2009年・アメリカ・Up
監督:ピート・ドクター、ボブ・ピーターソン
(IMDb:8.5 Metacritic:88 Rotten:98)
公式HP
ピクサーがこれまで制作してきた作品群を見渡してみると、素晴らしいという言葉を押さえて、
思わず恐ろしいという言葉が口から出てしまう。
興行的にも批評的にも百発百中。
本当に恐ろしい。
そんな中でも最高傑作の呼び声が高いのがこの「Up」つまり「昇天」である。
5月に全米で公開されたときの高評価。大ヒット。
にもかかわらず、世界の末端に住む日本人はなんと12月までお預けを食らわされた。
大変ガッカリしたものだ。
この約半年のブランクは大きい、明らかに映画ファンの熱は冷めてしまったし、
僕ももう見た気になっていた、反してハードルは上がる一方だ。
実際、見てみると、そこまで大騒ぎするほどの作品なのかという疑問が常に付きまとってきた。
「レミーのおいしいレストラン」や「ウォーリー」よりも本当に「カールじいさん」の方が面白いのか。
いや、確かに作品としてのクォリティはさすがピクサーといったレベルの高さだが、
これぐらいでは“普通”ではないか。
今までの作品群の中から抜きん出て傑作では決してない。
評判の高い冒頭約10分間は噂どおりの素晴らしさだ。
恥ずかしながら、泣きそうになり、これから先、まともに見ることができるのだろうかと要らぬ心配をしてしまう。
が、これが本当に要らぬ心配だったのは残念だ。
カールじいさんの家が飛び立つ時のカタルシスの弱さにガッカリしたのをきっかけに
肩透かしな展開が続いた。
あっという間に目的地パラダイスフォールの目前まで到着してしまうのには本当に驚かされた。
大阪から東京への移動でもあんなにアッサリと描かれないだろう。
南米に到着してからの中盤が恐ろしく退屈だ。
大人も子供も楽しめるとはよく言うが、この作品は大人も子どももどちらも
楽しませようとした結果、どっちつかずになっているように見える。
序盤の大人向けなサイレント演出から打って変わって、急に子ども向きになるのがこの中盤だ。
カラフルな怪鳥ケヴィンとの出会い。
犬語翻訳機をつけた犬ダグとの出会い。
桃太郎的一本道に空のシーンでの開放感が懐かしくなる。
(これもある意味、演出だろうが)
そして、真打ちは魅力がなく、弱すぎる悪役。
そして、終盤、カールじいさんのドラマが動き出すとまた盛り上がりはじめる。
カールじいさんが過去を捨て、未来(ラッセル)を助けに行く。
空飛ぶ家を使ったアクションシーンは見事だ。
3Dの効果も上手く使っており、高所恐怖症の人なら、
アニメーションであるにもかかわらず、思わずすくみあがってしまうだろう。
全編を通して、3Dの効果は今までに見た3D映画の中でおそらく一番、効果的に使用されており、
飛び出す効果よりも奥行きの効果が重視されているのが、
空飛ぶ家という題材とマッチしている。
空という立体感のない広い空間に投げ出された立体感のある狭い家という対比が驚くほど
効果的に空飛ぶことの浮遊感を表現している。
しかし、眼鏡を使用する身にあのXpanDの重いゴーグルは正直キツイ。
視野の広さや色の豊かさなどを考えると、2Dで見直すのも面白いかもしれない。
その方がよりストーリーに集中できるだろう。
期待しすぎたのかもしれないが、それでもRottenTomatoesで98%の新鮮さとくれば、
期待しないほうが馬鹿だろう。
日本のディズニーにお願いしたい。
もっと早く公開してくれ!
〈70点〉
追記
(2回目の鑑賞)
本当はもっと素晴らしい作品だったのではないかという予感が
月に1回ぐらい襲ってきたので、DVDで見直した。
妙に高かったハードルもさがり、メガネ・オン・メガネの苦痛から開放されての
鑑賞だったためか、ずいぶんと作品自体の印象が違った。
ストーリーに集中できたことで、ストーリーが驚くほど見事なことにもようやく気づいた。
確かに中盤は弱点だと思うが、必然性を持っている。
映像の色彩もはるかに豊かで、美しく、CGの技術の発達に驚かされた。
映画館で堪能できなかったのは、とてももったいない事をしたな。
最後にもう一度、日本のディズニーにお願いしたい。
もっと早く公開してくれ!
