ゴダールよりもデ・パルマが好き(別館)

ホンも書ける映画監督を目指す大学生monteによる映画批評。

魔法遣いに大切なこと

2010-05-18 15:07:16 | 映画(ま行)
2008年・日本
監督:中原俊
公式HP

先日、「武士道シックスティーン」を見て、気になっていた
山下リオの主演作ということで、見てみた。



なんでもこの作品、城戸賞に応募された作品らしい。
映画化の前に漫画化、アニメ化がされており、そこでの人気を受けての
映画化ということだ。

この脚本は確かにマンガやアニメで人気を博して違和感のないもの。
一方で、映画化は難しい題材だといえる。
アニメなどでは簡単な魔法が当たり前の日本というファンタジー設定を
映画で表現することは非常に難しいことだし、お金もかかるからだ。

残念ながら、出来上がった作品は魔法遣いという設定の突飛さを
演出や画面の雰囲気でカバーすることができていない。
予算がないことも理由の一つだと思うが、もう少し工夫できたのではないか。
さながら2時間ドラマ、いや、山下リオが多く出演しているらしいBSiのドラマといったところで、
映画らしい画作りは冒頭と最後の北海道のシーンをのぞき、ほとんど見られない。
ロケーションも、もう少し面白い場所を見つけることができたと思う。
照明が明るすぎて、映像が薄っぺらくなっていることも不満だ。
細部を取り上げて見ても、クラブのシーンをはじめとしてエキストラに全く演技をつけれていないこと、
オンリーが非常に下手で、一部のシーンで音に全く奥行がないことなど、気になる箇所は多い。



映像的には不満が多いこの作品。
ストーリーはその突飛な設定もあって、突っ込みながら楽しめる程度のものにはなっている。
ただ、アイドル映画として、男なら山下リオ、女性なら岡田将生を見れれば、
それでこの映画の役目としては十分なのかもしれないが。
ソーラン節はアイドル映画らしいが見ているこっちが恥ずかしいだけなのでやめて欲しい。

この手の映画にありがちな失敗がCGがへたくそ過ぎることだが、
とても健闘しており、見れるものになっていたのには驚いた。
CGが実写から浮くどころか、実写がCGから浮いているように見えるほどであり、
何か珍しいものを見たような気になった。

設定の割にこじんまりとした会議室での訓練など、全く規模を感じない描写のせいで
少し飽きてくるが、永作博美、余貴美子、田中哲司といった意外と豪華な脇役陣が
上手く支えていることもあって、見られるものにはなっている。
どこをどう切り取っても、映画ではないのが不満だが、中原監督だけに
そつなくまとめてあり、DVDで気楽に見る分には悪くない。

〈60点〉