宮城の作家希望

作品など

26、聖女の言葉と沈黙の森

2020-10-19 15:21:00 | 小説
ーー貴女なら出来る自分を信じてーー
それが大聖女様の最後の言葉だった。
誰からも心を閉ざしたエレガに温かな心でそう呼びかけた。だがその姿はエレガ以外には見た者が居ない。

だから、夢かもしれないと思っていたがあの時感じた同じ感覚の温かな心を、この世界に大聖女様が現れた時に感じた。
ただ違いもあった少し冷たい感覚がした。
それでも力強く熱い意志を感じた。

『大聖女様だって誰だい』
神獣がアカネの心に囁いた。
アカネをテレパシーで心さんの事だと答えたが
『聞かない名だね』『巫女なのかい?』
『?』
アカネにも答えられない。

それぞれの世界が違い噛み合わない。
『よく分からないけどアンタ良いヒトだから力になるよアタシも相棒とはぐれて困ってたんだよ良かったよよろしくね』

『先程から魔物に出会っても襲われないのは、このペンダントのお陰なのか?』
エレガはペンダントを見つめて呟いた。
これは店の店主に勧められた物だった。
『あの森に行くならこれが一番』だと

その効果は確かな物であった。
魔力を失わないばかりか魔物にも襲われないと言うオマケ付きである。
『ねえもう一度あのお店に行ってくれない確かめたい事があるから』
アカネはエレガに神獣の言葉を伝え店に戻る事にした。

だが道が分からない。道を戻った筈なのに一向に森の外に出られない。