地理総合の研究 付2018年センター地理AB本試・追試解説 

「地理講義」の続き。「地理総合」に「2018年センター試験地理AB本試・追試の問題と解答解説」を追加。

24. 高知県のなす 地理総合

2019-03-12 17:28:50 | 地理講義

なす栽培は海岸砂丘地帯から
大正時代、なす栽培は太平洋に面した貧しい砂丘地帯で始まった。生産農家は利益を少しでも大きくするために、園芸組合を組織し、生産・出荷の共同化を進めてきた。戦前、園芸組合連合会によって高知県全体の出荷体制が一元管理された。園芸組合連合会には、無条件分荷配給権が与えられた。傘下の園芸組合員は産地間競争をせず、特定取引業者への系統出荷により、有利な生産体を維持できた。なす栽培は高知県全体に広がった。

農協園芸部
1970年、県下各地にあった園芸組合は農協に吸収され、農協園芸部となった。各農家は高知県園芸農業協同組合連合会の計画によってなすを栽培出荷した。大型ビニールハウスで育てられるナスは、害虫駆除に天敵昆虫タバコカスミカメを利用する。また、交配にはミツバチを飼育利用する。
1978年以降、高知県のなす生産は、全国第1位を独走している。第2位は熊本県、第3位は群馬県である。
形の上では生産農家が農協園芸部を組織し、農協の調整にしたがって生産出荷を行っている。集荷・出荷場は農協が保有し、出荷先は古くからの取引先に限定している。しかし、従来の販売系統以外に高値で出荷したい農家が、独占禁止法による裁判をおこして2018年に勝訴、園芸部(生産農家)と農協の密接な連携にヒビが入った。

高知県の強みと弱み
高知県下17農協が農家(園芸部)4,000戸に、販売・流通・資金・物流・情報を提供する。また、農家の利用する集荷場・出荷場は農協が保有する。農家の栽培したなすは農協(高知園芸連)の経由で出荷される。農協は手数料を徴収する一方、利益の一括計算と分配を行う。農協の出荷先は古くからの取引先3社に限定されている。農協(高知園芸連)と農家(園芸部)は一体となってなすの全国販売量を増やしてきたが、これが農家の自由販売を制限し、独占禁止法違反と認定されたのである。今後は、農協となす生産農家の連係が崩れ、高知県のなすの競争力の低下につながる恐れがある。なす栽培の資金と技術のある農家は、農協外との取引を増やして、利益を増やしていくであろう。

価格の季節変動

夏はなすの価格は安い。冬は端境期であり価格は高い。高知県のなすは価格の高い時期に出荷される。価格の安い時期は、播種・定植などの準備作業時期である。

東京・大阪の大市場における高知県産なすの占める割合は高い。夏には価格が安いため、大都市近郊の生産地域が高い割合を占める。

 

農家は農協の共同選果場を利用する。独占禁止法裁判では、農協指定外業者に出荷する農家に共同選果場を利用させないことも問題になった。
 

 


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