月の照る夜に

★コメントは承認制です。承認後に表示されます。
☆転載・無断リンク、twitterへの転記はお止めください。 

「三人姉妹」~シアターコクーン

2015-02-28 11:59:53 | 舞台・芸能

前記事(こちら)の続き ~
2月26日(木)13時開演(1幕:1時間15分 休憩15分 2幕:1時間15 分)

チェーホフ四大戯曲に、シス・カンパニーと鬼才ケラリーノ・サンドロヴィッチが挑むシリーズ<KERA meets CHEKHOV>の第2弾「三人姉妹」。

あらすじ:「将軍」であった亡き父の最後の赴任地で暮らすオーリガ(余貴美子)、マーシャ(宮沢りえ)、 イリーナ(蒼井優)の三姉妹と、その兄弟アンドレイ(赤堀雅秋)らのプローゾロフ家の人々。 生まれ故郷モスクワから 遠く離れた田舎町での暮らしは、平穏ではあるものの退屈で寂しく、姉妹たちはモスクワでの日々を懐かしむばかり・・・。  彼女たちは、家族で唯一の男性であるアンドレイの出世を願い、いずれ皆でモスクワに帰ることを夢に見ている。 そんな単調な毎日だが、一家の屋敷には、軍医チェブトゥイキン(段田安則)、陸軍大尉のソリョーヌイ(今井朋彦)、陸軍 中尉のトゥーゼンバフ男爵(近藤公園)や町に駐屯する軍人たちがサロンのように頻繁に集い、姉妹たちのささやかな気晴らしの時間になっていた。そして、次女マーシャの夫・クルイギン(山崎一)、後にアンドレイの妻となるナターシャ(神野三鈴)らを含め、それぞれが心に満たされぬ想いを抱きながらも日々を生きているのだ。 そんな中、モスクワから陸軍中佐ヴェルシーニン(堤真一)が赴任してきた。 亡き父の部下でもあった中佐が運んできたモスクワの香りに、気持ちが華やぐ姉妹たち・・・。 そして、一家を巡る人間模様が動き出した。

というものですが・・。
キャストとポスターの雰囲気に惹かれ、観たいと思った時には、チケットがなかったんですが、何とかGETして(笑)
舞台は、興味あるものを観ているだけなので、いわゆる古典?みたいなものはあまり観たことはなく、
シェークスピアも最近だし、チェーホフは今回が初めてです。
だから、基礎知識もなく、他と比べることもできませんが・・。
難しい(笑)
面白かったんですよ、キャストの演技にも引き込まれたし。
でも、感想を書くのが難しい。なんか、もやもやっとしたものが残るし。
一応ネタバレありの感想です。

チェーホフの作品は、事件らしい事件が起こらず、淡々としたものみたいですが、
ケラさんの脚本・演出も、戯曲に忠実なもののようです。

終始、閉塞感が強くて・・。
三人姉妹の生活は、貴族ではないけれど召使いも使い、不自由感はない生活。
でも、田舎では、その教養を活かす場も、生きがいを感じることもできず、モスクワに帰ることばかり望んでいるけれど、
もしモスクワに帰れたとしても、決して望んだような生活は送れないんでしょうね。
誇り高いだけに生きにくい。
現実を見ることも、それを打破しようともせず、虚しさだけを胸にして生きていくのは、
あの時代だからということはなく、現代にも通じるものなのかな。
人生はなかなか思うようにならない、でも生きていかなくてはならない。
劇中の台詞で、100年後は・・というのが何度も出てくるけれど、
100年後、社会の仕組みは変わり、あの時代よりは自由な面もあるけれど、人の本質は変わっていないのかな~。
うまく言えないけど(^^;)、見ているうちに、ヴィスコンティの映画を思い出しました。
あちらはもっとキリキリとズシンとくる重みがあったけれど、
こちらは、静かで、でも、いいようのない虚しさを感じてしまう。

余さんは、舞台は初めて観ますが、序盤、目立たない感じのオーリガの、終盤での存在感は素晴らしかったです。
ナターシャに対して、もっと強く出ればいいのに、とイライラしながら見ていたのですが(笑)。

