オオカミになりたい(遺言)

ずっとそばにいるよ

新形三十六怪撰より 「秋風のふくにつけてもあなめあなめをのこはいはしすゝき生けり 業平」

2018-11-12 | 新形三十六怪撰

~ 小町の髑髏 ~

『秋風のふくにつけても あなめあなめ をのこはいはし すゝき生けり 業平』

(あきかぜのふくにつけても あなめあなめ おのとはいわじ すすきおいけり なりひら)

 

 大蘇芳年筆


在原業平(ありわらのなりひら)は平安時代初期の貴族・歌人


『無名抄』 第81話【業平本鳥きらるる事】

第82話【をのとはいはじといふ事】

在原業平はまだ入廷していない二条后をさらっていくも

その兄たちに取り戻され、業平は髻を切られて邸に籠っていたが

同じ人前に出られないのなら『歌に詠まれた場所を見に行こう』 と思い

東のほうに出かけます。 奥州の八十島という所で宿をとった夜

野原から 「秋風の 吹くにつけても あなめあなめ」

(秋風が吹くたびに、ああ、目が痛い)

という歌の上の句だけを詠ずる声が聞こえてきました。

声の主を探し求めても、人の姿はなくただ眼窩から

薄(すすき)が伸び出た野晒しの髑髏が見つかっただけでした

どうやらこの薄が風になびく音が歌のように聞こえたらしく

怪しげなことと思った業平はあたりの人にこのことを尋ねました。

ある人は、かつて小野小町がこの国に下って終焉を迎えたというから

髑髏はきっと彼女のものであろうと語ります

そこで哀れに気の毒に感じた業平は、涙を抑えて下の句を付け

「小野とはいはじ 薄生ひけり」

(小野とは言うまい、ただ薄が生えているのだから) と

変わり果てた小町を慰め、弔いとしたと云う