オオカミになりたい(遺言)

ずっとそばにいるよ

新形三十六怪撰より 「鍾馗夢中捉鬼之図」

2018-07-30 | 新形三十六怪撰

~ 鍾馗が病を起す小鬼を退治する ~

『鍾馗夢中捉鬼之図』

(しょうき むちゅう そっきのず)

 

大蘇芳年筆

 

鍾馗(しょうき)は中国の民間伝承に伝わる道教系の神

唐の玄宗皇帝(685年〜762年)がマラリアにかかった時に見た夢の中の話です

 

小鬼が皇帝の玉笛や楊貴妃の紫香囊を盗もうとしているころに

どこからともなく大きな鬼が現れ小鬼を捉えて食べてしまう。

それで、お前は誰なのか?と玄宗皇帝が尋ねると

「自分は終南県出身の鍾馗(しょうき)、官吏になりたくて科挙を受験し

見事一番の成績だったのに人相が悪いからと落とされ

絶望し宮中で自害した。

そんな自分を手厚く葬ってくれた高祖李淵(りえん)の

その御恩に報いるためにこうしてやって来た」 と告げる。

 

夢から覚めた玄宗皇帝はすっかり病が治っていたので喜び

著名な画家 呉道玄に命じ、夢に見た鍾馗を描かせ

自分の命を救った鍾馗を神として祀ることにした。

 

 

 

 


新形三十六怪撰より 「貞信公夜宮中に怪を懼しむの図」

2018-07-29 | 新形三十六怪撰

~ おほやけの勅宣承りて、定に参る人 とらふるは何者ぞ ~

『貞信公夜宮中で怪を懼しむの図』

(ていしんこう よるきゅうちゅうに もののけをあやしむのず)

 

大蘇芳年筆

 

 貞信公は平安時代中期の政治家

藤原忠平(ふじわらのただひら)の諡(おくりな)

 

『大鏡 上』 太政大臣忠平 貞信公

忠平が醍醐天皇か朱雀天皇の頃、宣旨を受けそのことを執り行う為に

紫辰殿の御帳台の後ろを通ろうとすると、何者かがいるかのような気がし

太刀の石突をつかまれ、奇妙だと思い探ってみると

毛むくじゃらの手で、爪は長く、刀の刃のようだったので鬼だと気づく

忠平は恐ろしいと思うが、おじけついた様子をみせてはならないと思い

「天命の勅命をいただき、その公事の評定のために参る者をつかまえるとは何者だ

もしその手を離さぬと、身のためになるまいぞ」と言い

太刀を引き抜きその者の手を捕まえると、鬼はうろたえ手を離し

鬼門の丑寅(北東)の隅の方へ逃げて行ってしまった。

 

出典先:立命館大学アート・リサーチセンター