今月初めに出かけた、東信(長野県東部)への旅。
夫と二人での目的は、もちろん城めぐりですが・・・
私個人のとなったら、それは「無言館」でした。
長野県・上田市にある、1997年開館の美術館です。
日中戦争・太平洋戦争に出征し、亡くなった画学生の作品を収集、
修復を施し、展示しています。
ここは、開館当時、亡き知人から聞かされ、ずっと憧れていました。
今思えば、知人は館主の窪島誠一郎氏と親しくされていたのかも・・・
無言館開設の意義を熱く語って下さいましたから・・・。
無言館は、今年8月にNHK「日曜美術館」で
「無言館の扉 語り続ける戦没画学生」 として放送されたので、
ご存知の方も多いかも知れません。
番組では、館主・窪島誠一郎氏と、修復家・山領まり氏の
「戦いを見つめ」、画学生の作品に対する想いを浮き彫りにしていました。
よくまとまった番組で、出発前に、夫も観て
それなりに興味をもってくれたようでした。
そうして、やっと出かけた無言館は・・・
上田市の市街から、車で20分ほどの山の麓にありました。
折からの紅葉も美しく・・・
そのたたずまいは、まさに「鎮魂の場」としてふさわしく・・・
ここなら画学生の作品も安心であろう・・・と感じられ・・・
ああ、それなのに、それなのにっ!
ドアを開けた瞬間、おしゃべりの声が反響して・・・
ザワザワザワザワ・・・
えっ、美術館でしょ、ここっ!?
ちょうど、ツアーでも入っていたのか、
ご年配の方々が、三々五々、おしゃべりをしながら、鑑賞中。
60代後半から、70代の方々ですから、
無言館に展示されている画学生の子どもや、
ゆかりの方々の世代と思われます・・・
戦争についても、おそらく、ご自身に記憶があったり
縁者から生々しい話を聞かされりしていたのでしょう。
作品を前に、何気なく話し始めたのかもしれません。
そして、知らず知らずのうちに話題も脱線されたのか・・・
とにかく、この世代は話声が大きいので・・・
響く、響く・・・
落ち着いて鑑賞できません・・・
さらに・・・衝撃的だったのは・・・
「絵って言うのはサ、持っていた方が良いよ。
どこでどう価値が出るか分らないからサ」という声が聞こえてきたこと。
高齢男性二人連れでした。
展示作品の鑑賞そっちのけで、お金の絡む、おしゃべりに夢中です。
ここに展示された絵を前にして・・・
なぜ、そんな話ができるの?
心がざらつき、いらだってしまいました。
そして、そんな自分が情けなくて、肝心の絵と向き合えず・・・
淡々と鑑賞する夫をよそに・・・
わたしは、館内をウロウロするばかり・・・
・・・やがて、ふいに静寂が訪れました。
見ると、館内は数人を残すだけに・・・
鑑賞者の団体が出て行かれたからでした。
やっと・・・心静かに、絵と向き合えます。
添えられたプロフィールや、遺品と共に、作品を眺め、
その人の人生を想い・・・丁寧に鑑賞・・・
次第に、いらだった心も静まっていきました。
ふと・・・
すすり泣きが・・・
絵を前に、車椅子の女性が肩をふるわせていたのです。
おそらく、大病の苦しい治療の最中か直後であろう、と
一目で分ります。
というのは、かつてのわたしも、同じ姿をしていたからです。
アラカンの今でこそ、元気にサバイバーとして過ごしていますが、
あの治療の頃は、本当に苦しくて、辛かった・・・
一方で、命や生きることに対して真摯であり、感謝も大きかった・・・
あの方も、きっと同じで・・・
画学生の「生きたい」という想いを、
いっそう、強く受け止めておいでだったのでしょう。
そんな彼女の姿に、あの頃の想いが蘇り、私も涙してしまいました。
本当は、この旅で、いの一番にアップしたかった「無言館」。
でも、思い出す度に、当初集中できず、いらついていた自分が情けなく・・・
肩をふるわせ涙する、あの方の姿がよみがえり・・・
記事にすることができませんでした。
とりあえず、本日は、ここまでで・・・
いずれまた、感想をまとめたいと思います。
肝心の展示についての話が全くなく、申し訳ございません。
また、お目通しいただけたら、嬉しいです。