今夏で開催3年めのデジタル映画フェスティバル
「SKIPシティ 国際Dシネマ映画祭2006(埼玉)」。
今年はアルゼンチンやチリといった中南米からの
参加もあってわがメルマガ「アルゼンチンばか」
で紹介し読者に招待券プレゼントもしたけれど、
当のタニィは残念ながら見に行く機会がなかった。
ところが先日新宿歌舞伎町の映画館にて開催の
「東京国際シネシティ フェスティバル2006」で
SKIPシティ映画祭から
チリが舞台の映画「プレイ」
(フランス・アルゼンチン・チリ)が出品される情報を入手。
丁度東京へ行く機会だったので11/24観ることにした。
ストーリーはチリの首都サンティアゴの病気でほぼ寝た
きりドイツ人系老人宅で住み込み介護で働くチリ南部、
先住民系独身の若い女性クリスティーナが、とあるきっ
かけでサンティアゴの高級住宅街ラス・コンデス(Las
Condes地区)に居を構えつつも妻に離婚を言い渡された
傷心の男性トリスタンのブリーフケースをゴミ箱から
入手し、彼の持ち物を拾ったことでストーカーし始める
話。
チリは二度旅行し数日間滞在したことがあるので馴染みが
あるが、映像の美しさ通りの緑多くて透明感ある空の高い街。
離婚を言い渡す妻も傷心の男性トリスタンもチリのイイトコ
の出身、という感じでリッチな生活。
目の不自由なトリスタンのママも典型的な何不自由ないお金
持ちの典型で、着てるガウンや室内装飾がまるで中国なんだか
日本なんだか?不思議オリエンタル趣味で、アルゼンチン人の
お金持ちと共通の感覚で面白かった。
ママのヒモ男、似非?マジシャンはアルゼンチン人っぽいブエ
ノス訛りで濃くって雰囲気がまるでアルゼンチンで一世を風靡
した後ナゾの交通事故死したコルドバ人歌手
ロドリゴに似てて
男性フェロモンむんむん・・・。一方、トリスタンは植物系低
血圧男でいじめられっ子、好対照。
クリスティーナは日々殆ど会話の出来ない老人を介護する毎日、
家族や親戚も皆南部に居るのでさびしいらしく、近所の公園掃除
をするチリ近郊田舎出の男性にモーションをかけたりするが、
一番の興味はトリスタンの事。
アルゼンチンの音楽家のマリアーナ・バラフ似で鋭い瞳が印象的な
美人の主人公クリスティーナの黒く長い髪、大きめの顔に首の短い
ずんぐりした風貌がどことなく東洋的でちょっと普通の西洋系白人女性
とは違うな、と思っていたらほどなくして実家に電話するシーンでチリ
南部の恐らく
マプーチェの言葉をスペイン語に交え話していた。
もっと純粋なマプーチェだと語る人々はもっと顔も大きくて、
エキゾチックだがクリスティーナにもその雰囲気があってちゃんと
考慮し主人公に選んでいるんだな、と思った。
会話中にはイトコや親戚を気遣うせりふもあってとてもラテン的。
日本と違って家族の単位が叔父叔母イトコ、、、と広いのが特徴。
(アルゼンチンも同じ、アルゼンチンの日系人とかも割とそう。)
都会に居る者がそれら全ての家族を養うという図式もよくある事。
日本の型遅れマシンが入ったゲームセンターや、こんなので大丈夫?
と心配になるようなレンガを積み重ね、コンクリートで安全面ゼロ
の高層ビル建築現場もとても南米らしい。
阪神大震災被災者のタニィが最初にブエノスアイレスで寒気がした
のもこういう建築現場を見た時だ。。。
結局このビル建築現場でも、お決まりの賃金値上げ要求労働者ストが
行われるも、値上げされるわけもなくあっさりと低賃金のまま、業務
再開してしまう。
また、鳥や獣市場(南米ではマスコッタと呼ばれるペットや家畜等
の市場)の奥にある場末の小汚いバールと年中ベロンベロンに酔っ払い
っぱなし?な感じの客達。下品でチープなイレズミでお互いの夫婦
愛を固く誓いあっているバールのおカミとダンナとかも全く映画の
中でのデフォルメなフィクションではなくて、実際あんな風景、
あんな店知ってる~って違和感なく思えるから笑えない…
愛すべき南米の姿。

主人公のクリスティーナとトリスタン
日本人にはきっと嫌悪感の「体臭においフェチ」、「自分の糞と
他人の糞究極の選択話」や「ナンセンス話」もラテン圏のChiste
=ジョークとあいまって、違和感なく納得できる。
(実際あっちの人すぐ臭いで物事判断するんですよねぇ~。やっぱ
狩猟系なんですかねぇ?日本は農耕民族なわけで。)
それにしても女性が男性をストーカーするってのはそんなに
珍しい感じではないですが、いつも思うけれど南米らしさを出すには
やっぱり、小難しいフランス映画っぽいエスプリと南米らしい?
経済不均衡とか、アブノーマルな世界が対外的に受けるのでしょうか?
音楽センスはかなりよかったし、音の使い方も効果的で印象的。
ある意味、アルゼンチン音響派っぽくもあるのは同じような感覚が
受けているのかな?チリは隣国でアルゼンチンからも多くのアー
ティストが公演に行っていることも関係しているか?と。
(ビオレータ・パラっぽい曲やチリ伝統民謡?ヘタうまおじさん
っぽい歌の方が結局気になりましたが。。。)
前で見ていたチリ人らしい6人組は完全に笑いのツボが日本人と違って
いてそれもある意味楽しめた。
…ともあれ、全体としてはかなりお気に入りの部類に入る不思議系
印象強しの映画です。
最後にチリ・サンティアゴの街並みと山々が夕日に暮れるシーンは
日本人ならきっとホッとする風景かも。ブエノスアイレスではこうは
行きません。広大なパンパのみで街を見下ろしたり山が遠くに広がる
なんて風景には市内では出遭えないから。