オオカミになりたい(遺言)

ずっとそばにいるよ

見立多以尽 はんだんをしてもらいたい

2019-02-22 | 見立多以盡

月岡芳年が女性のしぐさを「~したい」と描いた美人画

見立多以尽(みたてたいづくし)より

『はんだんをしてもらいたい』

 

国立国会図書館デジタルコレクション

大蘇芳年筆 

 

詞書

大吉というは芸者の名に似て

半吉というは欝悶(じれったい)の大炉々(おおこんこん)

凶を以て吉に祈(のり)かえし 吉を凶となす判談(はんだん)は

御籤(みくじ)の数の百物語

暗鬼(あんき)を生(いだ)すも意(こころ)のまよい

癇気(かんき)を發(おこ)すは疑念(まわりぎ)から

真(まこと)の節操(みさお)正しくば

末の願いも家内とよばれ 這家(こち)の良人(だんな)と成田山

護摩もすらずに務むれば

御鬮(みくじ)の吉兆(よしあし)なんどに因(よら)んや。

轉々堂主人誌

 

暗鬼:<暗がりの中に見える鬼の意から>不安や妄想による恐れ

這家:この家

 

今回で「見立多以尽」 20作の完走です。ご訪問ありがとうございました。

 

 


見立多以尽 おしてもらいたい

2019-02-10 | 見立多以盡

月岡芳年が女性のしぐさを「~したい」と描いた美人画

見立多以尽(みたてたいづくし)より

『おしてもらいたい』

 

国立国会図書館デジタルコレクション

大蘇芳年筆 

 

詞書

積もるという字が癪の根檬(たね)と 古き俚謡(はうた)にならねども

酒宴の仕舞をお積りといい 酌と癪とは音(おん)通ずれば 

贔屓に招きまねかるる 座敷の数のつもりては

酌の手先を引きよせつ 煖(あたた)め過ぎて熱くなる

燗の加減も狐疑(まわりぎ)から 銚子のくるう對酌(さけごと)に

恥話が増長(こうじ)ていつとなく 欝悶(じれったい)よの青っきり

手酌は癪にいよいよ害なり

轉々堂主人録

 

癪(しゃく):胸や腹が急に痙攣を起こして痛むこと。さしこみ。 積(せき)ともいう

はうた(端唄): 江戸時代後期から幕末にかけて流行した当時の流行歌。

まわりぎ(回り気): 気を回して心配したり疑ったりすること。

青っ切り: 酒をなみなみとつぐこと また それをあおるように威勢よく飲むこと。

 

 

 


見立多以尽 はやく水をあげさせたい

2019-02-03 | 見立多以盡

月岡芳年が女性のしぐさを「~したい」と描いた美人画

見立多以尽(みたてたいづくし)より

『はやく水をあげさせたい』

国立国会図書館デジタルコレクション

大蘇芳年筆 

 

詞書

若木の花の盛の頃を 千代に八千代と目出たく祝い

手活(ていけ)の芲(はな)を身を引いた

跡へ継木の養い乙女 宵は待より弾(ひき)習わせ

踊る調子の身も軽き 蝶々髷から多(よく)うれて

更紗の紅の葩(はなびら)も およばぬほどの美貌(かおばせ)は

土地の自慢の花走雛妓(はやりっこ)

八重款冬(やまぶき)の色にそえ 欲には誰か華君(よいひと)に

枝をたわめて水揚をしてほしいとは 椿に縁あり

東京南茅場街住 轉々堂主人酔題

 

 

 


見立多以尽 さかりをおめにかけたい

2019-02-01 | 見立多以盡

月岡芳年が女性のしぐさを「~したい」と描いた美人画

見立多以尽(みたてたいづくし)より

『さかりをおめにかけたい』

国立国会図書館デジタルコレクション

大蘇芳年筆 

 

詞書

新年に入(いり)て語る黄鸝(うぐいす)は

赤阪の禁園(きんえん)に好音(こういん)を送りて

青山の花にあそび 溜池に住む はつ蛙(かわず)と 

ともに風流(みやび)の和歌友(わかなかま)

経よみ鳥のきょう九重に 匂いもふかき大君(おおぎみ)の

恵をたれか仰がざらん

轉々堂主人筆記

 

九重 : 宮中の意味で昔中国で王宮を九重の門で囲ったことから 

大君 : 貴族の長女の尊称

 

 

 


見立多以尽 洋行がしたい

2019-01-12 | 見立多以盡

月岡芳年が女性のしぐさを「~したい」と描いた美人画

見立多以尽(みたてたいづくし)より

『洋行がしたい』

 

国立国会図書館デジタルコレクション

大蘇芳年筆 

 

詞書

深窓に養われて 掌(たなごころ)の珠(たま)

挿(かざし)の花 と双親(ふたおや)の寵愛ふかく

令弱(おぼこ)と唱(とな)うる 婦女子の身にして

雷名を五大洲(ごだいしゅう)に轟かすものは 何ぞや

学問の功(いさおし)と 品行の正しきが故なり

好文木(こうぶんぎ)の香を慕ふ 野婦(やぶ)鶯も冬枯に 

スペルリングの笹なきから 雨雪の中を厭(いと)いなく 

勉め励めば来る春に 囀(さえづ)る声が千金の 

月給とりとよばるるも 聖経(きょう)読み鳥と尊(とうと)まるるも

唯(ただ)この学びの 一事にある而己(のみ)。

操觚者 轉々堂主人述

 

五大洲 : 地球上の五つの大陸

功 : 労力をつくして事をなしとげた結果

好文木 : 梅の異名  晋の武帝が学問に親しむと花が開き

         学問をやめると花が開かなかったという故事に由来する