りえさんは、美しかった(笑) 1人結婚している次女ですが、終始黒のドレス姿というのにも何か意味があるんでしょうね。
現状への苛立ちからか、退廃的で少しひねくれても見えるけれど、静からの動がすごかった。
ヴェルシーニンへの愛、情熱的で、最後しがみつき、すがる姿ですら綺麗。
まあ、マーシャがそこまで愛したヴェルシーニンの魅力というのは、さっぱりわかりませんでしたが・・
(堤さんは軽妙で素敵でしたが)
かつて、モスクワの家に出入りして、モスクワという夢をまた感じることができた存在だったからなのかな~。
りえさんからのキスに、堤さんとの身長差は、女性側からキスしてもムリのないものなんだなあと、
その場面だけ、ふとそんなことを思いながら見てました(笑)

蒼井優ちゃんの舞台を観るのは2度目。前は5年前くらいの「楽屋~流れ去るものは、やがてなつかしき~」だったけれど、
そういえばあれもチェーホフの「カモメ」の楽屋が舞台だったなあ(笑)
可愛らしい!
最初は台詞回しがちょっと浮いてるように感じたけれど、それが三女イリーナの夢見る少女らしさでもあったのかな。
モスクワに戻ること、「労働」というものにただ憧れている少女から、現実に疲れ、諦めていく姿への対比というか・・。

1幕2幕3幕と、幕が進むごとに、特に何年後という説明はないけれど、姉妹が様々なものを失っていく喪失感が強くなる。
それを強く感じさせるのが、アンドレイと妻ナターシャの関係性。
どんどん強くなっていくナターシャ。演じる神野さん初めてですが、ほんと、憎たらしい(笑)
ある意味地に足がついているというか、人に遠慮することなく、その場での自分の居場所を広げ、生活力にあふれている。
人間的な美しさはないけれど、極端な描き方だけど、現実生活ではこういう人間のほうが強い。

最後の幕、白樺の林は美しかったけれど、姉妹の住む館の外観に驚く。
かなり古びていて、うら寂しい。
駐屯する部隊が町から移動することになり、皆去っていく。
ヴェルシーニンとマーシャの別離。マーシャの愁嘆はやっぱり彼への愛というより、
もう戻ることのない夢と希望への悲しみに思えたけれど・・。
それを見ながら、見ない夫が哀れ。
蚊帳の外にように、家の外を彷徨うアンドレイも哀れ。
イリーナには悲劇が訪れるけれど・・。
いい人で尊敬はしているけれど愛してはいない男爵との結婚を決め、
別の土地で新しい生活を始めようとした時、決闘によって男爵は死ぬ。
イリーナが自分のことを愛してはいないということを知っていた男爵、それを語るところは切なかった。
彼の死はイリーナには一つの通過点に過ぎなかったようにも感じる。

ラスト、モスクワは遠くなり、3姉妹は希望をなくしながらもそれぞれの道へ、
それでも生きていかなければならないと強く佇む姿は、少しでも明日へ向かう姿なのかな~。
私には、とても悲しい姿に見えました。
とても美しかったけれど・・。りえさんの目に光る涙も。

カーテンコールは1度。全員で。最後に3姉妹が残って、深々とお辞儀で幕が下り、客電がついて・・。
ずいぶんあっさりとしていて、ちょっとビックリ(笑)

衣装とか照明もきれいでした。
ただ、軍人さんたちが登場すると、その衣装は何だかアムロのあの姿に見えて・・(^^;)
あまりカッコいいとは思えなかった(笑)
堤さんは、「蜉蝣峠」で1度見たことが・・。段田さん、山崎さんは安定感(笑)
赤堀さんは、「怪奇恋愛作戦」で初めて知った感じ。
とても見ごたえのある舞台でしたが、私はこういう翻訳劇でないケラさんの舞台のほうが好きかな(笑)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「三人姉妹」を観ましたが・・ | トップ | オフショット »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

舞台・芸能」カテゴリの最新記事