り。全身のコントロール安定。

ルンキナのは、前半定位置、後半でだんだん前に出てくる、というフェッテ。こういう形はこれでいいのだと聞いた事あり。ほんとかどうか知りませんが。

あと、名手ウヴァがついて、アダージョでのバランスは見事に決めて、good。
ここでもやっぱり32回転とリフトで盛り上がり。

○第④幕

ルンキナの白鳥姫、なぜかあっさり王子を許す。いくらなんでもあっさり過ぎて何もない。ウヴァ王子だから?演技力不足?何も考えてない?

許したけど二人には絶望的状況が。(ここから先だけ、寄稿者さまと私で、見てる所が違ったようです)
ルンキナは、頭と腕を、ウヴァロフの胸の辺りに寄り添わせ、「私たち、もうだめよ」といった雰囲気。ウヴァロフはそんなルンキナをそっと優しく見下ろし、陰のある雰囲気。

ウヴァーロフの側は、ルンキナ相手で台本生かした良い演技。
彼女を肩に担ぎ、そして体正面側に両腕で彼女の体を持ち変える振りの所で(この版特有)、

青年がか細い少女を愛し、絶望的な状況から、愛から力を得て、踏みこたえて、その力で悪魔に向かっていく、そういう感じは、はっきり見えました。ちょっと感動してしまいました。

そして舞台中央の奥で、のたうつ悪魔に向かって、白鳥たち、姫、王子が皆いっせいに斜め横後ろ向きでポーズをとり、両腕をさっと払うように斜め上に上げた時、一瞬の美しさ。

主役ダンサーの素養に、「群舞を率いる」「舞台を統合する」というのがありますが、ウヴァーロフは、ここで美しい白鳥たちと、音楽と一体となって、絵になるシーンを見せました。皆で気を合わせてやるのだと思うのですが、男性性を残しながら、女性的優美さがあるので、バレエブランに合います。

勧善懲悪といえばそうなんですが。

とりあえず、ルンキナはウヴァロフより小さくて、二人並ぶと、か弱い女の子に見えるので、ウヴァーロフが情や包容力を見せやすいペアという所でしょうか。

この終幕は、初演のザハロワ、マトヴィだと「最終兵器ザハロワ」とか言われて(王子が姫を担いで悪魔に向かっていって、悪魔がそれだけで滅ぶ)荒唐無稽に見えたのが、なぜかウヴァーロフが入ると、素直に見れました。

「ウヴァ大好きなルンキナ」は、ウヴァーロフと組んで、彼女の日本公演史上、最良の踊りになり、いつもよりお客さんの拍手も大きいので、当然ながら、ニコニコでした。

素直に感動しました。が、余談ですが、終わって帰りの電車の中で、「しかし、あんなのあり?」と現実的に。

ルンキナの白鳥。ハンサムで優しい理想の王子様が現れて、何もしなくても愛してくれて、悪魔と戦ってくれて、ハッピーエンド。

ルンキナが表現が乏しく、ウヴァーロフが遠めにも包容力や情を身体から滲ませて踊るので、何か遠くから見ていると、乙女が青年に一方的に愛されてる関係に見えてしまい、フクザツ。

「こんなに何も乙女が努力せず、勝利が手に入るストーリーは、教育上NGだ~、努力なくして愛の成就なし!」と思うのは、私だけ?

ルンキナは、守ってあげたくなるような、可愛さが、少し弱い気がしました。出待ちの方が、舞台より可愛いです。他の作品で見ないと、判断しづらいプリマです。マクシモアの得意演目で見た方がいいのかも。ウヴァーロフは、アントニチェワと見てみたいです。

長くてすみません。
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いつもども (管理人)
2008-07-04 04:02:48
Nanaさん
何時も寄稿ありがとうございます。
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それぞれの白鳥 (Nana)
2008-07-06 03:32:29
管理人様。どうもお手数かけました。

↑この観劇記と写真、ひさびさに「ボリショイ劇場観劇記」にふさわしい寄稿があって良かったですね。

ルンキナの師マクシーモワの言葉に「観客の心に届いて、はじめてバレエは芸術になる」というのがありました。

それになぞらえていえば、この寄稿者様は「ルンキナの表現に出会えた」、そして私は、それに出会えなかった、ということになるのでしょう。(それはそれで、いいことなんですが)

最終場、ヒロインが「生きたい、幸せになりたい、と願った」その意志で勝てた、と言うくだり、私はそれをごっそり見こぼしたかも、と思いましたが。

ウィリアム・フォーサイスのバレエの中で、「私達は世界の、ほんの一部としかかかわることができない」という考え方が出てきたのを、思い出しました。

☆東京公演は、新国HPお客様の声欄に、興味深い公演感想がでていますので、ご参考まで。
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いつもども (管理人)
2008-07-07 00:02:49
Nanaさん
何時も如何も貴重な情報ありがとうございます。
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