~ 我は 土岐何某と言い 日本無双の剛の者也 ~
『蒲生貞秀臣土岐元貞甲州猪鼻山魔王投倒図』
(がもうさだひで かしん ときもとさだ
こうしゅう いのはなやま まおう なげたおし の ず)
大蘇芳年筆
室町後期~戦国初期の武将・蒲生貞秀の家臣 土岐大四郎元貞は
甲州猪鼻山の魔王堂において、仁王の妖怪と仏陀に相撲を挑まれこれらを投げ倒した
老媼茶話(ろうおうさわ) 『猪鼻山天狗』
蒲生貞秀が魔所として知られた甲州・猪鼻山に陣を張った時の話である
昔、この山に棲みつき人を喰う大頭(たいず)魔王が
空海により巌窟に封じられ、魔王堂というものあると聞く
訪ねて行って帰ってきた者はいない。
誰かいないか、この山分け入り魔王堂を見届ける者は
この言葉に蒲生家無双の大力・土岐大四郎元貞が進み出て
「それがしが見届けまかり帰りもうすべし」と、白綾の鉢巻をし
黒腹の鎧を着て白柄の大長刀を杖に山中へ向かった。
ー 中略 -
魔王堂にたどり着くと門前に破れはてたる仁王門があり
2丈(約6m)ばかりから成る仁王が此門より戸を押開き
元貞の前に出て来て、目を見張り足を力強く踏みしめて
「いかに客人、角力(すもう)を一番取るべし。相手に立ちたまえへ」と云う
元貞は「望(のぞみ)ならば參らん」と甲の結を強く締め、鎧を揺り合わせ
くだんの仁王と四っ手に引っ組み捻じ合うが、元貞の力が勝り
仁王を小脇にかかえ強くしめて、橫ざまに投げ倒すと
元より年久しく風雨にされたる仁王なれば、五體ちりぢりに砕けたので
元貞は「これで懲りなん」と言うと一息ついた。
その後、阿弥陀仏とも闘い 長刀(なぎなた)の柄で仏を散々に打ち砕くと
その破片は数百万の蝶となり元貞に群がり、さすがの元貞もその場から逃げ出します。