忘れな草の花籠

確かハンドメイドブログだったはず・・・

いのちの小さな声を聴け

2007-06-24 23:53:42 | BOOK
最近特に「いのち」について考えるようになり、
(「老い」やら「死」やら「人生」やらについて考えることが多いのですが
結局根底にあるのは「いのち」かと)
たくさんある積み本の中から一冊選んだのがこの本です。

作家の水上勉さんと灰谷健次郎さんの往復書簡集で、
新潮社からでていたものです。
(文庫自体はH5年発行のもの。H2から刊行とのこと。)
灰谷さんは神戸の痛ましい事件でFOCUSが
加害者の少年の顔を載せたことで
新潮社に抗議し、版権を角川にうつしたので、
この新潮文庫の本はおそらく今は店頭にはないかと思いますが・・・。

裏表紙の説明は
*自然の持つ力を信じ人が人らしくあるには
どうすればいいのでしょうか。
むかしの川が枯れ新しい川がコンクリートの岸になり、
亀が行き場所を失っています。石油備蓄基地のために
珊瑚が壊滅し死にゆく海に漁師は泣きます。
原発が密集する若狭から、美しい沖縄の海から、
同時代を生き延びるために、人間の尊厳と命ある生物への慈愛と
現代の狂気について体験的に赤裸々に語る往復書簡集。*
とあります。

亀たちの行く末についてから始まるこの書簡。
広く深く話が広がっていきます。
区画整備のために変えられていく田園風景。
亀たちが死んでいく夢を見た、と水上氏。
雑草の中に野菜を育てている灰谷氏に対して
雑草畑を意図的に作っているかどうかを尋ねた水上氏。
「よくなる」田の近くに「むかしのまま」の田も必要なのではないか、と思い始めたとのことで。

それに対しての灰谷氏の書簡。
畑に蒔いて余った野菜の種を、種もいのちやないかと
ミニ果樹園と名づけている場所にふりまいてやったという
思いつき農法だったらしいのですが、
たくましく雑草といっしょに育った野菜たちから
いろいろなことを学ばせてもらったとのこと。

「当り前のことですが、この世に生を受けたものは、
この世に生きることができるようになっているという事実です。
平和というものは、その当り前のことが、当り前にあるということです。
戦争をやめることが平和のすべてではないのです。」

あたりまえに生きるということ、それがどんなに
ありがたいことなのか考えないといけませんね。

灰谷さんのことばで非常に印象に残ったことばが
「人間の寸法」ということばです。

「沖縄の離島でわたしが学んだことの一つに、
木も水も、どんな小さな生物もいっさいがっさい、
人間の生命と一つだというとらえ方があります。
人間の寸法でものを考えるということは、たぶん、
このことがその根底にあってはじめて成り立つものでしょう。
これを忘れたとき、人はもろもろの罪を犯すのではないでしょうか。」

私は文明の発展についてどうこう言う気はありません。
文明の恩恵にあずかっているのは事実なのですから。
そして文明を発展させようと努力している人々もたくさんいるのだから。
ただ「よりよく生きる」ために
ほかのものたちを犠牲にしていくのは本末転倒だと思います。
自らの利益ばかり追求し、
共生の心を忘れてしまっては何の意味もないかと・・・。

またなんだか長い文章になっていますね。
では最後に灰谷さんのことばで印象に残ったものをもう一つ。

「どんな人生にも光芒があり、それはその人にとっても、
あるいはまた、他者にとっても、きっとかけがえのないものなので
ありましょう。(中略)
せめて、ぼくたちにできることは、きょうの一日を確かに
生きてみるということでしょう。(中略)
希望は人間の中にある、わたしはそれを確信しました。」

たくさんのいのちたちの小さな声に耳を傾け、
希望をもって生きたいと思います。
豊かな生活とは幸福な生活。
それはどれだけ笑顔を見られるか、
どれだけ笑顔になれるかがバロメーターだと私は思っています。
この世界が笑顔で満ち溢れますように・・・。
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わたしの古典 馬場あき子の謡曲集 三枝和子の狂言集

2007-06-24 11:48:29 | BOOK
先日の「秘花」を読んで
「風姿花伝」も読んでみたくなったのですが、辞書もないし、
原文を読むには(いくら薄い本とはいえ)
かなり時間がかかりそうだったので
(頭の中に入りそうにないんですよねー)
口語訳つきのものを読んで能の気分にひたろうと思いました。

積みゲーもかなりありますが
それ以上に積み本がたくさんある我が家。
10年前に購入していた、集英社文庫(ハードカバーのだと買えないけれど
文庫本だとついつい気軽に買ってしまう私の悪いクセ・・・)の
「わたしの古典 馬場あき子の謡曲集 三枝和子の狂言集」を読みました。
・・・といっても読んだのは前半の謡曲集のみでしたが。

いやはや、おもしろかったです。
馬場さんの解説がこれまたわかりやすくて
すんなり情景を思い浮かべることができました。
とりあげられている謡曲は
「井筒」「忠度」「熊野」「善知鳥」「紅葉狩」
「高砂」「隅田川」「鉢木」「江口」「安達原」の
全10曲です。
手元に学生時代のノートがないので
能自体の知識(といっても本当にさわりだけでしょうが)が
ほとんどない状態(もう忘れちゃいましたよ、このつるつる脳)でしたが、
単純に物語としておもしろかったです。

「善知鳥」や「隅田川」は親になってみてはじめて
その心情が痛いほど伝わってきます。
「高砂」はよく結婚式に登場しますが
やはり読んでいるだけでめでたい気分になりました。
「安達原」はなんだかせつない終わり方です。

一度でいいので能見物にいってみたいです。
・・・が、能の約束ごとを知らない私には
いい具合に子守唄になりそうな気がするんですよね・・・。
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