〈80点〉
監督:ピート・ドクター、ボブ・ピーターソン
(IMDb:8.5 Metacritic:88 Rotten:98)
公式HP
ピクサーがこれまで制作してきた作品群を見渡してみると、素晴らしいという言葉を押さえて、
思わず恐ろしいという言葉が口から出てしまう。
興行的にも批評的にも百発百中。
本当に恐ろしい。
そんな中でも最高傑作の呼び声が高いのがこの「Up」つまり「昇天」である。
5月に全米で公開されたときの高評価。大ヒット。
にもかかわらず、世界の末端に住む日本人はなんと12月までお預けを食らわされた。
大変ガッカリしたものだ。
この約半年のブランクは大きい、明らかに映画ファンの熱は冷めてしまったし、
僕ももう見た気になっていた、反してハードルは上がる一方だ。
実際、見てみると、そこまで大騒ぎするほどの作品なのかという疑問が常に付きまとってきた。
「レミーのおいしいレストラン」や「ウォーリー」よりも本当に「カールじいさん」の方が面白いのか。
いや、確かに作品としてのクォリティはさすがピクサーといったレベルの高さだが、
これぐらいでは“普通”ではないか。
今までの作品群の中から抜きん出て傑作では決してない。
評判の高い冒頭約10分間は噂どおりの素晴らしさだ。
恥ずかしながら、泣きそうになり、これから先、まともに見ることができるのだろうかと要らぬ心配をしてしまう。
が、これが本当に要らぬ心配だったのは残念だ。
カールじいさんの家が飛び立つ時のカタルシスの弱さにガッカリしたのをきっかけに
肩透かしな展開が続いた。
あっという間に目的地パラダイスフォールの目前まで到着してしまうのには本当に驚かされた。
大阪から東京への移動でもあんなにアッサリと描かれないだろう。
南米に到着してからの中盤が恐ろしく退屈だ。
大人も子供も楽しめるとはよく言うが、この作品は大人も子どももどちらも
楽しませようとした結果、どっちつかずになっているように見える。
序盤の大人向けなサイレント演出から打って変わって、急に子ども向きになるのがこの中盤だ。
カラフルな怪鳥ケヴィンとの出会い。
犬語翻訳機をつけた犬ダグとの出会い。
桃太郎的一本道に空のシーンでの開放感が懐かしくなる。
(これもある意味、演出だろうが)
そして、真打ちは魅力がなく、弱すぎる悪役。
そして、終盤、カールじいさんのドラマが動き出すとまた盛り上がりはじめる。
カールじいさんが過去を捨て、未来(ラッセル)を助けに行く。
空飛ぶ家を使ったアクションシーンは見事だ。
3Dの効果も上手く使っており、高所恐怖症の人なら、
アニメーションであるにもかかわらず、思わずすくみあがってしまうだろう。
全編を通して、3Dの効果は今までに見た3D映画の中でおそらく一番、効果的に使用されており、
飛び出す効果よりも奥行きの効果が重視されているのが、
空飛ぶ家という題材とマッチしている。
空という立体感のない広い空間に投げ出された立体感のある狭い家という対比が驚くほど
効果的に空飛ぶことの浮遊感を表現している。
しかし、眼鏡を使用する身にあのXpanDの重いゴーグルは正直キツイ。
視野の広さや色の豊かさなどを考えると、2Dで見直すのも面白いかもしれない。
その方がよりストーリーに集中できるだろう。
期待しすぎたのかもしれないが、それでもRottenTomatoesで98%の新鮮さとくれば、
期待しないほうが馬鹿だろう。
日本のディズニーにお願いしたい。
もっと早く公開してくれ!
〈70点〉
追記
(2回目の鑑賞)
本当はもっと素晴らしい作品だったのではないかという予感が
月に1回ぐらい襲ってきたので、DVDで見直した。
妙に高かったハードルもさがり、メガネ・オン・メガネの苦痛から開放されての
鑑賞だったためか、ずいぶんと作品自体の印象が違った。
ストーリーに集中できたことで、ストーリーが驚くほど見事なことにもようやく気づいた。
確かに中盤は弱点だと思うが、必然性を持っている。
映像の色彩もはるかに豊かで、美しく、CGの技術の発達に驚かされた。
映画館で堪能できなかったのは、とてももったいない事をしたな。
最後にもう一度、日本のディズニーにお願いしたい。
もっと早く公開してくれ!
〈80点〉